第5話 星の下で
村を出発した二人は、まず南に向かう街道を目指した。街道までは深い森に覆われた険しい山道を進まなければならなかったが、人里離れた村で育った野生児同然の二人にとって、それはまるでピクニックのようなものだった。三つ目の峠を越えたとき、眼下に街道が広がるのが見えた。だが、むしろ、彼らにとって本当の冒険は、これから始まるのだった。二人は村の大人たちから授かった言葉を思い返しながら、胸の内に期待と不安を抱いた。
街道に出た頃には、すっかり夜になっていた。久しぶりに開けた場所へと足を踏み入れた二人は、街道脇の手頃な場所を見つけて野営することにした。これまでと同じように交代で見張りをすることに決め、今夜はリーナが先に眠る番だった。しかし、初めて街道に出た興奮のせいか、なかなか寝つけない様子で、焚火を囲むサトリに話しかけた。
「ねぇ、サトリ。ごめんね。」
「何のことだい?」
「無理やり冒険に連れ出すようなことになっちゃって……」
「ああ、それはもういいよ。どのみち、賢者の導き次第なんだから。」
「そう……なら、いいわ……」
しばらく沈黙が続いたあと、リーナが再び囁いた。それはサトリに向けた言葉なのか、それとも自分自身に言い聞かせているのか、曖昧な口調だった。
「私ね、両親を早くに亡くしたでしょ。村の人たちによくしてもらって、ここまで大きくなれたし、村の守護という大事な役目も任されているし……感謝してるんだ。」
「でもね、私、ずっと夢を見てたの。村を離れて、冒険をしてみたいって。だから……」
サトリは黙って聞いていた。
「ねぇ、サトリ。笛を吹いて。持ってきてるんでしょ。」
万事が人並みの平凡なサトリだったが、横笛の腕前だけは村で一、二を争うほどだった。彼は無言のまま笛を取り出し、夜の調べを静かに吹き始めた。
かすかに霞んだ夜空には、満天の星が優しく輝いていた。星々はサトリの笛の音に耳を傾けるかのように、静かに瞬いている。
やがて、リーナの穏やかな寝息が聞こえてきた——。




