第42話 豪快な医者
「先生、こちらがローレンさん、ミセルさん、サトリさん、リーナさんの四人です。」
ナギが誇らしげに紹介した。タカナミはギロッと四人を見回した後、
「よく来たな、この地獄の中へ!」
大声で言うと、カッと笑った。その笑いはまるで太陽のように、誰の心も温かくするものだった。
「私がタカナミだ。よろしく頼む。では早速、仕事に取り掛かってもらおう。」
そう言うと、ナギの方を向く。
「ナギ、お前はノーラと交代しろ。もう魔法力が限界のようだ。休憩してもらおう。」
そう言うが早いか、「ノーラ!休め!」と一喝した。呼びかけられた少女が、一同の方へ駆け寄る。
「ノーラ、今日はもう休め。看護する者が倒れたら、患者にとって不幸だからな。」
タカナミがそう言うと、ノーラと呼ばれた少女は不服そうに口を開いた。
「でも先生、もう少しならできます。」
タカナミはにっこりと笑い、「じゃあ、もう一仕事頼む。この人たちを案内してくれ。」と言った。
そのやり取りを見ていたミセルは、静かに目を細めた。
(この男、大したものだ。指示の的確さ、部下の掌握……只者ではないな。)
ナギとノーラが引継ぎを済ませるまで、一同は医術と魔術が交差する不思議な治療現場を眺めて待っていた。
やがてノーラが戻り、「さあ、皆さん、ご案内します。」と声をかける。すでに患者の治療に戻っていたタカナミが、「君たちも患者になってくれるなよ!」と冗談めかして大声を張り上げた。ノーラが恥ずかしそうに小声で謝る。
「先生はちょっと無神経なところがあるんです。気にしないでください。でも、もしも皆さんが黒死病にかかっても、私たちが絶対に治してみせます。」
―――
その後、ノーラはまず皆を宿所へ案内し、荷物を下ろさせると、すぐに診療所内を案内し始めた。彼女自身は休息の指示を受けているのに、その性急な動きが診療所の切迫した状況を物語っていた。
診療所を一通り案内し終えると、ノーラは宿所に戻り、一同の前に立った。
「では、皆さんの仕事の割り振りをしたいと思います。やっていただきたい仕事は三つあります。」
「一つは、患者さんを運んだり、重い荷物を運んだりする力仕事です。患者さんの中には亡くなった方も含まれます。」
「一つは、事務仕事です。食料の調達や配給、必要物資の在庫管理などをお願いします。」
「一つは、ネズミ捕りです。先生は『病の元を絶たなければ、いつまでも災厄は続く』とおっしゃっています。」
ナギからの依頼と同じ内容だったため、一同はすぐに応じた。
「戦場整理は本職だ。任せるがいい。」
ミセルが真っ先に手を挙げた。
「おれは自分の商店を持つのが夢なんだ。それに関わる仕事なら、やってみたい。」
ローレンが腕を組みながら答える。
「ネズミ捕りなら、私たちがやるわ!」
リーナが明るく言い、サトリも頷いた。
ノーラは頼もしそうに確認する。
「では、ミセルさんは力仕事を、ローレンさんは事務仕事を、サトリさんとリーナさんはネズミ捕りをお願いします!」
※戦場整理:戦場に残された戦死者の遺体収容や遺品回収、兵器の片付けを行う後始末




