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第41話 黒死の町

町への道中、ナギは黒死病(こくしびょう)蔓延(まんえん)する町の状況や、それに立ち向かう人々の献身的(けんしんてき)な姿を、サトリたちに説明した。そしてその中心人物であるタカナミについては特に熱っぽく語った。


「タカナミ先生はすごいんです。人の体を開いて悪いものを切除して患者を治すことができるんです。他にもたくさん私たちが見たこともない手段で患者を救ってきたんです。」


「なに、体を()(きざ)むだと?……大丈夫なのか?そんなことをして。」


ナギの言葉に、意外にもミセルが反応した。ミセルは戦場で負傷したり病気になった兵士たちを看取(みと)った経験がある。興味が強いのだろう。


「はい、私たちも最初は心配でしたが、タカナミ先生はまるで魔法のように患者を治すんです。薬の知識も豊富で私たちが知らない調合(ちょうごう)をして驚かされます。」


(ひがし)の国から来たって聞いたが、どんな先生なんだい?」ローレンも興味津々で聞いた。


「はい、でも不思議なことなんですけど、先生は東の国での記憶がないそうです。医術の知識だけはしっかり覚えていたそうなのですが。それとなぜか西へ向かえという心の声に従って、医術で生計(せいけい)を立てながら、この町まで旅してきたそうです。」


「ふーん、不思議な話だな。」


―――


ナギと一行がすっかり打ち解けた頃、遠くに黒い煙が立ち上っているのが見えてきた。


「火事かしら?」とリーナが言ったが、煙の原因はナギが淡々と説明した。「あれは死体を焼く煙です……」一同は黙り込んだ。


町に近づくにつれて、重苦しい空気の異臭(いしゅう)(ただよ)ってきた。皆はその原因がわかっていたので、口を開く者はいなかった。


町に入ると、そこは生と死が混在しているような異質(いしつ)な空間だった。人々は(かた)く家に閉じこもり、普段は人や馬車の喧噪(けんそう)(つつ)まれる市場や(とお)りには人影(ひとかげ)が消え、静かであった。時折(ときおり)、何か使命を()びた人たちが無人の町中を駆け(めぐ)っている。


町を()け、タカナミの診療所(しんりょうじょ)へ向かう途中(とちゅう)、一行は異様な光景を見た。神殿に無数の人が列をなして(いの)りを(ささ)げていたのである。黒死病は神々の(いか)りだと人々は考え、その怒りを(しず)めるために信仰心(しんこうしん)を示していた。


「残念だわ。お(いの)りする元気があるなら、私たちを手伝ってくれたらいいのに……」


ナギは淡々(たんたん)とした口調(くちょう)で言った。


―――


やがてタカナミの診療所に到着した。診療所の外には、症状が軽い患者なのだろうか、椅子(いす)(こし)かけてうつろな目をしている人が数人いた。診療所の中に入ると、そこはさながら戦場だった。悲痛なうめき声、水を求める声が建物内に響き渡っている。病室から(あふ)れた患者は廊下(ろうか)に寝かされ、病室の中にはたくさんの患者が横たわり、その間を看護婦やその助手、魔法使いと思われる女性たちが(いそが)しく働いていた。


そのなかに、体格の良い一人の男性が患者の腕を取り、何か指をあてていた。男性の治療が終わるのを待って、ナギは声をかけた。


「タカナミ先生、お手伝いの方をお連れしました。」


「おお、ナギ帰ったか!」


野太(のぶと)い声が元気よく返ってきた。

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