第4話 旅立ちのとき
「ちょっと待ってリーナ!僕はまだ何も決めていないよ!」
「何言ってるのサトリ!義を見て行動しないのは勇気がない証拠よ!」
言い争う二人を見て、長老が静かに口を開いた。
「ではのう、サトリ。南に賢者がいるという。その賢者に相談してみるがよい。賢者が『ならぬ』と言うのであれば、それもまた道理じゃ。」
サトリはしぶしぶ承知した。
「決まりね!さっそく支度をしなくちゃ!」
リーナは突如決まった冒険に目を輝かせ、勢いよく駆け出していった。長老は笑みを浮かべたが、サトリの胸には、重たいものがのしかかっていた……。
それから数日間、村は蜂の巣をつついたような騒ぎとなった。旅の支度に奔走する大人たち、応援の声をかける子どもたち。そして、サトリの母は、何か言いたげなまま、ただ彼の荷物を整えていた。
そして迎えた旅立ちの朝。
村中の人々が村の正門に集まり、二人を送り出す声が森の奥まで響いた。しかし、長老が一歩前に進み出ると、ざわめきはぴたりと止まった。
「ゆけ、若者たち!自らの力を試すのじゃ!―――神は与えたもう、奪いたもう!」
長老の声が響き渡る。
「はい!長老様、みなさん!行ってきます!」
朗らかにリーナが答えた。サトリは一度、大きく息を吸い込み、ゆっくりと頭を下げた。
そして、一歩を踏み出す。
満開の桜の花吹雪が、二人の背を優しく押すように舞い降りた……。




