第38話 悪人にも・・・
ミセルは“教え子”たちの見事な連携に目を細めた。このような状況で誰が何をどう動くか——すべてが、日々の訓練の賜物だった。
頭の男はローレンが縄で縛り上げた。リーナはアモンを縄から解放する。
「リーナ姉ちゃん!」アモンが飛びついた。「無事でよかった。」
「よかったね。」リーナは微笑み、アモンを強く抱きしめた。
その様子を見届けると、ミセルは馬を降り、頭の男を見下ろして尋問を始めた。男はすっかり観念し、大人しくなっている。
「さて、お前たちの素性を言え。」
「……はい。俺たちは近くの村から集められ、街で労役に就きました。でも、あまりにも過酷で逃げ出したんです。村に戻れば役人に捕まるし、どうしようもなく山賊まがいの暮らしをしていました。」
「どんな仕事を?」ローレンが尋ねる。
「城壁の修復作業です。石運びや土掘り、木材の伐採……とにかく重労働ばかりでした。」
「そりゃ、きついな……。」ローレンの声には思わず同情が混じる。
「労役から逃げたのなら、あなたたちはお尋ね者ね。」リーナも憐れむように言った。
「はい、その通りです。まともな生活には戻れません。」
一同は沈黙した。彼らの行いは許されるものではない。しかし、情状酌量の余地はある。役人に突き出すことしか考えていなかったミセルでさえ、考えが揺らいだ。
静寂を破ったのはサトリだった。
「許してあげようよ。」
「いや、サトリ。それは甘い。」
「こいつらを放せば、また同じことを繰り返すぞ。」
大人たちは一斉に反対した。
「でも、この人を役人に引き渡しても、逃げた残りの人たちがまた徒党を組むんじゃない?」サトリは食い下がる。「だったら、この人に悪さをさせないよう、まとめさせようよ。」
「どうやって?」ローレンが眉をひそめる。
「自分たちの村を作って、自給自足で暮らせばいい。」サトリは元気よく言った。
「それ、素敵な考えね!」リーナがアモンの頭を撫でながら感心する。
ローレンとミセルは顔を見合わせ、しばらく言い合った。しかし、やがて意見がまとまる。
ローレンが言った。
「よし、お前を解放してやる。ただし、二度と悪事は働くな。」
ミセルが鋭い目で続ける。
「もしこの辺りで再びお前たちの悪行の噂を聞いたら——私が成敗しに来る。その時は容赦しないから覚悟しろ。」
サトリとリーナは小躍りして喜んだ。ミセルがすらりと剣を抜き、頭の男の縄を断ち切る。
「行け。二度と悪さをするな。」
男はしばらく躊躇したが、やがて深く頭を下げ、「ありがとうございます。」と呟くと、林の奥へと消えていった。
——出発の準備を整えながら、ミセルとローレンは小声で会話する。
「まったく、子供ってやつは……。」
そして、再び一行は西の果て、ノーマンズランドを目指す旅へと戻っていった。
※労役:領主などによる土木・建築への強制的な動員のこと




