表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/54

第35話 村の支配者

ミセルの愛馬ルドルフは雄馬(おすうま)である。軍馬としての力強さと持久力が求められるからだ。一方、ローレンの馬は雌馬(めすうま)。彼の商売道具は繊細(せんさい)なものが多いため、気性(きしょう)(おだ)やかな雌馬(めすうま)が向いている。名前をエイミーという。


面白いことに、(あるじ)同士はいがみ合ってばかりなのに、ルドルフとエイミーは仲がいい。今も草原で寄り添いながら草を()んでいる。休憩が終わると、それぞれの主のもとへ戻るのだが、別れ際に少し(さび)しげな素振(そぶ)りを見せるのが何とも(あい)らしい。


そんな馬たちに()られながら一行はまた村にたどり着いた。だが、いつもと様子が違う。村の入り口に立つやいなや、村長らしき老人が(あわ)てて駆け寄ってきた。


「あんたら、悪いことは言わん。さっさと次の村へ行きな!」


ローレンは目をしばたたかせた。「しかし、仕入(しい)れもあるし、今から移動するのもなぁ」


村長は(あせ)ったように振り返り、何かを見つけたらしい。目を見開き、叫ぶように言った。


「あっ!あいつらが来る! 忠告はしたからな!」


そう言い残すと、村長は自分の家へ逃げるように駆け込んでいった。


呆気(あっけ)にとられていると、背後(はいご)からがなり声が響いた。


「お前ら行商人か? この村で商売するなら入村税(にゅうそんぜい)を払えや」


振り返ると、見るからにガラの悪い若者の一団(いちだん)が立っていた。(かしら)らしき男が(あご)をしゃくると、取り巻きたちは「へっへっへっ」といやらしく笑った。


ローレンは鼻を鳴らした。「なんだ、お前ら?」


男は腕を組み、ふんと笑った。「この辺の村を守ってやってる用心棒(ようじんぼう)さ」


ローレンはしばらく黙り込んだ。

(「荒事(あらごと)になっても、こっちにはミセルとリーナがいる。こんな山賊(さんぞく)ごっこの餓鬼(がき)(おく)れを取ることはないだろう。しかし、ミセルはともかく、リーナに人を()らせるのは目覚めが悪い。」)


渋々(しぶしぶ)、金を支払うと、男たちは満足げに引き上げた。


「じゃあな、お客さん。またな!」


翌日、村で行商を始めたものの、様子がおかしい。サトリとリーナの客寄せも不調で、村人たちは必要最低限の買い物をすると、すぐに帰ってしまう。


(「こりゃ、早めに見限(みかぎ)った方がいいな。」)


ローレンがそう思い始めた頃、昨日の一団がまたやってきた。


今度はサトリとリーナを取り囲み、からかい始める。


「よーよー、お嬢ちゃん、可愛いねぇ」

「こっちは女騎士さんか。勇ましいねぇ」


卑下(ひげ)た笑い声が響く。その中の一人がミセルの愛馬ルドルフに手を伸ばそうとした――


その瞬間。


シュッ。


(さや)ごと(はな)たれたミセルの長剣が(ひら)いた。


バキッ!


(かわ)いた音が響き、男の腕がありえない方向に折れた。


「ぎゃあああ!」


(ころ)げ回る男をよそに、不良どもは蜘蛛(くも)の子を()らすように逃げ出した。


「おいおい、忘れ物だぞ?」


ミセルは倒れた男を軽く()った。(あわ)てて二人が駆け戻り、男を(かか)え上げると、半泣(はんな)きになりながら駆け去っていった。


ローレンは溜息(ためいき)をつき、仲間たちに向かって叫んだ。


「やばい、今すぐ逃げるぞ!」


そして(うら)めしそうにミセルを振り返る。


「騎士様はこらえ性が無いねぇ。」


ミセルは薄く笑った。「なに、少しお仕置きをしたまでさ」


一行は()()うの(てい)で村を後にした。

※入村税:村に入るための利用税のこと

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ