第33話 花束の少女
嵐の翌日、まるで嘘のように空は澄み渡り、風はそよそよと穏やかに吹いていた。しかし、集落を出発した一行の前には困難が待ち構えていた。街道は流れ込んだ土砂や倒木で塞がれていたのだ。土砂を避け、倒木を切り払いながら進むため、一行の歩みは大きく遅れた。ようやく次の村にたどり着いたものの、そこには更なる試練が待っていた。
「こりゃ大変だ。」ローレンが思わず声を上げた。村は洪水の被害を受け、いくつかの家屋が倒壊し、道は流れてきた土砂や石で覆われていた。しかし、村人たちは総出で復旧作業に励んでいる。リーナは深刻な顔で言った。
「大変!手伝わなきゃ!」
そう言うが早いか、リーナは村の中へ駆け出していった。サトリとアモンがその後を追う。大人二人は苦笑しながら、ゆっくりと続いた。
リーナとサトリは土砂を取り除く作業を手伝った。ミセルは村の男たちに混ざって力仕事に励む。ローレンは、この村を訪れるのは初めてだったが、にこやかに信用取引に応じ、主に食料品を値下げして売った。アモンは最初リーナと一緒に作業をしようとしたが、「危ないから」と言われ、しかたなくローレンのそばで手持ち無沙汰にしていた。
やがて、アモンはローレンの仕事ぶりを眺めるのに飽きてしまい、ふと村のそばを流れる川の方へ歩いていった。すると、川のほとりに自分と同じくらいの年恰好の少女を見つけた。少女は胸に花束を抱え、対岸をじっと見つめていた。
「どうしたの?」
アモンは話しかけた。
「あ、旅の人ね。私、向こう岸に行きたいんだけど、行く方法がなくて困っているの。今日は死んだお母さんの誕生日なの。この花をお墓に供えたいのに……」
少女の目から涙がこぼれた。
「橋を渡ればいいじゃない?」
「橋はこの間の洪水で流されちゃったの。」
「渡し舟は?」
「舟は嵐の前に陸に上げてあるの。でも私の力じゃ運べないわ。」
アモンはしばらく考え込んだが、やがて「ちょっと待ってて!」と言って村の方へ駆け戻った。
アモンは作業中のリーナに駆け寄り、少女の話を伝えた。リーナは汗をぬぐいながら、「そう、それは何とかしてあげたいね。ちょっと待ってて。」と言い、サトリとミセルにも相談に行った。しばらくして、一行は少女のもとへ集まった。
「渡し舟を運ぶのは無理だな。」ミセルが冷静に言った。
「村の人たちは手が離せなさそうだし……。」リーナも残念そうに呟く。
「別の橋を使って迂回すれば?」サトリが提案した。
「駄目よ、それじゃ今日中には着けないの。」少女は涙を拭いながら答える。
「荷馬車で渡るのはどうだ?」ミセルがからかうように言う。
「それは勘弁してくれ。」ローレンが首を振った。「川はまだ増水しているし、川底も荒れている。深みにはまったらどうすることもできない。この子には申し訳ないが、諦めてもらうしか……」
「ならば、私が渡らせる。」
ミセルは無表情で言った。




