第31話 アモンの願い
人ごみの中での抜剣とミセルの怒号に、広場はざわめき始めた。
「いかん!ミセル、ここはまずい。」
ローレンがミセルを制し、「話は宿でしよう」と提案した。ミセルは不承不承従った。
宿に着き、食堂に落ち着くまでの間、ミセルはアモンの首根っこを掴んで逃げないようにしていたが、アモンは不思議と大人しくしていた。
「さて、アモン、尋問を始める。言うまでもないが、嘘をつけば命はないぞ。」
ミセルの血走った眼に、一同は震え上がった。
「そのペンダントはどこで手に入れた?盗んだものか?」
「違うよ、さっきも言ったじゃない。生まれた時から持ってたんだ。本当の父さんか母さんが、おいらを捨てる時にくれたんだと思う。」
アモンは必死に訴え、大事そうにペンダントに手を当てた。サトリやリーナには嘘には聞こえなかった。
「よし、それはお前のものとしよう。だが、それならお前は闇の王の手の者ということになるが、それでいいか?」
「そんなの分からないよ!おいらはおいらだ!」
ミセルの脳裏には、自分の部隊が全滅した戦場にはためく蠍の紋章が蘇っていた。
(喜べ仲間たちよ、団長よ、私は復讐の手がかりをつかんだぞ!)
だが、どれだけ問い詰めても、ミセルが欲しい情報は得られず、尋問は堂々巡りを始めていた。
ローレンが重々しく言った。
「ミセル、こいつは本当に何も知らないようだ。」
ミセルは黙り込んだ。
その時、アモンが驚くことを言い出した。
「おいらをあんたたちの旅に連れてってくれないか?」
皆、顔を見合わせた。勢いづいてアモンが続ける。
「おいら、この町を出たいんだ。こんな生活から抜け出したいんだ。頼むよ、連れてってくれ!」
最初に口を開いたのはリーナだった。彼女は先ほどからアモンに感情移入していた。
「連れて行ってあげましょうよ。このままここで悪さを続けさせるなんて、かわいそうだわ。」
「だがリーナ、こいつはただの荷物にしかならないぜ。」
「それに闇の王の手先かもしれん。危険だ。」
大人二人は反対した。すると、ここまで黙っていたサトリがおずおずと口を開いた。
「僕は、連れて行った方がいいと思う。」
皆がサトリの顔を見た。
「アモンが闇の王と無関係なら、ローレンが教えてくれた『親切は商売になる』って言葉が活きるよね?」
「もし関係があるなら、ミセルの仇討ちの手がかりになるかもしれない。」
「サトリ!」
リーナの顔が輝いた。「あなた、良いこと言うのね!」
大人二人はじっと考え込んだ。しばしの沈黙の後、ローレンが笑みを浮かべて言った。
「そうだな。闇の王と対決するとき、人質にでもするか。」
そう言って、ペロッと舌を出す。
「お前たち、明日からの訓練はこれまでより厳しくなるぞ。」
ミセルは諦めたように言った。
「決まりね!アモン、よかったね。一緒に行きましょう!」
「うん、ありがとう、リーナ姉ちゃん!」
姉ちゃんと呼ばれたリーナは、相好を崩した。
ーーー
潮風が心地よい港の朝。一騎の騎馬と荷馬車がゆっくりと動き出した。
サトリ、リーナ、ローレン、ミセル、そしてアモン——五人の旅が、新たな幕を開ける。
これから始まる未来を、誰も知らない。
波音だけが、優しく響いていた・・・
ここまで読んでいただき誠にありがとうございます。仲間との出会い編の終わりです。サトリ、リーナ、ローレン、ミセル、アモンの五人の旅の仲間が揃いました。さてどんな旅となるか?・・・これからの物語もご期待ください!




