第3話 明かされた秘密
畑に向かうサトリの後を、リーナは大あくびをしながらついてきた。
「どうしたの、リーナ? 早く家に帰って寝ないと。今夜も夜哨だろ?」
「ああ、そうよ、さっさと寝なくちゃ。でも、お寝坊さんの言い訳を聞くのが楽しみなのよ。」
「リーナ…」
そんな気の置けない会話をしながら歩いていると、ほどなく畑に着いた。父と母は春キャベツの収穫に精を出していた。
「お父さん、お母さん、おはよう! ごめんね、遅くなっちゃった。」
サトリが大声で謝ると、父と母は近くにやってきた。
「おはよう、サトリ。よく眠れたかい?」
笑いながら父が言い、続けて母が優しい声で言った。
「あなたが本当にぐっすり眠っていたから、起こせなかったのよ。」
「ぐっすりは眠れたけど、不思議な夢を見たんだ。」
サトリが昨晩の夢の話をすると、父と母の顔色がみるみる変わり、父は天を仰ぎ、母は両手で顔を覆った。
「どうしたの、お父さん、お母さん?」
リーナの寝ぼけ眼はすっかり覚め、事の成り行きを固唾をのんで見守っていた。ややあって、気を取り直したように父が言った。
「サトリ。その夢は大切な啓示だ。今日の仕事はもういいから、今すぐ長老様にいまの話をして来い。神は与えたもう奪いたもう…」
サトリは何か言いたかったが、父と母の様子を見て、黙って長老の家へ向かった。リーナは当然のようについてきた。
――
長老の家は村の一番奥にある。サトリとリーナが家人に案内を乞うと、長老は朝のお勤めを終えたところだった。長老の毎日の務めは祭祀である。
「おう、サトリとリーナか。幼なじみがそろって何用じゃ?」
年老いた思慮深い声で長老は言った。
サトリは昨晩の夢と、それを父と母に話した時の様子を説明した。長老はじっと考え込んだ。長い沈黙の後、リーナがしびれを切らしかけた頃、ようやく口を開いた。
「サトリ、旅支度をせい! お前は今すぐ旅に出るのじゃ。ニンフ様を助けにノーマンズランドへと。ニンフ様は闇の王グラトスにもう長いこと囚われておる。そのおかげで世界の光と闇は拮抗を保っていたのじゃが、なにか異変が起きたらしい。じゃがのう、この時が来るのを、我らは長年待ち続けてきたのじゃ。」
「我らはかつて、全ての王国を統べたサトリヌス帝国の末裔じゃ。我らの帝国はニンフ様のご加護で繁栄していた。しかし突如現れた闇の王によって滅ぼされ、この地に隠れ住むことになったのじゃ。」
「サトリ、お前の真名は『カール・ハインツ・サトリアン』、帝国の皇家の血筋なのじゃ。ニンフ様を救えるのはお主しかおらぬ!」
にわかには信じがたい真実を突きつけられ、サトリの思考は一瞬、完全に停止した。魂が抜けたような状態のサトリの横から、リーナの明るい楽しげな声が聞こえた。
「サトリをノーマンズランドに連れて行くのは、私の役目ね!」




