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第26話 口論

「ミセル、いいの?」


サトリとリーナは小躍りして喜んだ。だが、ローレンは困ったような顔をしている。ミセルは淡々と続けた。


「行商人、金の心配をする必要はない。私を傭兵風情と一緒にしてもらっては困る。それに、闇の王には借りがあるしな。どうせあてのない旅だ。少々寄り道しても仲間たちの霊は許してくれるだろう。団長も……」


サトリとリーナは嬉しそうにミセルに駆け寄った。しかしローレンは腕を組み、じっと考え込んでいる。


彼はミセルと自分、どちらがリーダーになるべきか悩んでいた。平時であれば、旅を生業とする自分が適任だろう。だが戦闘となれば、せいぜい荷馬車を守る程度しかできない。かつて行商人仲間と隊商を組んで旅をした際、リーダー争いで苦い思いをしたことがあるローレンにとって、ミセルの加入は手放しで喜べるものではなかった。


一方のミセルも同じことを考えていた。職業軍人である彼女は、指揮系統の乱れが命取りになることを痛いほど知っている。だが、加わったばかりの自分がリーダーを名乗り出るのも気が引けた。


大人二人は互いに黙り込んでしまった。だが、先に膠着状態を破ったのはミセルだった。


「では、これから先のリーダーは私ということでよいな?」


ローレンが慌てて口を挟む。


「いやいや、これからも行商しながら旅をするんだ。決定権は俺にあるはずだぜ。」


二人は睨み合いながら言い合いを続けた。サトリとリーナはハラハラしながら様子を見ている。


「それなら、普段はローレンがリーダーで、危険が迫ったときだけミセルが指揮をとる、というのはどう?」


サトリの言葉に、ミセルとローレンは同時に彼を見た。そして、互いの顔を見合わせると、ニヤリと笑った。


「……では、行商人、それで手を打つか。」


「なんともありがたきお言葉を騎士様。」


ローレンは肩をすくめながら、大げさに頭を下げてみせた。


ミセルも微笑を浮かべ、すかさず返す。


「うむ、サトリに感謝するがよい。行商人としてせいぜい金儲けに励むのだな。」


二人のやりとりを見て、サトリとリーナは顔を見合わせた。


するとミセルが、ふと悪戯っぽく言った。


「ではお前たち、明日から特訓だ!」

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