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第20話 祝杯

サトリとリーナがタンポポ亭の食堂に入ると、普段とはまるで違う雰囲気だった。奥にはこじんまりとした舞台らしきものが設えられ、客の目がそこに集中するように机と椅子が並べられていた。いつもは客がゆったりできるよう配慮された配置だったが、いまは少々手狭に感じられる。宿屋の主人もローレンに負けず劣らず商魂たくましかったのだ。満面の笑みで二人を迎えた主人は、


「疲れているところ悪いが、みんな君たちの話を聞きたくて興奮しているんだ。さあ、話してやってくれ。」


そう言って、ステージへと二人を案内した。二人は覚悟を決め、ローレンにまとめてもらった台本の通りに話し始めた……。


---


何度同じ話を繰り返したことだろうか。宿の主人の指示に応じて聴衆へ語りかけていた二人に、救世主が現れた。所用を済ませたローレンが帰ってきたのだ。時刻は夜半を回ろうとしていた。


「さあさ、お客さん方!二人はお疲れだ。ここらでお開きにしてくれないか。心配しなくても、二人はしばらくここに逗留するから。今日はここまでだ、みんな帰った帰った。」


すでに話を聞いた客は名残惜しげに、まだ順番を待っていた客は恨めしげに、それぞれ帰っていった。すべての客がはけると、ようやく仲間たちだけの祝杯となった。


「みんな今日はありがとう。特にサトリとリーナはお疲れさま。おかげで借金を完済し、毛皮の保管料もきっちり支払った。こんなめでたい日はない。さあ、乾杯だ!」


ローレンの音頭で宴が始まり、皆は思い思いに今日の非日常的な出来事を語り合った。サトリとリーナは、ようやく英雄扱いから解放され、人心地つくことができた。ローレンはにこやかに挨拶していたが、今日の奇跡を誰よりも不安に思い、誰よりも責任を感じていたのだろう。それが緩んでしまうのは仕方のないことだった……。


---


宴もたけなわの頃、ローレンは真剣な面持ちで立ち上がり、こう宣言した。


「不肖、このローレン、二人の英雄と共に西の果て、ノーマンズランドに旅立つことにした!」

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