第19話 大成功
ローレンは成功を確信した。だが、すました顔で抜け目なく口上を叫び続け、客を煽り続ける。台の下ではサトリたちが忙しく品物の受け渡しや代金の受け取りをしていた。騒ぎが大きくなり、トラブルや事故の危険性が増したと判断したのか、護民兵まで繰り出してきた。彼らは群衆を監視しながらも、どこか興味深そうに商売の行く末を見守っている。
忙しく手を動かしながら、サトリはふと思った。(「こんなにも嘘を見破りたい人たちがいるんだなぁ」)と。
まるで、この世には嘘をつかない者などいないかのようだ。
必死の形相で毛皮を買い求める人たちは、若者は恋人の愛の言葉の真偽を、商人たちは取引先の誠実さを、庶民は詐欺から身を守るためなど、それぞれの事情を抱えていた。だが、それを知ることが本当に幸せなのだろうか。サトリは一瞬、そんな考えを巡らせたが、すぐに忙しさに飲み込まれ、その思いは遠く消えてしまった。
毛皮の山はなかなか崩れない。しかし、売り始めてしばらくすると噂が街中に広がり、ふだんこの時間には姿を見せないような連中までも群衆の中に現れるようになった。日が傾きかけた頃、商売の喧騒とは異なる、異質な空気が混ざり始める。派手な装いの男、目つきの鋭い女、密かに人混みをかき分ける影──普段なら人前に出ることを避けるような者たちが、次々と押し寄せた。
犯罪者や詐欺師たちである。
彼らは、自分たちの嘘を見破られてはたまらない。さらに取引相手や仲間が嘘をついていないか知ることは、彼らにとって死活問題だった。そんな彼らが、自分の手で毛皮を回収しておかなければ、この先の商売に差しさわりが出ると考え、大口の客となっていった。
毛皮は次々と買われ、山はみるみる崩れていった。
昼前に始まった商いは、夕方前には終わった。ついに完売である!
みんなはへとへとに疲れていたが、達成感で自然とこぼれる笑みを交わし、抱き合って輪になり喜んだ。そしてローレンが高らかに宣言した。
「みんな、お疲れさま! おかげで毛皮は売り切れだ。片付けは明日にして祝杯を上げよう!」
一行は、今日の痛快な出来事をワイワイ話しながらタンポポ亭の前に来ると、驚くべき光景を目にした。タンポポ亭の入り口に長い列ができていたのだ!それは、サトリとリーナの冒険譚を聞きに集まった人々だった。
ローレンは、
「二人とも、もう仕事が終わったと思ったか?」
と、ニヤリと笑った。
サトリとリーナは顔を見合わせ、ため息をついた。
「……そんな気がしてた。」
ローレン自身も、借金の返済、倉庫への支払い、大切な売上金を商会の金庫に預ける仕事が残っていた。だが、今のローレンの足取りは軽い。
「それじゃ、頼む!」
そう言い残し、ローレンは金貸しのもとへ向かった。手伝いの皆も、楽しそうにタンポポ亭へ入っていく。
サトリとリーナの足取りだけが、重かった……。




