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第16話 行商人の勘

全力で駆けてきたのだろう。ローレンは肩で息をしながら、荒い呼吸を整えていた。気の利く宿の娘が差し出した水をひと息に飲み干すと、それも待ちきれずに矢継ぎ早に二人に質問を浴びせかけた。サトリとリーナは目を白黒させながらも、ガロの試練、ロトとの出会い、透明な女中、八徳の話、そして最後に嘘を見破る毛皮のことまでを話し終えた。


ローレンはその話を聞き終えると、歓喜のあまり、周囲の客の好奇の目も気にせず、大きく両手を上げて万歳した。


「サトリ、リーナ、本当にありがとう! これで首の皮一枚、俺の命は助かった!」


「ロトは『この毛皮の使い道は僕らに任せる』って言ってたけど、ローレンはどうするつもりなの?」


リーナの問いに、ローレンは自信満々に答えた。


「そりゃあ、金持ち相手に売っぱらうしかないだろう。嘘を見破る毛皮なんて、目玉が飛び出るほどの高値がつくはずさ……いや、待てよ。それじゃ、今抱えている在庫の毛皮が捌けなくなるな……」


途端にローレンは黙り込んだ。


食堂は今が一番の繁盛時。喧噪の中で、三人のテーブルだけが時が止まったように静まり返った。そんな中、リーナがおずおずと口を開く。


「セリにかけるのはどう? うまくいけば、金持ちに売るよりも高値がつくこともあるんじゃない?」


「いや、リーナ。セリにかけても同じことさ……」


ローレンは腕を組み、再び深く考え込んだ。


サトリとリーナは商売に関しては素人だった。ローレンが何か妙案をひねり出すのを待つしかない。


---


しばらく時間がたったが、三人に妙案は浮かばなかった。食堂は相変わらず賑わいを見せ、隣のテーブルでも客が入れ替わっていた。新たに座ったのは四人組の男たち。その中の一人、先頭の男が上機嫌で大声を上げた。


「さあさあ、何でも頼んでくれ! 今日は俺のおごりだ。なんせ、富くじに当たっちまったんだからよー!」


たぶん、ここに来る前に酒でも飲んできたのだろう。サトリとリーナは騒がしい声に気をそがれ、不快そうに顔をしかめた。だが、その瞬間、ローレンがわずかに身じろぎした。腕組みを解き、両手をだらんと下げると、天井を見上げる。


二人が驚いてローレンの顔を覗き込むと、眉間にしわを寄せた苦悩の表情が、じわじわと喜びに変わり、やがて歓喜の笑みに変わっていった。


「そうだ! これだ!」


ローレンは勢いよく声を上げると、二人に顔を寄せた。


「聞いてくれ。とんでもないことを思いついたぞ!」


三人はひそひそと話し始めた──。

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