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03:裏番人と幽霊と吸血

唯希の変態度が……かなりアップして驚いた。

そして、もう一人の条一登場。

う~んまさかこんなキャラになるとは……どっちがパパか分からんな。

「思うんだよね。結局カレーは、カレーハンバーグが一番だって」

「他にもハチミツとリンゴとかも外せない。ハンバーグの中にさり気なくウィンナーが入っていたりも良いかも、という新事実」


 グレーとホワイトの縞々模様のカラーリングをしたワンルームマンション。

 そのマンションの一角にある地味な部屋。


「パパ、それ凄く美味しそうだよ」

「でしょ?」

「おい……」


 ジョウ、悠太と唯希の三人がテーブルを囲むように座っている。

 シャープペンを左手に持ち、悠太は本に書かれていることをノートに書き写す。

 横では勉強を手伝いに来たはずのジョウが何故か突然現れた唯希とカレー話に花を咲かせている。


「俺さ、カレーにはお肉だけで十分と思うんだ。ジャガイモとかニンジンとかいらないし」

「さんせ~い! パパ皇帝、カレーの野菜に終止符を打つ時が来たのであります♪」


 唯希を立ち上がり、左手を持ち上げ敬礼する。


「武器を取れ。カレーの野菜共を殲滅するぞ!」


 ジョウも立ち上がり、その場でクルリと180度回転し台所に向かう。

 唯希はジョウを追うように、軽くステップを踏みながら歩く。


「さあ、肉だけカレーを作るぞー」


 ジョウが言い。


「イエース、ユア、ハイネス♪」


 と唯希はそれに答え。


「何でそうなるんだよォォォォォ!」


 悠太が全身全霊を込めてツッコミを入れる。

 その叫び声に、二人はピクッと震えた。


「小学生でも、そんな低レベルの会話しねぇから! というか何で、『マジで作ろうぜ(キラッ』、的な流れになってんの! ジョウ先輩と唯希ちゃん忘れてない? 僕、来週高校受験するんですけど」

「あ……そっか。ごめん、悠くん」


 思い浮かぶのは一人の少女。

 一週間前から元気がなく、ジョウを見る度に顔を歪ませる。


――自分は嫌われたのではないか。否、確実に嫌われている。


 正直に言えば思い当たるふしは幾つかある。


「やっぱり俺さ、色々と迷惑かけてばかり……だ、だから加藤さんも……」

「え……?」


 そして今も自分のせいで、大事な家族(なかま)に迷惑をかけた。


「うっ……ごめんなさーい!」

「え? ジョウ先輩!?」


 気づいたら部屋を飛び出していた。


「……何ですか、この展開。まるで、僕が悪いみたいじゃ……」

「悠兄ぃ、空気読めっつーの」

「俺が悪者でした、みたいになってる!?」


 唯希は深くため息を付き、やれやれと肩を竦め。

 これだから鈍感は、と呟く。


「鈍感は関係ないよ。ジョウ先輩、何かあったの? いつもに増して意味不明過ぎて何が何だか」


 立ち上がり冷蔵庫の中から大好きな牛乳を取り出した悠太は、牛乳をコップに入れて飲む。


「教えてあげてもいいけど。その前にさ、骨盤あたりにある男の器官について話してね♪ ほら、等価交換ってやつ。」

「うん、オーケー……ん?」


 そこで思考が止まり、唯希の台詞が頭の中でリピートされる。

――男の器官。

 理解した瞬間、牛乳を吹き出す。


「アホか、てめぇ! ガキのくせに何を言ってんの! そんなモン教えるはずないだろ! つーか、唯希ちゃん、ジョウ先輩のこと心配じゃないの!?」

「アタシは鼻がいいから、パパが何処にいようと必ずみつけるし。それより、いいでしょ? サンプル画像は悠兄ぃので我慢するから、ね?」

「何が、ね? だよ! ダメに決まってる。もしかして唯希ちゃんが此処に来た理由は、”受験勉強に保健体育(主に性的なこと)を学んでる僕から、勉強内容を聞きに来た”とかでしょ……」

「えっ! 何で分かったの?」

「追記、受験に保健体育(主に性的なこと)何かない」


 ガガガーンという効果音が響きそうに、顔を驚きで染め上げて床に崩れ落ちる。


「受験に保健体育(主に性的なこと)がないの? 日本がダメなのはそのせいか……チッ」

「おいぃぃぃぃぃ! 何がチッ、だよ! んなもんがないからって日本をダメ呼ばわりするな! 日本を愛する人達に謝れ!」

「ギャーギャーピーピーうるさい。人類が子孫を残すためには悠兄ぃが言う、んなもん、が必要なんだよ。だから大人になる前に勉強して後に備えようと思うんだよね~」

「備えなくてもいいから! まだ唯希ちゃんには早すぎる!」

「……まるで自分は大人だからオーケーですよ~みたいな言い方だよ、それ」


 唯希はニヤリと口元を吊り上げる、


「つまり大人な悠兄ぃは、子供のアタシの生まれたままの姿を見ても欲情しない?」

「あ……えっ! な、な、な、な、何言っての!」

「だーかーらー、アタシのはだぐへっ!」


――打撃っ!――


 頭に響いた軽い衝撃が言葉を遮る。

 唯希は叩かれた頭を抑えながら後ろを振り向くと、


「これだから子供たちだけを家にぬこしてはおけない」


 ジョウがそこに居た。

 弱々しい空気を放つ彼ではない。

 瞳に宿る力強い意志、凛とした表情。もう一人の、強気の方。


――第二人格の条一だ。


「げっ……何でお前が表に出てるの? パパは?」

「父さん、来てくれたんですね! 僕一人で唯希ちゃんの世話は無理ですよ!」

「世話って何さ? アタシはそこまで子供じゃないもんね~」

「さっき子供のアタシって自分で言っただろ?」

「ふんだ、子供の裸を想像して顔真っ赤にしてたくせに」

「し、してないし。何いってんのこの子は」

「したー」

「してない」

「したー」

「してない」

「うるさいバカ兄妹」


――打撃っ!――


 二人に拳骨をお見舞いする。

 悠太と唯希は頭を抱えて”もう一人の条一”を見上げた。


「痛いな、何で叩くのさ?」

「それはこっちの台詞だよ、何で何もしてない僕まで叩かれなくちゃ」

「うるさいと僕は言ったはずだ」


――殺気――


 その一言で部屋の中に沈黙が流れる。

 本来のジョウの人格では考えられない、相手を威圧するという行為。

 体は同じなのに中身が違うだけで此処まで人は変わる。


「僕が出たのは君たち二人ぬ兄妹喧嘩を見て聞きに来た訳ではない」


 条一は言う、


「悠太、唯希。君たち二人にたぬみがある。”条一”の事でな」

因みに。


唯希は、表の条一を「パパ」と呼び。裏の条一を「お前」。

悠太は、表の条一を「先輩」。裏の条一を「父さん」と呼びます。


複雑な家族構成なんですよ……察してください。


そして、裏の条一が喋り方。

「の」を発音するところが「ぬ」になる。

だから誤字なんかじゃありませんから。

彼は「の」って言えないんです。何故か「ぬ」になっちゃうんです。

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