01:番人と幽霊
作り直し中のエキセンの試作品(?)。
日常でコメディ的なモノが書けるかな? のテスト作品でもあります。
「お、俺さ、実は……加藤さんのこと、好きなんだ」
「……へぇー」
今から約10年くらい前。和歌山市の西部に位置する海。
その上に一つの島が、人工島が造られた。
隣の和歌山市の面積を一回り大きくしたくらいの、小さな島だ。
――名は歌空島。
島の中心の歌空中部地区にある「歌空中部駅」から徒歩10分以内という距離に建つ、グレーとホワイトの縞々網様の奇妙なカラーリングが特徴なワンルームマンション。
そのマンションの、とある一部屋。
目立った家具は本棚、勉強机、ベット、小さなテーブルとテレビだけ。
飾付けも無しの地味な部屋だ。
地味の部屋に置かれてある小さなテーブルに、向かい合うように座っている二人組。
「寝ても覚めても加藤さんの事ばかりが浮かんじゃって」
「……そうなんですか」
今の季節は冬。と言っても、2月の真ん中あたりだから"冬の終りで春の始まり"、の方がしっくり来る。
高校入試試験の時期でもある。
この部屋にいる二人は元々は勉強しに集まったわけであるが、何故か、
(何で愛の告白されてんの!? つーか、この人は何しに来たんだよマジで。俺、受験生という事を忘れてない?)
告白されてしまったメガネの男は、告白した相手を見る。
長い付き合いだが、名前は知らない。否、教えてくれない。
だからコードネームの「ジョウ」と呼ばされている。一つ年上の先輩で、高校一年生。
パッと見では、白髪の髪が目立がそれ以外は普通。悪くもなければ良くもない。
性格の方は一言で言えば”優しすぎる”……まぁ、今はウザイ以外の何もないが、と思っているのは余談。
顔は普通で中身は良い。
普通そんな人に告白されたら、少なくとも6割は喜ぶだろう。
でも、メガネの男は唖然としていた。
なぜなら、
「……ジョウ先輩、何故それを言うのですか?」
メガネの男は"加藤"ではないからだ。
というか、もう一人も、"男"だ。
「え? それは勿論、恋のフォローをたのもうと……」
「んなこと聞いてねぇしぃぃぃ! 勉強を手伝うってアンタが言ったから呼んだなのに、何で俺が恋のキューピット頼まれてんの!? 訳わかんないよ! こっちは受験勉強で忙しいのに、何でいまさら先輩の恋の話を聞かないと行けないんだ! つーか先輩が、藍華さんを好きな事は知ってるから」
「……っ! うそ……いつ、から?」
「誰だってジョウ先輩の藍華さんに取る態度と表情を見れば一目瞭然。たぶん、デイミングのグループで知らないのは本人の藍華さんだけですよ? あの人の鈍感ぶりは以上を通りこして、もはや才能の領域だし」
ジョウと呼ばれた男の顔が、リンゴみたいに真っ赤に染まる。
自分では上手に隠しているつもりだったらしいのに、メンバー全員に自分の気持がバレていたのだ。
うわぁぁぁ、どんな顔でグループのメンバーに会えばいい? 何で皆知ってるの? 何々これ何と言う公開処刑! と心の中で叫び。
「いやぁ~」という可愛くも無い悲鳴を上げながら部屋の中を頭を抱えてジョウは部屋の中を転がりまわる。
――ドス
ベットにぶつかった。
「どうしようどうしようどうしよう」
「……」
――ドス
勉強机にぶつかった。
「恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい」
「……」
――ドス
メガネをかけた自分の後輩にぶつかり、
「うっさいわボケェェェェェェ!」と強烈な拳骨が急所に当たった。
刹那、「ぐっへへへぇぇぇええ」奇妙な叫び声がマンション内に響いたとか響いてなかったとか。
メガネの男こと、八神悠太。
残り1週間足らずで受験を迎える中三であった。