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メガネ少女は君を虜にさせたくて

「絶対彼女にするならメガネをつけたJKっす!あとショートだと尚よしっす!先輩はどうなんですか?」


放課後の教室。

僕たち以外誰もいない静まり返った教室に、熱く彼女と熱弁していた。それはもうお互い引く程に。

付き合うならどんな人がいいか。そんなくだらない話題。

メガネがいいだの、ショートがいいだのそんな言い合いをかれこれ1時間近くしているが終わる兆しがない。


「そんな事言うけど、君はもし……もしだぞ、私がメガネをつけた美少女ショートヘアJKだったら付き合うかい?」


ミステリアスでクールでツンデレな先輩は肘を付き、僕の目を見ながらそう言う。

いきなりだった。先輩がそんな事を言ったのは。

先輩はいつも冗談を言う。

だからそんな発言はこの時も場を盛り上げる冗談半分だと思っていた。

だって先輩は透けるような長い髪をしていて、ダイヤモンドのような綺麗な目をしている。そんなことをしなくても充分に可愛い。


「先輩はそのままでいいんじゃないっすか?まぁ先輩のメガネ美少女ショートJKも見てみたいっすけど……」


僕は何となくそう答えた。ただ何となく


「そう……」


先輩はそう言うと、1時間も続いた議論が嘘のように突然終わりそそくさと帰ってしまった。

取り残された僕は、ただ唖然とした。

次の週。誰もが驚いた。僕だって驚いた。

学校に来た先輩は「メガネ美少女ショートJK」になっていたんだから。


☆──────────☆


道端 雫は美少女である。

自分で言うのはなんだが、美少女である。それは雫自身一番よく分かっている。なんなら、それが己の一番の武器とさえ思っている。

透き通るような長い髪に、ダイヤモンドのようなキラキラとした瞳。調和がとれた整った顔立ち。

そんな彼女を人は言う。天使だと

誰もが言う。美少女と。

そんな姿が完成系であり、至高。


私自身天使だし、美少女だと思う。

自己肯定感が高すぎると思うが、これが、これこそが私だ。

誰にも近ずけさせない。

誰かに私を使わせる気なんてない。孤高な美しき美少女。


道端 雫もそんな完璧を変えるつもりは毛頭なかった。そう、なかったのだ。

こいつがあんな事を言わなければこんな事をしなかった。


「どうだい桜くん!このメガネ美少女は!ついでにショートヘアにもしたぞ!可愛いだろ!」


「先輩なんで髪切ったんすか?そのメガネも……。前のでも似合ってたのに……」


そう、こんな事を言うこいつのせいである。

この峰方 桜のせいだ。能天気でバカで同級生なのに私のことを先輩と呼ぶ、この阿呆のせいだ。

思った事は何でも口に出して、割と傷つく事を平気で言う、嘘なんてつけない馬鹿な正直者。

誰も私に意見などしないのに、こいつだけが私を普通の人として認識してくれる。今までそんな奴はいなかった。

恐らくこいつはサイコパスか頭がおかしい奴なんだろう。


そんなこいつが、メガネが好きでショートヘアが好きで美少女が好きだと言ったからこうなった。

何故こんな愚かな事をしたか。

一つ言っておこう、この物語の主人公は私だ。この道端 雫の物語だ。決して、そこらの有象無象でもこの峰方 桜の物語では無い。

この美少女の物語だ。


私がこの峰方 桜を完膚なきまでに堕とす、そんな物語。

私をバカにする奴なんてそうそういない。

意見する奴もいない。


だからそんな峰方 桜が私は好きだ。全部が好きだ。

だから何としてでも堕とす。私が長所と思っている所を捨ててでもこいつを堕とす。

私が惚れた男だ。

メガネだってなんだってかけてやる。

私はこいつを!何としてでも虜にしてみせる!

さぁ!私を存分に可愛いといえ!このメガネ美少女と付き合いたいと言え!


「なんというかメガネをかけた先輩……いつもより何倍も可愛いっすよ!付き合いたいぐらいっす!」


「かぁぁぁぁぁぁぁァ!!バカ!バカ!この女たらし!ほんとに言うやつがいるか!バカ!」


今日も今日とて道端 雫は峰方 桜に虜にさせられる。


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