表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

コメディー短編(異世界恋愛・ファンタジー)

異世界に召喚されたけど、言葉がまったくわからないので、それっぽい行動をしてたら、世界を救っちゃいました

作者: 多田 笑

少しでも笑っていただけたら嬉しいです。

 俺の名前は葉梨(はなし)ワカル。どこにでもいる平凡な高校生──だったのだが、ある日、授業中に突然光に包まれ、気がついたら謎の大広間に立っていた。


 豪華なシャンデリア、ずらりと並んだ鎧、でっかい玉座。そして、目の前には王様っぽいおじさんと、ツンとすました美女。その美女が口を開いた。


「グラァ=タァン・プァンツィ・プアウマア!!」


 ……何言ってんの?


 まったくわからん。しかも、俺がポカンとしていると、周囲の人たちが「おお〜っ」とか何か色々言いながらざわついてる。いや、お前らの言葉、ぜんぶ異世界語で何言ってるかわからないって……。こういうのって、普通は分かるようになるんじゃないの?


 それからというもの、俺は訳の分からぬまま歓迎され、飯を出され、なんか魔法陣とかで祝福された。わからないながらも、俺は推理した。


 たぶん、俺、すっごい強い存在として期待されてるっぽい。


 でも、俺には特別な力なんてないし、異世界語もさっぱり。とりあえず、何言われても「うむ」とか言っておくか……。


 そんな感じで俺の異世界生活が始まった。



 ある日、訓練場に連れて行かれた。筋骨隆々の戦士たちが木剣を持って並んでいる。どうやら、俺に戦闘技術を見せてくれるらしい。


「ムァンズィ=ユウ・プォイントデコー=カーン!」


「ウム……?」


 よくわからんが、たぶん「どれ、我が技を見せよう!」みたいなノリだ。とりあえず、俺は剣を持ってみた。うん、持ち方はなんとなくわかる。


 戦士が襲いかかってくる。ヤバい、どうしよう!


 その瞬間、俺はよけた。偶然つまずいてこけたせいで、相手の攻撃が空振り。そして、勢い余って戦士が自爆して転倒。周囲は大歓声。


「ホォォォーーーーッ!!」


「ムァンズィ・ユウ・アマァアアアイ!!」


 ……たぶん、「すげぇ!」とか言ってる。いやいや、ただこけただけだって。



 さらに次の日。今度は魔導士たちの塔に連れて行かれた。長老みたいな爺さんが、魔法陣を描きながら語り出す。


「アンクォ=ファィルト=アマクナル・ゲン=エン・シロヨ!」


「……ウム」


 とりあえず、神妙な顔でうなずいておいた。


 すると、魔法陣の中心に立つよう促された。まわりは期待の眼差し。たぶん、俺に魔法を見せてほしいってことだろう。


 仕方なく、俺は適当に手を上げて「マンズィユー!」と叫んでみた。なぜかは知らん。なんとなくだ。そしたら──


 天井が落ちた。


 ……どうやら、上の階でドラゴンが飼われていて、俺の声でびっくりして暴れたらしい。天井を突き破って落下してきたドラゴンは、偶然にも隠された邪神の像を破壊。それが封印の鍵だったとかで、邪神復活阻止に成功したらしい。


 俺は神と崇められた。



 その後も、俺は見よう見まねでテキトーにやってただけなのに、すべてが奇跡的に上手くいってしまった。


 農民に囲まれて畑を指差されたときも、なんか「耕せ」って感じかな?と思ってスコップを振り回したら、地面から聖なる泉が湧き出して干ばつ解消。


 貴族の屋敷に招かれ、トイレを探して迷子に。なんとなく押した壁が「ガコン」と開いて──隠し倉庫を発見。中から金銀財宝が。


 そして、ついには、世界を苦しめていた魔王との最終決戦にも同行させられたのだが、俺はそのとき腹が痛くて、戦いの前にトイレを探してウロウロしていた。途中、転んで階段を転げ落ち、その先にあった魔力の増幅装置をうっかり破壊してしまい、魔王の力が弱体化。アリのように小さくなりプチッと踏み潰す。結果、世界は救われた。



 そして今。


 俺は玉座の間で王様と姫に囲まれていた。周囲は盛大な拍手。王が言う。


「ウムァーイ・ワカル! ムァンジュウ・ウマィーナ・アマィ・ガナ!!」


 ……え、婚約? いやいや、意味わからんし!


 だが、姫が俺の腕にそっと手を添えて、頬を赤らめた。


……やっぱり姫と結婚するっぽい!


 かくして俺は、異世界の言葉が一言もわからぬまま、なぜか世界を救い、姫と婚約し、英雄として国に名を刻まれることになったのだった。


 ま、いっか。困ったら「うむ」って言っておけば、だいたい何とかなる。

饅頭~が、食べた~い!


最後までお読みいただきありがとうございます。

誤字・脱字、誤用などあれば、誤字報告いただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
勘違い(され)系英雄譚ですね! ムァンズュウ・クォワーィィィ!オツァァモ・クォワーィィィ!w
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ