ヒールしかできない賢者、神と呼ばれる
目を覚ますと、俺は「にほん」とかいう謎の世界にいた。魔物はいない。空気はきれい。なぜか空飛ぶ鉄の箱がゴウンゴウン飛んでいる。
完全に異世界だコレ。
ポケットにはステータス表示石だけが残っていた。
ちゃんと「賢者(Lv1)」って書いてある。ああ……俺、また落ちこぼれかぁ。
と、そこへ――
「誰かっ!この中にお医者様はいらっしゃいませんかーーー!!」
人が倒れてる!回復職なら、こういう時くらい役に立たなきゃ!
俺「……《ヒール》」
ポワァァ……と光が溢れ、倒れていた人の顔色が戻る。
通行人「……うおお!?光ったぞ!!」
おばちゃん「あなた……神様!?」
女子高生「えっ推しにしたい……(パシャァ)」
うそだろ!?
レベル1のヒール、こんなにウケる世界あんの!?
だがその時――本物の医者が駆けつけてくる。
医者「失礼します、私は救急専門医の……えっ、あれ、心肺蘇生前なのに……!?呼吸戻ってる!?」
俺「え、いや……回復魔法で」
医者「……今、なんて?」
次の瞬間、白衣の男に腕をつかまれた。
医者「あなた、うちの大学に来てください!研究室に!」
俺「いやいや!俺、ただのヒール使いなんで!そんな大層なもんじゃ……!ヒールしかできない賢者です!ヒールしか!」