第九話 三人で
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天川君はこれまでの真相を全て話してくれた。
私だけじゃなく、天川君と美希までこんな事に巻き込まれていたなんて。
「…てことは美希。もしかして私の様子がおかしい事も。」
「…うん。気づいてた。美月もこっち側に来てしまったなら、私が守らないとって思った。」
「なんで言ってくれなかったの?」
「…言えるわけないよ。こんな事普通誰が信じるの。」
美希の言い分も間違っていない。現に私も、一人で抱え込んでいたのだから。
でも、天川君も美希もそれに気付いて助けてくれていたんだ。
「…天川君は美希の事覚えてたんだ?」
「僕はね、でも美希さんは…。」
「ごめん、全く覚えてない。でも、今の話は信じるよ。」
恐らく天川君と美希は、元々物凄く仲が良かったのだろう。
お互いを理解するまでの早さがそれを証明していた。
「…でも、切ないよ。美希は天川君を忘れちゃってるし、天川君は生徒でもなくなってしまったんでしょ?仲良しのクラスメイトだったのに。」
「…桜井さん。仕方ないことなんだ。それでも僕は皆とハルカやカナタを助けたいと思ったんだ。」
私は心底、天川君や美希を尊敬した。
「…でも、これからどうするの?私のそっくりさんは結局なんなの?」
「あれは僕にもわからないんだ。でも、今分かることは、桜井さんには特別な力がある。何億人に一人と言われている力を持っているんだ。…その力によるものか、時空問題なのか。」
天川君は自信なさげに語り続けていた。
そして、美希は立ち上がると背伸びをした。
「まずは、三人で協力し合おうよ。」
美希の言葉に天川君も賛同した。
「そうだね。三人で七月七日の壁を越えよう。それがハルカやカナタの成仏にも繋がる!」
「でも、まずは七月二日の今日を何とかしたいよね。」
美希は時計を見た。
現在時刻 十四時三十分を指している。
「…学校に戻っても仕方ないし。まずは美月のドッペルゲンガーについて調べようか?」
「そうだね。僕も気になっているんだ。桜井さんは何か思い当たる事はない?」
私は二人に言われ、これまでの事を思い返してみた。
「…うーん。一回目は誰かに橋から落とされて、二回目は美希に化けた怪物に食べられて…。」
「…桜井さんを橋から突き落とした犯人は逢沢さんだよ。桜井さん、死に戻り二回目の時にまた橋まで行ったよね?」
確かに、一回目と同じルートを辿って犯人を見つけようとしたんだ。そして、私は「あっ」と思い出した。
「そう、あの時桜井さんを追ってきたのは美希さんと逢沢さんだったよね?美希さんは既に死に戻り中だから犯人からは除外。すると残るは逢沢さんになるよね。」
「…そうだった。…ん?でも天川君なんで知ってるの?」
「桜井さんが橋から転落死した後、僕も死に戻りしたんだ。一人でも死んでしまったら意味が無いからね。その後、同じ時間帯に陰から桜井さんを見ていたんだよ。そしたら二人が追って来た所に遭遇したわけ。」
霧がかかっていた謎が一つ明らかになり、複雑な感情もありつつ心のどこか晴れてもいた。
「じゃあ、まず私のドッペルゲンガーについて調べるってことで。」
私が去ろうとすると美希が私の手を掴む。
「三人で一緒に動こう。何かあったら大変だからね。」
「僕もその方が良いと思うよ。」
二人の意見に従い、私達は動き出したのだった。
通学路 下向方面
「ねぇ、美希?美希が死んだ理由って何だったの?」
「…一回目は天川君と同じなんだと思う。二回目は美月が橋から落ちた時。三回目は…。」
美希は話す事を躊躇している様子だった。
「…美希さん。あなたが死んだ後、美希さんは怪物になったんだ。その怪物に桜井さんは殺された。」
「…そんな記憶は私には無い。私が死んだ後に私の死体を使ったとしか…。」
美希の表情を見つめ、天川君は更に問い詰めた。
「…君は誰に殺されたんだい?」
「…優だよ。」
私と天川君は立ち止まった。驚きを隠せなかったからだ。
「…優って。嘘でしょ美希?」
「…正確には、優に化けた誰か。」
化けた?美希は何を言っているのだろう。それに、なんでこのタイミングで優の名前が出てくるのか、私にはさっぱり分からなかった。
全ての始まりは逢沢桃の裏切り。そして、逢沢桃のおまじないによってハルカとカナタの封印が解けた。それらに巻き込まれたのが私達…だと思っていたけど。
「まさかここで長谷部君の名前が出てくるとは予想外だ。」
「ねぇ美希。訳を聞かせてくれない?」
美希は渋々頷いた。
ーーーーー
七月二日 午後十八時過ぎ
「…じゃあ私帰るけど、美月、大丈夫そ?」
「うん、心配してくれてありがとうね。」
私は美月の家から出た後、自宅へと向かっていた。
美月の家を出たら住宅街を抜けて、街中に出る。歩道橋を渡り、バス停でバスを待つ。そのバスに二十分揺られ、コンビニ前のバス停で降りる。そこから徒歩で歩いていると左手に空き地が見える。
公園でも作ればいいのに…と通り過ぎる度に思う。
その空き地を通り過ぎる頃、後方から「美希ー!」と声が聞こえた。
振り返ると長谷部優が手を振りながらこちらに走ってきていた。
「…優?何、どうした?」
優は息が荒れる中、何かを訴えている。
「え?何?」
「…だから…美月…は…大丈夫なのか…って。」
「…あんた少し運動した方が良いよ。…美月なら大丈夫だけど。」
優は安堵の表情をこちらへ向けた。
「あぁ良かった!じゃあ美希、ちょっとこっち来てくれ。」
私は優の手招きで後を着いて行った。
優に案内されたのは少し離れた所にある工事現場。
本日の作業は終了しているのか辺りに人の気配は無い。
「何、こんな所呼び出して。」
優は黙ったまま私に背を向けている。
私は無視する優に近づき、強く肩を引っ張った。
「ねぇ!何だって言うの!」
しかし、その顔は優の顔では無かった。
それはグロテスクに顔を凸凹にさせながらも変化させていた。
唯一統一していたのは、いやらしい目線だ。
まるで人をそういう目でしか見ていないような、他に例えると近付いてはいけない存在のような。
「…ちょっと、あんた誰よ。」
「…誰って…僕だ…よ…。優だよ。」
先程とは比べ物にならない程の低音声。
この世に存在してはいけない何かと遭遇しているのだと、この時瞬時に確信した。
私は全力で逃げようとするも、【それ】の動きは俊敏ですぐに回り込まれてしまった。
【それ】は私の手足を押さえ、唾液を垂らしながら私を見ていた。
「…ねぇ…美希……食べて良い?」
【それ】は、満面の笑みで私に語りけてきた。
「…いや…やめて。」
すると【それ】はスライムのようになり、私の口の中へと入って来た。
言葉にならない抵抗をするが、私の意識は少しずつ遠のいていった。
この時の記憶はあまりない。しかし、スマホを取り出して美月に電話をしようとした気もする。
どちらにせよ私はこの時、得体の知れない【それ】に遭遇し殺されたのだと思う。
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「…正確には長谷部君に化けた【それ】が原因だと。」
「…そういうこと。多分、美月がやられたのもそいつ。」
しかし、私は美希の言う事に疑問点あった。
「ねぇ、美希。」
七月二日の十九時頃に美希が死んだのであれば、その後私が電話をした相手は【それ】だったのだろうか。
では、自宅に帰って美希のお母さんが生存確認をしたのは?話していたのは本当の美希ではなかったのだろうか。
多くの謎が飛び交う中、私達三人は長い事頭を悩ませた。
【逢沢桃】、【ハルカとカナタ】、【ドッペルゲンガー】、【それ】
これらの共通点は何なのか、この時の私達には到底理解する事の出来ない事象であった。
しかし、未来の私達にはこれらを理解する時が来る。
いや、しなければいけないのだ。
その時の私達は、果たして全員で笑えているのだろうか。
今の私達にはまだ知る由もない。
第十話
ドッペルゲンガー




