第二話 謎多き男
新作【ハルカナ】第二話が完成しました。
所々寝ぼけていたのが分かるかも知れません、なにか見つけてもご了承ください。
〜自宅〜
「でねでね!めっちゃイケメンだったの!」
「そんなイケメンうちの学校にいたっけ?」
時刻は二十二時。
私はベッドでうつ伏せになりながら、美希とビデオ通話中だ。
ピンクの謎のモンスターヘアバンドにピンクと白のゼブラ柄のパジャマで寛いでいる。
何を隠そうこのパジャマ、なんとあの二ケアで買ったお高いパジャマなのだ。
一着なんと一万五千円。
高校三年生の甲斐性なしには買えない額なので、両親におねだりして買って貰った。
冷え性の私には、最高の質感と暖かさなのだ。
「で?そんなイケメンを追い掛けた結果、またふじみんに目を付けられたと。」
「うぅ…それを思い出させないでくれぃ。」
ふじみんとは、今日私を呼び出した先生。
本名 富士見 円先生。四十代後半の独身貴族である。
まあ、四十代で前髪結んでるようじゃね。
パッと見でわかる通り、お洒落には無縁の服装。
先日の服装は中々で、スーパーマニオブラザーズのマニオかと思った。
そういう時限だ。
「でもふじみん、少し前まで彼氏いたらしいよ。」
「嘘!?マジ!?」
「噂では、同棲してた彼氏に他の女連れ込まれて、行為中に遭遇したらしいよ。」
「うわぁ、マジかきっつぅぅぅ。」
このように美希とは、晩に週三~五回程電話をしている。
何故ビデオ通話なのかと聞かれると、正直分からない。
毎回くだらない内容なのだが、雑談やゴシップを夜遅くまで語り合えるのは楽しい。
「それでそれで!!」
「ふじみんは奇声を上げて「今すぐ出てってぇッ!」って包丁向けてキレたって。」
「いや、そりゃあキレるよ誰でも。」
正直、担任教師の恋愛事情には熱が入りがちだが、後半はほぼ飽きているのも事実。
「んで、その彼氏。今、入院中らしい。」
「え?なんで?」
「ジュニア軽傷を負ったなり〜。」
「ぐっはぁ、出るものが違うなりぃ。」
「「ははぁぁぁぁぁ〜〜。」」
二人はビデオ通話の前で土下座体勢でふざけ合った。
徐々に笑いが込み上げ、堪えられなくなってしまう。
そして、それは毎回似たような展開なのである。
コンコンッ
突然ドアのノック音が聴こえた。
「はーい。」
「美月?そろそろ寝なさいよ?それともう少し静かにしてね、お父さん仕事で疲れて寝てるから。」
再度私は同じトーンで返事をする。
基本的に両親は私に対して、厳しい事は何も言わない。
強いて言うなら、『ご飯は必ず家族と一緒に食べよう』と言うこと位だ。
「うわっもう二十三時前じゃん。そろそろ寝ようか。」
「んだね、また明日〜。」
スマホの画面越しに手を振り合った後、私は直ぐに電気を消し布団に入った。
私の部屋の天井は、暗くなると満点の星空のようにキラキラと輝き始める。
私は寝る前には必ず、この自作の星空を眺めながら考え事をするのだ。
草原に寝転んで本当の夜空を眺めているかのように感じられるというのも、これを作った理由だ。
もし本当にこんな星空をあのイケメン君と見られたなら、どんなに幸せなのだろう。
『「星空綺麗だね。」
「美月の方が綺麗だよ…。」
「…イケメン君。」
二人は妄想の中で口付けを交わす。』
一人布団を被りながらニヤけるのは個人の自由だ。
この妄想に浸るのも、私には必要な日課だ。
でも……。
『あなたは本当に何者なの?』
何度思い返しても、あんなイケメン君は校内で見た事が無いのだ。
あれ程のイケメンならば、多少なりと話題になったであろう。
あ、もしかして、転校前とかで下見に来てるのかな。
まあ、いくら考えても分からないのだが、自分なりの答えを見つけないと気が済まないのだ…
と言いつつも結果は大抵寝落ちである。
七月二日 雨のち曇り
今日は朝から昼までは雨の予報。昼から雨は止むらしい。
早めに起床した私は、傘をさして通学路を歩く。
この見慣れた道もあと半年でさよならと思うと少し寂しい気持ちになる。
学校までは凡そ十五分程。
自転車で登校しても良いのだが、坂が多いのが難点。
その分下校時は下り坂の為楽なのだが、それを上回る程に朝から坂道を自転車で漕ぐのが嫌なのだ。
そんな訳で現在まで徒歩を貫き通している。
学校に着くと、体育教師や生徒会が校門の前で挨拶運動をしている。
軽く挨拶を済ませ通り過ぎると、下駄箱で優と遭遇した。
「おは〜」「おつ〜」とほぼ同時に挨拶を交わす。
私と優は似たもの同士で、朝が嫌いだ。
ほぼ無言のまま教室へと向かうのだった。
三年生の教室は三階、そこまでは自力で昇らなければいけない。
上がりきると手前から、三年一組…二組と続いている。
全部で四つのクラスが配置されている。
いつも通り廊下を歩いていると三年二組の教室から、一人の男子生徒が出てくるのが見えた。
その顔をよく見ると、彼は前日のイケメンであった。
突然の再会で全く声が出ず、固まってしまった。
すると、イケメンも私に気が付き、こちらに向かってるでは無いか。
「おはよ。昨日はありがとう。心配させたみたいでごめんね。」
爽やかな笑顔攻撃を喰らい、私は既に失神寸前であった。
「また話せると良いね。」
…死んだっ。
〜保健室〜
気が付くとそこには、見覚えの無い天井があった。
ゆっくり身体を起こすとベッドの軋む音が響く。
「おう、起きたか?」
ベッドの音を聞き付け、カーテンの隙間から話し掛けて来ているのは保健室の先生だった。
「あれ?若林先生?…私。」
若林元久(わかばやし もとひさ)、三十代後半の独身貴族。少し髪が長くて、髭もまだらに生えている。左
耳には青色のピアスも付けており、地味にイケメンである。
なので自ら小汚い見た目を放置しているのは非常に勿体無い。
「お前三年二組の前の廊下で倒れたんだとよ。なんだ?具合悪かったのか?二組の奴がわざわざ運んでくれたんだ、後で礼言っとけよー。」
あのイケメン君、私を運んでくれたんだ。
「体調は大丈夫です。ちょっと…その…貧血気味で。」
私の嘘に対して、若林先生は決して問い詰めたりせず「無理はするなよ」とだけ言い残した。
「ありがとうございます。ちなみに私を運んだのは誰だったんですか?」
「あー、渡辺だ。渡辺美希。お前仲良いだろ?」
私は若林先生にお礼を告げ、保健室を出た。
その後、イケメン君を探した。
しかし、その日は彼を見かける事は無かった。。
ご愛読ありがとうございました!
次回 第三話 さよなら。




