第十八話 まだ見ぬ世界へ
いつも皆さんお疲れ様です!
そしてご愛読ありがとうございます!
籠居編はここで一旦終わります!再び桜井達の視点に戻りますよー!
奇声は外の人間までもが耳を塞ぐほどに響き渡った。
俺はすぐさま少女へ駆け寄った。
「おい!大丈夫か!」
「…はい。すみません、ご心配をおかけして。」
「…いや。無事なら良い…所であの怪物に何を投げたんだ?」
少女は「これですか?」とポケットから同じ物を取り出した。
「…これは、塩か?」
「そうです。奴等の弱点は日光と塩なのです。」
奴等とはあの怪物のことであろうか。
この子達はあの怪物について何か知っているのか。
「おい、お前ら。詳しく説明してくれないか。」
少女や青年は迷っていたが、最終的には了承してくれた。
「刑事さん、僕は天川逢瀬って言います。」
「桜井美月です。」
「俺は籠居 健二。宜しくな。」
俺は二人と握手した後、裏口を案内した。
「…籠居?」
逃げた三人が裏口へ逃げるのを見ていたのは風見であった。
大通り公園、駐車場。
俺は二人からあの怪物についての詳細を聞いた。
二人が体験してきた話も聞いたが、正直未だに信じられない。
あの怪物は自身の影から生まれた邪念のようなもの、そう言われて誰が信じるのだろうか。
それを阻止する為に何度も命を絶ってやり直していたなんて、そんなのアニメの世界だけだろ普通。
しかし、信じざるを得ないものを見たのもまた現実だ。
その影は日本に何体いるのかも分からないらしい。
「…信じられないですよね。」
しまった、顔に出てしまっていたか。
「大丈夫だ、非現実的過ぎて困惑していただけだ。あんな怪物を見たんだ、信じるしかないだろ。」
後部座席の二人は俺の言葉に安心した様子でいた。
しかし、鷹見真太郎こと阿久津孝介があの怪物に食われてしまった。
なんの話も聞けず終いだ。
それにしても妙にこの子達は落ち着いているな。これまでの経験でも怖い思いをしてきたのはわかる。だとしても、目の前で人が死ぬ所を見たら多少不安定になってしまうのが人間だ。
「籠居さん、あの鷹見…いや、阿久津さんの事なんですけど。」
何やら少女が言いにくそうにしていた。
「多分、私のクラスメイトのお兄さんっぽいなぁと。」
「阿久津竜生か?」
少女は頷きで答えた。
俺は多少の資料には目を通していた為、阿久津の家族構成も頭には入っていた。
「あの影、竜生に似てるなと思って。もしかしたら、忘れようとしていたお兄さんの話をした事で竜生の影が生まれてしまったのかもしれません。」
「…では、兄を食べたのは弟の影の可能性があると。」
「はい、影を倒すことも大事なんですが…。」
ここで青年が話に割って入って来た。
「影の正体は人の嫉妬等の邪念が生み出したものです。その影が生まれてしまっている原因があるんです。」
俺は頭を抱えた状態で、話を続けるよう手振りした。
「ハルカナ伝説、ご存知ですよね。」
ハルカナ伝説、忘れるはずがない。あの双子の交通事故の事だ。
直接あの事件に関わった訳では無いが、この辺じゃ知らない人の方が少ないだろう。
「被害者のハルカとカナタが成仏出来ずに、恨みの心を持ったままでいる事が問題なんです。」
「それは…霊的な話なのか?不幸で亡くなった人の怨念が彷徨うとか何とかの。」
「似たようなものと思って頂いて構いません。その二人の念は、多くの人間を巻き込み。感情を利用して影を生み出してしまっている可能性が高いです。」
あぁ、頭が…ついていけない。
「…つ、つまり、成仏させないと影は生まれ続けるって事です。」
しまった、また顔に出ていたか。
青年は察しが良いようだ。
「…なるほど。一先ず理解した…という事にしておこう。」
二人は愛想笑いでこの空気を誤魔化していた。
「その為に阿久津孝介の話が聴きたかったんですが…。」
この二人は個人的に阿久津孝介を追っていた訳か。そこで偶然被害者が出てしまった。その被害者が芹沢亜由美、ハルカナ伝説の当事者であり、これまたクラスメイトの親戚ときた。偶然に偶然が重なる事は良くあるが…。
「…厄介事に首を突っ込んだ気がする。」
「刑事さんがそれを言っちゃいけませんよ。」
しまった、思わず口にしてしまった。
またこの青年に気を使わせてしまった。いや、もはや少女と青年と言うのはやめよう。
「天川、桜井。おじさんは話について行くのがやっとだが、できる限りの協力はさせてもらう。近いうち、関係者を集って今後の話し合いでもしよう。」
俺は二人と再び握手を交わした。今度は戦友として。
「何かあったらここに掛けてくれ。俺は俺で色々調べておく。」
「わかりました。」
「ありがとうございました。」
俺は二人と別れ、車で北海道警察署まで戻った。
北海道警察署 駐車場
俺は車から降りると、警察署内は大騒ぎであった。
「…籠居。どこに行っていた。」
入口に立っていた風見に呼び止められる。
「…子供達を安全な所へ避難させていたが?」
風見は無表情のまま俺の胸ぐらを掴んできた。
「また独断か。良いご身分だな。」
俺と風見は睨み合いを続けた。
俺達のただならぬ雰囲気に気が付いたのか、澤谷と遠藤が駆け足で止めに入った。
「先輩方、こんな時に喧嘩はやめましょう。」
「そうですよ。まずは助け合わないと。」
俺は後輩二人の言葉で正気に戻り謝罪をした。
風見は無言のままその場を立ち去った。
「…先輩。何か知ってますよね?」
澤谷は顔も見ずに俺を問い詰めてきた。
「…なんの事だ。」
「とぼけないでくださいッ!」
俺の返答に苛立った澤谷は、大声で怒鳴る。
「…澤谷先輩、落ち着いてください。籠居先輩…私達はあなたのなんですか?部下なんです。私達にも少しで良いから頼ってほしいんです。」
遠藤は涙目になりながら思いを語った。
二人の気持ちを無碍には出来ない。
「…わかった。全てを信じて、俺に着いてきてくれるか?」
「「 はいッ!! 」」
頼もしい後輩をもてた事を俺は嬉しく思う。
成長した姿に心が歓喜した瞬間だった。
俺達は必要な荷物を全て揃えて、警察署を出て行ったのだった。
次回
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