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ハルカナ  作者: ゆる


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第十六話 詐欺師

第十六話 投稿させて頂きました!

いつもご愛読ありがとうございます!


【詐欺師】

人をだまして財物を奪う人。詐欺を常習とする者。


鷹見真太郎 年齢四十四歳。正直名前も年齢も何処まで正確な情報かは分からない。

ただし、恋愛詐欺師という事は間違いない。複数の女性が鷹見真太郎の名をあげ、警察に捜索願を出すも見つかることはなかった。

そもそも、鷹見真太郎という人物が存在していない事になっている。


「とまあ、鷹見真太郎に関しての情報はこれくらいかな。既に病院にもいなかったし、これはお手上げだね。」

亜由美さんは苦笑を浮かべていた。


しかし、宛が無ければ探すのに時間が掛かってしまう。それだけは避けたい。これまでの事を考えると、ハルカナ伝説に関わった私達は、恐らく七月七日を超える前に死んでしまうからだ。

今回、鷹見真太郎の詐欺に関しては目を瞑る事にする。

私達の目的はあくまで全ての影を見つけて、ハルカナ伝説に終止符を打つこと。

鷹見真太郎は通過点でしかないのだ。


「亜由美さんありがとう。ここまで調べてくれただけで充分ですよ。」

「気にしなくていいよ。と言っても、結局見つけられて無いんだけどね。遥と彼方が成仏出来るなら、何でもするさ。」

亜由美さんの表情は優しく、遥と彼方が言っていたという印象とは全くの真逆だ。

でも、なんでそんな前から影という存在がいるのだろうか。

もしかすると、知らなかっただけで無数にも影は存在しているのだろうか。

普段話してる人達も影なのだろうか。

…やめよう。悪い事を想像すると現実になってしまう気がする。


「必ず終わらせますから。」

私は亜由美さんと別れ、天川君へ電話を掛けた。

「…あ、天川君?」

『あ、桜井さん?見つけたかも知らない。』


私は天川君と合流する事とした。


「お待たせ!鷹見は?」

天川君はビルの影に隠れながら、向かいの建物に指を指す。

「あそこ。」

窓の近くに立っ、スーツを着た男性。確かに中年くらいに見える。しかし、あの見た目でモテるのか…私にはよく分からない。まあそれは良しとして…

「あれ、何やってるの?」

「口座開設セミナーですって。恋愛詐欺が上手くいかなくなってきて方向転換でもしたんでしょうか。」

「有り得る、だってあの見た目じゃあねぇ。」

「まあ、好みは人それぞれですしね。」

私は天川君の横顔を近くで見て頬を赤く染めた。


「あ、天川君は…えっと。好みの女性とかっているの?」

「え?」

お互い顔を赤く染めて頬をポリポリと掻く。

何これ、超甘酸っぱい!

渾身の照れ隠しである、やりすぎると血が出てしまう。

一時間程見張りをしていると、鷹見真太郎が階段から下りて来た。

鷹見真太郎の周囲に大勢の人集りが出来る。

『先生!ありがとうございました!』

『先生のお陰で騙されなくて済みました!』

『先生、振込は明日で良いですか?』


「いえいえ、私にとっては皆さんの笑顔が何よりの宝です。振込は明日まででお願いします。」

鷹見真太郎はそう告げると路上駐車してある車に乗った。

「まずいよ天川君!逃げちゃうよ!」

「大丈夫。こんなこともあろうかと発信機と盗聴器を付けておきました!」

「や、やるぅ。」


鷹見真太郎は何処かへ去ってしまった。

天川君はスマホでアプリを開くと、マップが表示され赤いマークが動いているのが分かった。

「あ、これが鷹見?」

「その通り。そして、ここをタッチすると。」

すると、スマホからノイズ混じりの音声が聴こえてきた。

『…んな……ござい…ん。私達…みなさ……です。』

天川君がラジオのように調整していると徐々に音はクリアになっていった。

『…ハハッ。あんなセミナーでこれだけ儲かるんだ。恋愛なんかより何倍も全然稼げる。…まあ性欲は溜まるばかりだが、気が向いたら誰か呼び出せば良いか。その方が俺も楽だし。』

「最ッ低!!!」

「よくもまあ盗聴されてるとも知らずにこんなにペラペラと。呆れて何も言えないよ。」

十分程すると車はとある場所に止まった。

『あれ?亜由美じゃないか!』

「…亜由美ってまさか!?」

私と天川君はマップの位置まで全速力で走った。


『いやぁ、しっかし変わらないなぁ。それなりの歳だろ?なのにこんなぷるぷるして。』

『…ちょっと、やめて。』

間違いない亜由美さんだ。

でも、なんで亜由美さん車に乗ったの。いや、もしかして影が乗った?

『…私あなたの事なんか知りません!誰なんですか!』

『なぁに言ってんだよ!俺を誘惑して股を開いたのはお前だろ!』

違う、影なんかじゃない。本物の亜由美さんだ。


パチンッ!!!


『触らないでッ!』

スマホ越しから頬を叩いたような音と大声が響いた。

『…あまり調子に乗るなよ。このクソアマ。』

マップの赤いマークは凄い早さで動いていた。

そして、距離間の影響か会話も徐々に途切れ始めていた。


一時間後、私と天川君は赤いマークが長時間止まっていた所へ向かった。

そこは廃工場で中に入ると、芹沢亜由美が全裸状態で木材や布切れなどのごみ溜めに投げ込まれていた。

「亜由美さんッ!!!!!」

亜由美さんの腹部や太ももの内側には白い液体が大量に付着していた。

動揺した私は身体が硬直してしまっていた。

その間に天川君が警察へ通報してくれていた。

数分後、警察署が近かった為すぐに警官が駆け付けた。

その七分後には救急車が到着し、亜由美さんは病院へ搬送された。

私と天川君は事情聴取の為、警察署まで連行された。


北海道警察署 取調室

「あっお疲れ様です。」

「あぁ、本当にお疲れだよ。誰取調してんの?」

「荒井さんです。それより籠居さん何処に居たんですか?もしかして、競馬ですか?」

「馬鹿野郎、調査だよ調査。」

俺は後輩刑事の澤谷(さわや) 海斗(かいと)の肩を揉みながら答えた。

ったく、こいつは真面目すぎてうるさいんだよ。

今どき髪の毛まで真面目に短くしている奴がどれだけいるんだ。

「馬の何を調べるんですか。チン長ですか。うわ、交尾観察引くわぁ。」

「お前は本当に何を言ってるんだ。」

俺は一方向鏡(ワンウェイミラー)にもたれ掛かりながら取り調べ内容の書類に目を通す。

「…なんだよこれ。」

「一応取り調べ内容ですよ。まだ高校生なのにあんな姿見たら取り乱しもしますよ。」

「そうじゃねぇ。鷹見真太郎って何年か前に大量の捜索願が出た恋愛詐欺師じゃねぇのか?」

澤谷は小さく溜息を吐いて身体を拗らせた。

「…過去関わった女性に接触したようですね。ご丁寧に体液まで残していきましたよ。これで身元は特定出来るでしょうけど、日本には居ないかもしれませんね。」

「…何を呑気な事言ってんだ馬鹿たれ。」

俺は後輩の頭を叩き、取り調べ室内へと向かった。

「ちょ、先輩!」

取り調べ室へ勢いよく入ると、担当の荒井はこちらを振り返って見た。

「またお前かよ。何度邪魔すれば気が済むんだ。」

「まあそう言うな。」

俺は、荒井の肩に手を乗せながら、取り調べ中の青年へ目を向けた。

「初めまして。早速聞きたいんだけど、君が使っていた発信機と盗聴器借りても良いかい?」

「お前ッ!単独行動も大概にしろよ!」

「犯人に逃げられるよりマシでしょ。スマホ、貸してくれる?」

荒井は青年から預かっていたスマホを力強く俺に渡した。

「…今回は庇ったり出来ねえからな。」

「分かってますよ、先輩。」


俺は青年のスマホのアプリを開き、車の位置を確認した。

事件発覚から約一時間半以上は経過したか、どうやら札幌市からはとっくに出たようだな。

この位置は…小樽(おたる)か?

俺は自身のスマホで住所を調べるとそこはオルゴールの館であった。

「…呑気なもんだな。特定されているとも知らずに。」

俺は警察署を出ようとすると、受付の女性警察官に呼び止められた。

「あ〜籠居先輩がまた単独行動しようとしてるぅ。」

「…今度は女のハエかよ。」

「ちょっと!ハエは無いでしょ!」

多少の距離感があったが、こいつの大声はかなり鼓膜に悪い。

「はいはい、ハエは無いなハエは。成績優秀、将来有望の遠藤(えんどう) 花江(はなえ)さん。」

「…嫌味ったらしいわね。籠居先輩こそ、そろそろ単独行動やめた方が良いんじゃないですか?減給食らいますよ。」

基本この北海道警室署の警察官は単独行動を取らない。まあどこもそうだろうが、ペアを組むか応援を呼ぶなどしなければいけない。それだけ身の危険があるという事なのだが、俺は集団行動が苦手だ。形上の相方はいるのだが、これがまた相性が悪いのだ。

「…減給は嫌だけど、あいつとは馬が合わなくてね。」

「風見先輩の事ですか?」

風見(かざみ) 明義(あきよし)三十二歳。俺と同期の刑事だ。警察学校時代からまともに話した事も無ければ、行動を共にしたこともない。

俺も大概だが、風見も単独行動タイプ。今頃何処で何しているのやら。

「…花江。風見が来たら伝えておいてくれ。ちょっと出てくるって。」

「…はいはい。」

後輩に呆れられるのにはもう慣れた。

むしろ、まだこんな俺に構ってくれる後輩もいるのだと日々安心させられる。



北海道警察病院


「…ええ。身体的外傷は軽かったです。恐らく、諦めて抵抗しなかったのでしょう。こちら被害者に付着したいた体液ね、採取しておいたので持ち帰ってください。命に別状こそ無いですが、心の問題がかなり大きくてね…。」

「そうですか。ありがとうございました。」

無愛想な長髪の男はその場を去った。

病院を出ると目の前に見覚えのある男が立っていた。

目を合わせるがお互い口も聞かずに通り過ぎる。

籠居(かごい) 健二(けんじ)、お前は一体何を考えている。


俺は被害者の状態を聞いた。風見にも同じ話をしたらしい。

「お節介かもしれんが、君ら二人が協力すれば最強のペアになると思うがね。」

「…ハハッ。考えておきますよ。じゃ。」

俺は愛想笑いをしながらその場を去った。


「さてと、小樽に向かいますか。」


次回

第十七話 最強の二人

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