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ざまぁ系

神に愛されるということ

突如浮かんで書いたものです。

すごく短いのでさらっと楽しんでいただけると嬉しいです。

もしかしたら、あっさりしすぎて物足りないような気もするので、後日追加するかもしれません。

その時はすみません。

 アルムセン国の第1王子、ロキア王子が10歳の頃、西側の3つ国を挟んだ隣、小国セインレス国の次女、レッテンセ姫が8歳の時に婚約が結ばれた。

 神に愛されし豊穣の国とも言われているセインレス国の豊富な食料の交易が目的だった。

 有り余る収穫量でありながら小さな国である。

 普通なら他国からの脅威にさらされてもおかしくないものだが、周辺国からは絶対に手を出してはいけない禁忌国とも呼ばれていた。


 セインレス国の国王はロキア王子とレッテンセ姫を婚約させる時、セインレス国の王族は神に愛されている一族なのでけして蔑ろにしてはならない。

 など、いくつかの条件を提示した上でロキア王子と婚約が結ばれた。


 レッテンセ姫が12歳になると、嫁入りする国の事を早くから学ぶため、アルムセン国にやって来た。姫は茶色の髪に若草色の瞳で大人しそうな少女だった。

 仕草一つを見ても王族であることを納得させるような上品さがあり、物静かで真面目、精一杯アルムセン国のことを真摯に学ぶ姿はとても好ましいものだった。

 最初は周囲に大事にされていたのだが、大人しくおっとりとした性格と地味な見た目のせいか、1年も経つと少し侮る者が出てくるようになったのだ。

 そしてそれはロキア王子が15歳になって学園に入ってから急激に変化していった。


 同じ年齢で、学園に留学してきた東側の大国、ブレッグリア国の三女、メルティリア姫がロキア王子と関わるようになったからだ。

 輝くような金の髪にルビーのような大きな瞳、15歳とは思えないほどグラマラスな体形で明るく親しみやすい性格は、学園の生徒のほとんどから好意を向けられていた。

 当然、大国の貴族で留学生なのであれば丁重な対応が求められるが、ロキア王子は美しく輝くメルティリア姫に心を奪われるようになり、2人の仲は急速に深まりだしたのだ。


 それに比例してロキア王子はレッテンセ姫に対し御座なりな態度をとるようになり、王子の側近たちも王子とルティリア姫の仲を後押しするようになっただけではなく、レッテンセ姫に対し不敬な態度をとるようになっていった。

 そのことをアルムセン国王に訴えても国王はなあなあにレッテンセ姫をなだめるだけでロキア王子達をいさめることすらしない。

 レッテンセ姫が自分が神に愛されている存在なのだと訴えても国王は笑って取り合ってもくれなかった。

 軍事力が強い大国の姫と食料が豊富なだけの小国の姫。

 アルムセン国もブレッグリア国も、そしてセインレス国も海側にある。

 船を使って攻め込むには都合のいい場所にあった。

 アルムセン国の思惑はブレッグリア国のメルティリア姫を娶り、その軍事力をもってセインレス国を支配すればいいと思うようになっていく流れは止まらなくなっていった。

 そしてとうとうメルティリア姫を王宮に住まわせ、レッテンセ姫を離宮に追いやったのだ。


 それから三か月後、離宮にいたレッテンセ姫が突然王宮に表れた。

 警護と言う名前の監禁をしていた騎士達の姿は見えない。

 謁見の間には国王とロキア王子、そしてその横で王子にエスコートされているメルティリア姫や宰相、側近達が揃っていた。


「……レッテンセ姫?」


 姫の存在に気づいた宰相が驚いた表情で姫を見る。


「私との婚約も解消していないのに、もうメルティリア姫を婚約者扱いですか? 少し気が早いのでは?」

「姫……」

「それとも婚約を解消しなければ条件を違えたことにならないと思われましたか? ……愚かな」


 おっとりとして大人しいと思っていたレッテンセ姫の凛とした気迫に誰もが驚いていた。


「王よ。大国ブレッグリア国との繋がりが欲しいのでしょうけど、それなら先に婚約解消して私を国に帰してからにするべきでは? 私を監禁してメルティリア姫を婚約者のように扱うなど正気ですか? それが一国の王がなさる振る舞いなのですか……ああ、私をこの国にとどめているうちはセインレス国からの援助が届きますものね。それ目当てでしたか」

「なっ!」

「私との婚約を交わす際、私をけして侮らず、虐げないようにと約束したのをお忘れか? 契約を甘く見過ぎです。神に愛されているということがどういったことなのかわからないのでしょうけど私を虐げれば神からの怒りが降り注ぐという言葉は比喩ではないのですよ?」


 毅然と立ち、王に向かって話すレッテンセ姫が淡く光る。


「いい加減にしろ、レッテンセ! 小国より大国の方が優先されるのは当たり前だ。そんなに言うなら今すぐ婚約破棄してやろうか?」


 横から口出ししてきた王子に、レッテンセ姫の視線が向けられる。


「……もう体の関係を結んで陥落されたのですね」

「なっ! 失礼なことを言うな! そなたの嫉妬は醜いぞ!」

「嫉妬? 何の感情も持てない不誠実な相手に嫉妬するはずがないでしょう? 貴方はただの政略結婚相手なのですよ? しかも婚約しているのに他の女性と肉体関係を持つだなんて汚らわしいっ」

「汚らわしいだと? メルティリア姫とは……」

「そこの貴方の側近がわざわざ離宮まで来て嬉しそうに教えてくれましたよ」


 王子の言いかけにかぶせていった言葉で、王子はすぐ斜め後ろに控えていた側近の一人を振り返る。

 

「話したのか? わざわざ離宮まで行って?」

「も、申し訳ございません。あまりにも王子に対し不敬だったので……」

「不敬? 婚約者意外と肉体関係を結ぶようなことの方が不敬ではないのですか? 私も王族なのですよ?」

「ふん! 王族は王族でも小国程度ではないか」

「……そうですね。でも豊富な資源を持っているその小国がどうしてどの国からも侵略されないかなぜ疑問に思わないのです?」

「それが神に愛されし一族だというのだろう?」

「そうです。王族が愛されているから侵略出来ないのです。過去、侵略して来た者は一人としてセインレス国の地を踏まず雷に打たれて全員死にました。3代前の王女が隣国に嫁ぎそこで軽んじられ虐げられました。その加害者全員体中に膿が出来て起き上がれなくなり亡くなりました。5代前の王女が他国に嫁ぎ、側室候補に毒を飲まされた時は、その側室候補は体が溶け出し、1か月後に亡くなりました。これが神に愛されし者を虐げると者への報復です。だから隣国はどんなにセインレス国が欲しくても手を出さないのです」

「……」


 レッテンセ姫の話の壮絶さに全員口を閉ざす。

 もし、それが本当ならレッテンセ姫を虐げたこの国の者はどうなるのだろうか?

 そう考えたが、神に愛されてそのようなことが起きたなどという話はどの国からも聞いたことがない。

 やはり小国を守るための作り話なのだろうと判断した時だった。


「かゆい……」


 急に離宮に行った側近が腕を掻きだした。


「かゆい……かゆい、かゆい、かゆい!」


 がりがりと腕を掻きだし、それはみみず腫れから出血に、それでもかゆいと言いながら掻くのを止めない。


「……お前、大丈夫か? あっ! かゆい!!」


 別の側近が心配し腕を掻く側近に向かって一歩踏み出した時だった。

 その側近も腕がかゆいと言って掻きだしたのだ。


「あら、私の場合は痒みなのね」


 血が出るほど搔き毟る2人の側近を見てレッテンセ姫がつぶやく。


「これからどんどん痒みを訴える人が増えていくでしょう。たぶん痒みは私への態度によって変わるはず、罪の重さがこれでわかるわね」


 冷たい一言に、誰もが顔を青くする。

 そしてとうとう……。


「顔がかゆいわ……」

「メルティリア!?」

「かゆい! かゆいのよ!」


 爪を立てないように指の腹で顔を掻きだすが、それでは物足りなさを感じるのか掻く速度が上がるメルティリア姫はロキア王子に顔を掻きながらも抱き着く。


「嘘……嫌っ、私どうなっちゃうの? かゆくてたまらないわ!」


 泣きながら顔を掻きだすメルティリア姫を何の感情も浮かべずにレッテンセ姫は見つめる。


「レ、レッテンセ姫を捕まえろ!」


 王がそう怒鳴り、近くにいた騎士がレッテンセ姫を捕まえようとするが、何かに阻まれているのか近寄ることも出来ずに弾き飛ばされていく。


「無理よ。私は神に愛されし一族だって言ったでしょ? 私に害する意思を持って触れることは出来ないわ」

「なっ……」


 レッテンセ姫はくすっと笑うと王に背を向けて謁見の間を出ていく。

 そして離宮に戻った。


 数日後、泣き叫びながら許しを請う声がドアの向こうからしたが、その扉は閉ざされたままだった。

 鍵がとかではない、見えない不思議な力で扉は守られ破壊することも不可能だった。

 痒みに呻きながら扉を爪で掻く王と王子の姿がそこにあったが、レッテンセ姫は静かになり第2王子が扉を開け、レッテンセ姫の足元にひざまずき許しを請うまで部屋から出ることはなかった。


 第2王子から国王とロキア王子とメルティリア姫が亡くなっただけでなく、ブレッグリア国王も体を搔き毟り出血多量で亡くなったのだとか。

 多分、ブレッグリア国王の命を受けてメルティリア姫がロキア王子を陥落し、アルムセン国と協力してセインレス国を手に入れようと画策したせいで命を落としたのだろう。

 宰相や側近、王子達に協力したものは今でも痒みに苦しんでいるのだとか。

 許しを請う第2王子にレッテンセ姫は神に供物を捧げ三日三晩許しを願って祈りを捧げれば、心のそこから詫びていれば神より許され痒みは消えると告げた。


「私は国に帰ります。ですが、この国には呪いが残るでしょう。今後他国からの者を虐げた場合、また痒みに襲われるはずです。以後このような不誠実なことをなさらないことをお勧めします」


 そう言い残してレッテンセ姫はセインレス国に帰っていった。


 今まで感じることのなかった神の存在。

 そしてその神に愛されし一族。


 以後、アルムセン国はセインレス国を聖国と呼び、神を崇める宗教色の強い国となった。




 神はすべてを見通すのだ。

 自分の為に……。






                                   終

最後の一文がわかっていただけると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
神は信仰を失うと力どころか存在そのものすら危うくなる…と別の作品で見たことがあります。そして、神は当然ながら人間界の皆の前に姿を現す事は出来ません。 だから愛する愛し子達を作り、守る為に力を使って奇…
最初の王子と姫の婚約の背景を語る場面ですが、少々分かりにくいと思います。 例えば 「~ロキア王子が10歳の時、近隣の小国、セインレス国の第2王女で8歳のレッテンセ姫との間に婚約が結ばれた」 ぐらいに情…
面白かったです。 神としては小国の姫が侮られ、神罰を落とすまでがセットなのですかね。 その方が恐怖と信仰を得られるでしょうし。
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