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人災

作者: 清水進ノ介

人災


 とある冒険家が、ジャングルを彷徨い歩いていた。冒険家はこの密林の奥深くに、太古の遺跡があるという情報を手に入れ、それを発見するためにここまでやってきた。その遺跡には『人災』と呼ばれた怪物が封印されているらしい。人の世に災いを振りまく怪物。故に人災と呼ばれた。かつてこの地には、地球上で最も栄えた文明があったらしいが、人災によって、滅ぼされてしまったのだという。


 もちろん冒険家は、そんな話は信じていない。未知のロマンを追い求めているだけだ。冒険家は数日間キャンプをしながら、ジャングルを進み続け、目的の遺跡を発見した。長年の雨風によって、遺跡の大半は崩れていたが、神殿らしき建造物は、その姿を維持している。冒険家は慎重に足を進め、神殿の最奥にたどり着く。そこには棺が置かれており、冒険家は中身を確かめるために、その蓋を開けた。


 すると棺の中から、眩い光が発生し、冒険家は反射的に顔を伏せた。そして冒険家が顔を上げたとき、目の前に裸の男が立っていた。小太りで冴えない顔をした、どこにでもいるような、中年男性なのだが、それがかえって不気味な印象を冒険家に与えた。男はにやりと笑みを浮かべると、こう言った。


「お前が封印を解いたようだな。私は『人災』だ」

 冒険家が驚きのあまり固まっていると、人災は大声で笑いながら、まくし立てた。

「これから私が、人の世にどんな災いを起こすか、教えてやろう!」

「人間の心を歪め、自分の利益の為なら、平気で人を苦しめる悪人に変えてやる!」

「そいつらは好きなだけ人の悪口を言うし、自分勝手に誹謗中傷を繰り返すぞ!」

「さらに報酬を与える気もないのに、毎日何時間も労働者に残業をさせるぞ!」

「しかも人間同士で傷つけ合う為の兵器を造り、戦争を起こすのだ!」

「競争の終わらない世の中をつくって人間を疲弊させ、若者の死因の第一位を自殺にしてやるのさ!」


 冒険家はそれを聞くと、真顔でこう言った。

「なにも変わらないな」


おわり

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