最初に滅亡したのは某国です。(後編)
中国の国家主席が宇宙人の謝罪を受け入れたにもかかわらず、異議を唱えた者がいた。
オブザーバーとして出席している何でもかんでも自分が1番にならないと気がすまず、1番になる為に他国の歴史をパクるはスポーツのルールは守らないは不正はするはで、世界の鼻摘まみ者である某国の大使が異を唱えたのである。
オブザーバーとして出席していた他の国々の大使たちが「口出しするな」と注意するが、某国の大使は聞く耳を持たない。
宇宙人が問う。
「何が不満なのですか?」
「中国はそれで良いのかも知れないが、我が国も被害を被っているのだからそれ相応の賠償を頂きたい」
「被害? 物理的に被害を出したのは此方の国だけの筈ですが?」
「我が国は物理的な被害は無かったが風評被害を受けているのだ、だからそれに対する損害賠償を請求する」
「風評被害?」
「そうだ、あのモンスターは我が国の某メーカーの商品である○ラーメンカップにそっくりだった。
その所為で売上が落ちる可能性がある、だから損害を賠償しろ」
「可能性という事はまだ損害は出ていないのですね?
分かりました、ではこうしましょう」
宇宙人はそう言いながら手元の装置を弄った。
途端に空から数百の隕石のような物が某国に降り注ぐ。
隕石のような物は全てモンスターだった。
某国に落ちた○ラーメンカップにそっくりなモンスターの群れは、某国の地上に降り立つと某国人を次々と捕らえ食べ始める。
某国人だけで無く、牧場で飼育されていた食用犬たちもまたモンスターの餌食になった。
某国大使が叫ぶ。
「止めろー! モンスターを止めてくれー!」
「お断りします。
貴方が望んだ事なのですから」
宇宙人はそう某国大使に言い、続いて黄海の遥か彼方に見える某国を蹂躙しているモンスターの群れを見て、あたふたと慌てふためいている他のオブザーバーの国々の大使たちや中国の国家主席に語りかける。
「あのモンスターの群れはあの国に住む者たちを食い尽くしたら卵を産み死にます。
産まれた卵は貴方がたでお分けください。
あのモンスターは卵を産むと精根尽き果て死にますから心配する事はありません。
また遺骸の外皮は脆くなり崩れますので、内臓は動物にでも食べさせるなり肥料として畑に撒くなりしてください」
宇宙人はそう言った後、国家主席や大使たちが宇宙船まで乗って来た軍艦の方に手を向け退船するよう促した。
眼下に見えるモンスターにより滅亡しつつある国を眺めながら、宇宙船の乗組員の1人がキャラバン隊の隊長に話し掛けた。
「良いんですか?」
「ん? 何が?」
「あの星の奴等に言って無いでしょう、卵の上部の膜を剥がしたら直ぐに沸騰した湯を注ぎ入れなければ孵化すると」
「あぁ、確かに言って無いな、でもそれは態とだ」
「何故ですか?」
「あの星の奴等はちょっと肌の色が違うとか信じる宗教が違うとかという理由で敵対しあってる。
だからあの星の奴等は敵対する国に勝つために、所有する兵器では歯が立たなかったモンスターの外皮の代わりに、卵の外皮でそれを解明しようとするだろう。
それが破滅を齎すとも知らずにな」
「奴等を滅亡させるのですか?」
「あぁ、その通り。
あの星を見ろ、我らの砕け散った母なる星ほどでは無いが青く美しい星だ。
奴等を滅亡させた後、我らの第2の故郷として活用しよう。
奴等の通常兵器はあの食用生物に通用しないし核兵器を使用したとしても、食用生物の生まれ故郷は太陽のように燃え盛る惑星だから直撃しない限り耐えられる。
で、我々は、放射能で汚れた惑星を綺麗にするだけの技術を持っているから第2の故郷として移住できるのさ」
「成る程そう言う事でしたか。
此れは滅亡するのが楽しみですね」
「まぁ滅亡するまで数年から十数年掛かるだろうが、故郷の星が砕け散ってから数千年宇宙を放浪しているキャラバン隊の面々も、それくらいなら待てるだろうさ」