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第5話 ローエングリン侯爵

 ――翌日の朝。


 早速、ローエングリン侯爵が開設した元帥府に連絡をしてみた。

 ウルフ先輩から話は通っていて、短時間ではあるが今日の午後面会予約がとれた。


 俺は帝国軍の制服に入念にアイロンをかけ、ブーツに磨きをかける。

 俺は辺境星域の男爵家令息だからな。

 使用人を雇う予算の余裕はない。


 俺は帝国士官学校を卒業した貴族なので、階級は少佐だが帝国軍の部隊に所属していない。

 あくまでジャガー男爵領の貴族領地軍の所属だ。

 だから従卒もつかない。


 全て自分でやる。


 シャワーを浴び、昨晩の酒を抜いたら、ローエングリン侯爵の元帥府へ出発だ。


 ローエングリン侯爵の元帥府は、宇宙艦隊基地のすぐそばに建つシンプルなビルだった。

 新築であること以外は、これといった特徴はなく、貴族的な装飾もない実務的な雰囲気だ。


 面会の順番を待つ間、受付にいる少尉に話を聞いてみた。


「ローエングリン侯爵閣下の元帥府としては、いささかシンプルに過ぎる気がするのですが?」


「閣下は機能性を重視されたと聞いております。それから『貴族趣味の華美な建物に予算をかけるくらいなら、巡航艦を一隻買った方が良い』とおっしゃったそうです」


「ほう! それは、なかなか!」


 名より実を取る姿勢は好感が持てる。

 俺も貴族だが、辺境星域の男爵家だ。

 余計なところに金をかける余裕はない。


 すぐに順番が来て、ローエングリン侯爵の部屋に通された。


 ローエングリン侯爵の部屋も、シンプルだった。

 広い部屋に、大きな執務机と応接ソファーとテーブルがあるだけ。


 そして、部屋の主――ローエングリン侯爵がいた。

 俺は慌てて敬礼をする。


 豪奢な金髪!

 整った美しい顔!


 ローエングリン侯爵は、元帥に許されるマントをひるがえし、流麗な敬礼を行う。

 帝国軍の制服が、こんな華麗に感じられる日が来るとは思わなかった。

 映画のワンシーンのようで、思わず見とれてしまう。


 しかし、ローエングリン侯爵の両目は鋭い視線を放っている。

 この人は軍人なのだと、嫌でも感じさせられる。


 すぐにソファーに案内され、商談が始まった。


「ウルフ准将から話は聞いている。大量の食料を売ってくれるそうだな?」


「はい。冷凍コンテナ処理をしたジャガイモを領地から運んで参りました。大型輸送船五隻分ございます」


「うむ。食料はありがたい。ウルフ准将の紹介だ。色をつけて全て買おう」


「ありがとうございます!」


 ローエングリン侯爵は機嫌良くジャガイモを買い取ってくれた。

 ジャガイモとバカにすることもなく、『食料はありがたい』とおっしゃったのが、俺はとても嬉しかった。


 ローエングリン侯爵は、本当にお忙しいのだろう。

 商談が始まって五分と経たずに、秘書が入室してきて、次の面会予約の時間だと告げた。


 俺は慌てて立ち上がり、ローエングリン侯爵に敬礼をしながら礼を述べる。


「閣下! ありがとうございました!」


「いや、こちらこそ感謝している。本当に食料はありがたいのだ。詳細はダルメシアン大佐と話してくれ」


 面会は終った。

 俺はそのまま元帥府のダルメシアン大佐という人物に会うことになった。

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