バレンタイン商戦
世の中はバレンタインである。
もう終わろうとしている。
関係ないけど。
年増、もとい、なんといいますか……オトナ女子にとってこれは、恋心を伝えるというより、いつもよりちょっといいチョコを、自分へのご褒美に、あるいは職場のみなさまへの賄賂に買っていって楽しむ日と化している。
少なくともトーキョーの、自分のまわりはみんなそうだ。
なので今日はデパートとか、ちょっといいところに様子を見に行って、バレンタインのコーナーをぶらぶらしてみた。
見るだけ、見るだけ。
「〇〇の限定、アールグレイチョコでーす!」
何かしてるみたい。なんだろうか。
「ただいまお配りしているのは、バレンタイン限定の、白桃のアールグレイチョコでーす!」
へー。白桃、どんなのかな?
試食できるのか。ふーん。
近寄ってみた。
試食だけ、試食だけ。だって、どんな味なのか、気になるじゃないですか。
うーろうーろ
ここにいますよ。
うーろうーろ
ここに、います。
うーろうーろ
うろうろ
二巡くらいしてみたけれど、悲しいかな、なかなかもらえなかったので、痺れを切らしてなんとなくまん前まで行ってみた。だって、だって。
やっと一欠片もらえて、わーい!とパクついてみた。
おいしい。香り高い。そして、滑らかな口溶け。
でも高いからな。うーん?
「限定の〇〇、残り8個でーす!」
そうなのー?と思って、手の届く距離まで行ってみる。見るだけ。でもどうするかな?
迷って、何気なく箱を手に取ってみて、迷いに迷ってやっぱりやめとこうと思ったタイミングで。こんな天の声が聞こえてきました。
「あっ!ただいまおひとつ、買われるお客さまがいらっしゃいました!ありがとうございます!残り7個になりました!」
えっ、お客さまって、え。えー。
……まあ、それならしかたないか。
そうして、買ってしまったのでした。
おいしいです。
作った方…工場さん?ありがとうございます。
販売員さん、お見事でございます。
さっそく、明日、持っていこうと思います。
ということがあったのでした。