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異世界のカナタ  作者: さいとう
3/4

第2話 冒険者ギルドへ

「起きなよ」


 頬に硬い何かが当たる。

 重たい瞼を持ち上げて、それが何なのか見てみると、少女が杖の先で俺をつついていた。

 ……ちょっと痛い。


「……おはようございます」

「おはよう。そろそろ約束の時間だから、君も起きて」

「あ、はい」

「……凄い隈だね。もしかして眠れなかった? あっちに洗面所があるから、顔洗ってきなよ」


 言われるがままに洗面所に行って、蛇口を捻る。

 両手に水を溜めて、それを顔にかける。


「冷た……」


 ようやく頭も冴えてきた。

 タオルで顔の水を強めに拭って鏡を見る。

 そこで少し、違和感を覚える。


「……俺ってこんな見た目してたっけ?」

 

 顔はあまり変わらないが、何というか全体的にがっしりとしている気がするし、心なしか背も高くなっている。

 中学の頃から帰宅部だったし、普段からろくに運動もしないからもやしって感じだったのに。

 ……こっちの世界に適応するための仕様だったりするんだろうか?


「まぁ、いっか」


 タオルを置いて、俺は洗面所を後にした。


「どう? 目、覚めた?」


 ベッドに座って杖の手入れをしていた少女が言う。

 

「あぁ、うん。もう平気」

「そう。なら行こうか」


 手入れをしていた杖をベッドに放って、少女は立ち上がる。

 ……昨日から思っていたが、結構雑だなこの子。

 

「ちなみに何処に行くんだ?」

「冒険者ギルドだよ」

 



 宿を出て、見慣れない街を歩く。

 道行く人々は、髪色が色鮮やかだったり、鎧を着ていたり、耳が長かったり。

 そんな異様で新鮮な光景を見ていると、やはりここは異世界なんだと思い知らされる。

 色んな屋台が出店しており、料理や装飾品、本や武器など多種多様の商品がずらりと並んでいる。

 

「なぁ、ここはいつもこんなに賑わっているのか?」


 俺がふと疑問に思ったことを口にする。

 ここで暮らしていたわけではないし、何なら初めて来た街だが、この盛り上がりようは少し解せない。


「いや、普段ならこんなに人は多くないよ」

「そうなのか?」

「今日は特別な日だからね」


 少女は遠くに見える大きな城を指差しながら答えた。


「あれは?」

「王宮だよ。今日はあそこで勇者のお披露目パーティーがあるんだ。それが終わったらパレードがあるから、街の人はお祭り気分なんだよ」

「勇者?」

「そう、勇者。なんでも神の加護を授かった異世界の勇者らしくって、魔王に対抗すべく、王宮に支える魔法使い達がこの世界に召喚したらしいんだ」

「へぇ」

 

 俺もこの世界の奴らにとっては異世界の住人のはずだが、何だか随分と待遇が違うような……?

 その勇者とやらは王宮でさぞ持て囃されていたのだろう。何せ神の加護を授かった勇者なのだから。

 それに比べて俺と来たら、ダンジョンスタートで危うくモンスターに食われるところだったのに。


 扱いの差に不満を感じながら、俺は街をトボトボ歩いた。

 


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