パスワードが違います
ここ最近、情報セキュリティーの強化目的も兼ねて、我が社での個人アカウントログインのパスワードの桁がおかしなことになってきた。始めは4桁だったはずのパスワードが、6桁、8桁と増え続け……、14桁まできたところでようやく落ち着いた。
この歳になると、記憶力の衰えがあるのかなかなか覚えられない。かといってメモをしても俺の場合、そのメモをなくす可能性がある……。普段からスマホでスケジュール管理をしていることもあり、手帳を購入しても持ち歩かないときた。
はてさて、どうしたものか……
記憶に残りやすいワードで固めるか
そうして設定したパスワード。
毎日のように入力することでようやく馴染んできた。だが、慣れ親しんだ頃にやってくるのが『パスワードを再設定してください』という画面上のお知らせだ。
社内のマニュアルにおいて『パスワードの有効期限は設定から3カ月』という決まりがある。これも情報セキュリティー強化のため、とは言え時間が過ぎるのは早いものだ、と痛感しながら再設定画面を開く。いつものように覚えやすいワードを組み合わせ、『OK』をクリック。だが、俺の努力は無情にも砕け散った。画面上に表れた赤字の注意書きをよく読んでみる。
『パスワード設定には、アルファベットと数字、小文字、大文字を含めてください』
なぬ!より進化しているではないか!
こんな事に時間を費やしている暇はない!
ふーむ……
考えに考えた結果、ようやく14桁のパスワードが完成した。再設定が完了すると、一旦強制ログアウトイベントが発生するのはどうにかして欲しい。とは言え、今しがた設定したばかりのパスワードは意外と覚えているものであろう。
俺は甘かった……
ログイン画面に社員IDを入れパスワードを入力、エンターボタンをカチッ、と押しいつも出てくる社員専用の画面を待つ、が……俺のパソコン画面に表れたのは
『パスワードが違います』
嘘だろ!今設定したばかりだよ!
何度も入力するが出てくる画面は、
『パスワードが違います』
仕方ない、毎度のことで申し訳ないが、いつものようにするか
そうして俺は、今日も社内情報セキュリティー部へと電話を掛けることにした。
お世話になっております、情報管理課の来奧と申します
パスワードの件なのですが……
名前を聞いた途端、電話口から聞こえてきたのは、つい先ほど設定したばかりのパスワードだったが、どうやら俺は綴り間違いで設定していたようだった。
虎娘『パスワードが違います』
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