番外編4 オレの名は2(全3話)
本作を見つけてくれてありがとうございます。
~前回のお話~
とある惑星のヤンキー(死語w)の物語。
大柄な体に真っ白な髪の色、そして喧嘩の強いヤンキー(死語ww)は周りから白鬼と呼ばれていた。
ある日親友のタッちゃんの誘いで、暇つぶしで見た全国機動騎士競技選手権大会で白鬼は運命の出会いをする。
その名は選手として大会に出場していた妖精少姫アルマ・カーマイン。
その出会いによって白鬼の運命は大きく変わっていく事になった。
あ。あと(身長が)ちっちゃな暴走族リーダー、ドミニクとの絡みもあったよ!
あぶない、あぶない。すっかり忘れてた!
毎日午後にストックの続く限り投稿します。
宜しくお願いします。
家に帰ると、オレは工場に飛び込んで興奮しながら叫んだ。
「親父! オレに整備士の事を教えてくれ!」
「はぁ!? おめぇ、なんだよ藪から棒に」
「オレ、機動騎士の整備士になりてぇんだ!」
工場の中で何か整備していた親父が素っ頓狂な声を上げるが、構わずオレは叫んでいた。
「……機動騎士てのは、軍のロボットだろ。町のしがない工場で、そりゃ無理だ」
「決めたんだ! オレの心の底から溢れてくるんだよ! この気持ちに嘘はつきたくねぇんだよ!」
そう言いきったオレの目を真っ直ぐと親父は見てくる。
オレはそんな親父の目を逸らさずにじっと見続けたんだ。
「……かかっ。鼻たれ坊主がなんて目してやがるんだい」
親父はそばにあった灰皿から吸いかけのタバコを取ると、一度大きく吸い込んで、ぷかっと煙を吐き出した。
「いいだろう。知り合いのブンちゃんがそういうの詳しいはずだ。連絡してやる」
「ありがとう親父!!」
そこでタバコを灰皿に押し付けると親父は射抜くような眼光でオレを睨んできた。
「だがな。機動騎士っていやあ戦う奴が乗るロボットだ。てめぇの整備の善し悪しでパイロットを殺すこともある。覚悟はあるのかい?」
「ったりめぇだろうが。バイクでも機動騎士でも変わんねぇ。整備する奴がそれに乗るやつの命に責任持つのは基本中の基本だ。……親父が前に教えてくれたんだろうが」
そう言いきったオレから目線を外すと親父は携帯端末を取り出して電話をかけ始めてくれた。
「……おぉ、ブンちゃん久しぶりだな。早速なんだけどよ、俺のガキがな――」
どうやらブンちゃんとやらに連絡をしてくれているらしい。
そうと決まれば、あとやることは一つだけ。
“ケジメ”をつけることだけだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「あぁ!? 特攻隊長のてめえが皇龍を抜けてぇだって!!」
皇龍の集会日。
郊外の今は使われていない駐車場でオレは総長に抜けることを告げた。
目の前にいる総長は去年交代したばかり男だった。
筋肉質な大柄な体は小麦色に焼けており、脱色して金色になっているその頭は、オレからしたら汚ぇ髪になっていた。
喧嘩も強ぇんだろうが、こいつはどっちかって言うとコウモリのようなずる賢い男だ。
人の弱みを握って手下を多く作り、数の暴力で皇龍の中での地位を登ってきていた。
多くのメンバーを引き連れて、前総長を下ろしてからはチームの中は奴の独裁政治が始まってしまい、何人もの古参メンバーを引退に追い込んでいった。
そして、自分の意見に反抗しない奴ばかりになった今の皇龍で、この総長は皇帝のように振舞っている。
まぁ、オレから言わせれば、裸の王様、いや、ただの『バカ』でしかない。
「あぁ。やりたいことが出来たんだ。それにもうオレは今の皇龍には必要ないだろう?」
その言葉にバカは嬉しそうに喉を鳴らして笑いやがった。
前々から自分の子飼いの部下から特攻隊長の称号が欲しいと言われて、オレをどうにかして引きずり下ろそうとしていたのは知っていた。
「おいおいおい。皇龍の幹部様がチームを抜けたいって言ってもな、はいそうですかってならねぇのは分かるよな? 白鬼さんよ」
俺の申し出は渡りに船だっただろうが、その顔にはサディスティックな笑いが浮かんでいる。
「分かっている。好きにすればいい」
暴走族の足抜けなんて、昔からされる事はただ一つ。
私刑だ。
寄ってたかってボコボコにされるのが、馬鹿馬鹿しいが昔からの伝統だった。
だが、これでケジメがつくのなら、と甘んじて受けようと考えていたオレの言葉が終わるか終わらないかの時には、もうオレの腹に拳が突き刺さっていた。
「白鬼ちゃ~ん。俺はずうぅっとこの瞬間を待っていたよぉ!!」
バカの隣のアホ面した男がオレに走り寄ってきて、その拳を叩き込んできたんだ。
「おめぇは、オラッ、ずっと、オラッ、気に入らなかった、オラッ、んだよ!」
ずっとバカにオレの特攻隊長の称号が欲しいと言ってきていたその男は容赦なく殴ってくる。
オレは咄嗟に腕を守るように体に回して前に屈んで、そのパンチを受け続けた。
これから機動騎士の整備士になるんだ。この腕だけは壊させない。
腕以外の顔、肩、腰と殴られるが、オレの口からは自然と笑い声が出てきちまった。
「……ハァハァ、あん? てめぇ何笑ってんだよ?」
それに気づいた男が不機嫌そうに俺に聞いてくる。
「いや、なに。別に何でもねぇんだけどよ――」
オレは顔を上げて、挑発するように笑顔を作ると言い放つ。
「ずいぶん軽い拳だな、って思ってよ」
その瞬間、俺の右頬に奴の拳が入り、顔がグルンと後ろに反っちまった。
後ろに視線が向くと、さっきまでそこにいたタッちゃんが居なくなっていることに気づいた。
別にオレはタッちゃんを薄情者と言う気は無い。
この場にいたままだったら、オレの連れということでタコ殴りに会うだろうから、逆に安心していた。
そして、また前を向くとさっきの奴の拳が飛んでくる。
あぁ、いつになったら終わるだろうな。
そう思いながら、オレはバカの子分にいいように殴られていた。
数十分後。
オレの足元で二人の男達が息を荒らげて座り込んでいた。
別にオレは何もやっちゃいねぇ。
こいつらは、ただ殴り疲れてへたり込んでいるだけだ。
今、俺の前にはパンチパーマの男が立って、さっきから執拗に蹴り技を叩き込んでくる。
何度も足に食らったオレは倒れないように気力だけで立っていた。
足だけじゃない。
顔はもうボコボコに腫れていて、服の下は赤や青や紫の色でカラフルになっているだろうな。
「おう、白鬼。そろそろ我慢するのを止めたらどうだ? 今なら俺様に少し『媚び』売ってくれるだけで無かった事にしてやるが……」
それまで偉そうに椅子に座っていたバカがニヤニヤしながらオレに近づいてくる。
よく見るとズボンの一部分が膨らんでテントを張ってやがる。
……はっ、いい趣味してんな、このバカは。
恐らく、その「媚び売った」事を脅しにしてオレをいいように使おうとしているんだろうな。
「……ハァハァ、ゲホッ。ハァハァ、死に、やがれ、バカ、が」
オレの返答に対して、バカは顔を真っ赤にして怒鳴り散らしてくる。
「そうかい、そうかい! 俺様の優しさを馬鹿にしやがって!……おい、てめぇら白鬼の腕を持て!」
後ろにいた手下に命令すると、手下二人は体に回して守っていたオレの腕をほどいて横に伸ばすように広げる。
そして、さっきまで俺を蹴っていたパンチパーマに鉄パイプを持たせると、顎をクイッと上げて口角を上げて気持ち悪い笑みを浮かべた。
「白鬼。てめぇがさっきから腕を殴られないようにしてたのは分かってんだよ」
人の弱みをよく見つける奴だ。いい目をしてやがる。
「その腕、グチャグチャにしてやったら少しは俺様に対して『素直』になるかもなぁ?」
オレの前に立ったパンチパーマが鉄パイプを大きく振りかぶる。
どんなに体を痛めつけられても絶対に守ろうとした、これからのオレの夢が詰まった大切な腕がバカ達の目の前に晒されている。
もう数秒後には鉄パイプが振り下ろされて、この腕は壊されるんだろう。
筋肉が、腱が、骨が、神経が、ぐちゃぐちゃに壊されてしまうんだろう。
「ハァハァ。絶対ぶっ殺してやる! テメェら、ゲホッ、絶対後で皆殺しだ!!」
どうしようも無いその状況に、オレは悔しさで大声で吠えた。
もう吠えることしか出来なかった。
そして、腕にくる衝撃を予想して目をグッと瞑った。
その瞬間。
「おもしれぇ事してんじゃん!! ねぇ、ボクも混ぜてよ!!!」
集会場の入口から男の声が、子供のような男の声が聞こえてきたんだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
集会場の入口から聞こえてきた男の声を聞いた皇龍の一人がそちらを見ると、ギョッとした顔をしてその場にへたり込んだ。
そこにいたのは黒髪を短く刈り込み、白地に赤いラインの入った特攻服を着た男だった。
その男は、ゆっくりと歩いてオレの方に近づいてくる。
カツ、カツ、カツ。
コンクリートの床をブーツが叩く音だけが不気味に集会場中に響いた。
誰も動けない。
俺の両腕を掴まえている二人も後ろを振り返り、腕を通してガタガタ震えているのが分かる。
目の前のパンチパーマも一緒だ。
オレじゃない方を見て、鉄パイプを振り上げたまま止まっている。
その足音がオレの前まで来ると、二度と会いたくないと思っていた男の顔が視界に入る。
「ドミ……ニク……? ゲホゲホ!」
「あはは、なんだよ白鬼。――めちゃくちゃボコボコじゃん」
いつものニコニコした、少年のような笑顔でドミニクはオレに話しかけてきた。
そして、目線を前に戻すと
「……これは君がやったのかな?」
さっきまでオレをいいように蹴りまくっていたパンチパーマの顔を覗き込むように下から見上げる。
絶好の位置だった。
鉄パイプを持ったパンチパーマから、ノーモーションで蹴りが飛んできた。
ちょうど背の低いドミニクの顔に綺麗に吸い込まれるように突き刺さる絶好の位置。
だが、ドミニクは簡単に躱すとパンチパーマのヒザの裏に自分の肩を当てた。
そして、足を捕まえて上に持ち上げながら残った足を刈ってパンチパーマを地面に転がしたんだ。
次の瞬間
奴は地面に倒れたパンチパーマの顔目掛けて、容赦なくブーツで踏み抜きやがった。
グチャッという音の後からパンチパーマが悲鳴を上げるが、もう一度足を上げて踏み降ろすと悲鳴は止んだ。
笑ったままのドミニクは次に後ろを振り返ると、目にも止まらない速さで拳を二回振り抜く。
たったそれだけでオレの両腕を掴んでいた二人のアゴを破壊し、受けた二人はぐらっと意識を失って地面に沈んじまったんだ。
「おっとっと。白鬼、君重いんじゃないの?」
「……へっ、テメェがちっちゃすぎるんだよ」
支える二人がいなくなって、足にきてたオレまで倒れそうになるのを寸前でドミニクが支えてくれた。
その時、さっきまで気持ち悪い笑顔を浮かべていたバカが大声を張り上げる。
「ドォミィニクゥ!! てめぇ、俺様に喧嘩売ってんのか!? 沙羅曼蛇は皇龍と戦争するつもりなのか!?」
バカが叫んでいるがドミニクは動じない。
オレを支えたまま、バカ以上の大声を張り上げる。
「戦争? ハッ。この状況見て、なんでお前はまだそんなに温ぃ事言ってんの? 仲間が三人もヤラれてるんだよ? それなのに、喧嘩売るつもり? 戦争するつもり?」
そして、この小さな体のどこから出ているのか分からないくらいの声量に怒気を乗せて解き放つ。
「もう、どう見ても戦争状態だろうがバカヤロウ!! てめぇもチームのトップだったら、今この場でボクの命取るくらいの気概を仲間に見せてみろよ、アホウが!!」
二つの組織のトップの応酬。
しかし、傍から聞いてて悲しいくらいの差があった。
もちろん、皇龍のトップの方が圧倒的に押し込められている。
「……もういい! だったら今から皇龍と沙羅曼蛇は戦争だ!! バカヤロウは正義のヒーロー気取りで、一人でノコノコやって来たテメェの方だ。この自殺志願者が!!」
それまで我を忘れてボサっと突っ立っているだけだった皇龍のメンバーがドミニクとオレを取り囲んできた。
約百人の皇龍に囲まれて絶体絶命の状況に、しかし、ドミニクは微塵も動揺した様子を見せない。
「え? ボクが一人で来たなんていつ言ったかな。こっちは戦争しに来てんだよ? ――なぁ、そうだろ!!」
ドミニクがバカから目を外して、後ろに叫ぶように語りかけた。
その時、まぶしい光がオレ達を照らした。
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この後、隕石が落ちてきて駐車場が消滅します。
【次回予告】
「ボクは未来の君だよ。白鬼、君に危険な危機が迫ってるんだ!」
隕石が地面に触れる寸前、白鬼は数日前にドミニクが言っていた事を思い出した。
あの時は『何をバカな』と流していたのにまさか本当にこんな事が起きるなんて思いもしなかった。
そして、突然降ってきた隕石が地表に触れて破滅的な光が街の一角を照らす。
その瞬間、轟音が街中に響き渡った。
「う、うぅ……」
周りが隕石の爆発でドロドロのマグマのようになった中、地面に横たわる人物がいた。
「一体、オレはどうなっ!?」
彼が顔を上げて周りを見るとあんなに大勢集まっていた皇龍のメンバーは居なくなっていた。
隕石がぶつかった瞬間に発せられた高熱で燃えるのでは無く、瞬時に蒸発してしまったのだ。
「白鬼、ゴホゴホ! 大丈夫か……」
全員いなくなった、と思っていた。
ならどうしてオレだけ助かったのか……
彼がそう思っていると足元から声が聞こえてくる。
「!? だ、誰だ!!」
そこに目を向けると、そこにいたのは皇龍の総長。
そう、汚い金髪に浅黒い肌をした筋肉質の男だった。
「はぁ、はぁ、はぁ。へへ、どうやら助かったみてぇだな」
あんなに嫌悪感を持っていた総長の顔は満面の笑みが浮かんでいた。
何かを成し遂げた者が浮かべる、清々しい雰囲気がある
「いいか? 黙って聞いてくれ」
慌てて腰を下ろした白鬼の肩を掴んで顔を近づけてくる。
顔に必死な形相を浮かべている総長の圧力に気圧されて、彼は総長の話を聞く事にした。
「お前は破壊神ゼレスネルの転生者だ。そして俺は、いや、私はあなた様の従者、ゼレンコフの転生者」
頭をハンマーで叩かれたような衝撃が走る。
破壊神?ゼレスネル?転生?
こいつ、ヤクでも極めてやがるのか?
しかし。
しかし、その単語を聞いた瞬間、白鬼の頭の中に記憶にない不思議な記憶がフラッシュバックのように浮かんできた。
まるで今まで普通だと思っていた自身の頭の中が、今では深い霧がかかっていたようだった。
そして、総長は言葉を続ける。
「全ての神々を破壊しようとしたあなた様は神々の謀略にはめられて封印されました。それが20万年前です」
確かに。
今のクリアになった記憶を遡れぱ神々に封印される瞬間の光景がありありと思い出された。
「この攻撃はあなた様を消すために放たれた、審判の神ファストフル様の神撃の槍。私の力ではあなた様の御身をお守りするので精一杯でした」
神の攻撃。
この世の全てを滅ぼすことが出来る神の一撃を防ぐ為、総長の体は既に下半分が存在していなかった。
「……ゼレンコフ。すまない」
「ふふ、いいのです。狂っていく神々を、奴らの暇つぶしで遊ばれて殺される人類を助ける為に抗っていたあなた様を助けられた事が、私の人生の意味だったのです」
あぁ。
そうだった。
この世界を創り、生命が育って行く事を見守っていた神々は徐々に狂っていった。
神々は言ったんだ。
『もう飽きた。これからはこの箱庭が我らの遊戯盤になるべきなのだ』と。
そして、それに反対した私を『破壊神』と蔑み、奴らは私を封印したのだった。
「私はあなた様が拾ってくれた孤児でした。……あなた様は気まぐれだったんでしょうね。しかし、私は幸せでした」
総長の体が段々薄くなっていく。
全ての力を神の攻撃を防ぐために使った彼は、魂にも傷がつき、この世から消えかかっていたのだ。
「人類を……この世界を頼みましたよ。ゼレスネル様」
最後にもう一度、満面の笑みを浮かべたゼレンコフは私にそう頼んだ後、ついに全て消えてしまった。
周りはまだマグマの中のように燃え盛り、街の一角は完全に地獄のような光景に変わっていた。
さっきの爆発で何人の人間が死んでしまったのか?
神のわがままで何人の人間の人生が狂ってしまったのか?
白鬼の心の中に狂おしいほどの怒気が湧き上がる。
「……お前達が……」
地面に転がっていた石を掴むと、その石は一瞬で塵に変わってしまう。
「お前達がこれ以上人類を!この世界を弄ぶのなら私はお前達を絶対に許さない!!」
顔を上げる。
真っ暗に染まった夜空を睨み、白鬼は天にまで届くような大声で吠えた。
「覚悟しろ、神々よ!私は破壊神!貴様らがそう呼んだように私は貴様らにとっての破壊神となろう!!」
その日、地上の片隅に鬼が生まれた。
白い、ひたすらにただ白い。この世の全てを白く無にする力を持った災厄の白鬼。
彼と神々の戦いの火蓋はまさに今切って落とされたのだった!!
はい。
もちろん嘘です。
てか、10分くらいで書いたから地の文の視点ぐちゃぐちゃで気持ち悪いですねw
次回『オレの名は3』
チュッチュもあるよ!
お楽しみにね!!




