96. 防御壁の練習をしてみる
僕は領主様にもらった紙を持って、隊長さんの後について行った。
そこでは、騎士団の演習場にあったみたいな的が端に並べられていて、魔術師の人が練習してた。
「ちょっとみんな集まってくれ。」
「「「はい!」」」
「彼は今度イスパーダ様が王都に行く時の護衛に加わってくれるエトワーレの騎士団の者だ。
彼はかなりの凄腕の魔術師だそうだ。見た目のこともあり、狙われやすい。
彼の魔術を見ても、他言しないように。
彼が魔術師であることも他言しないように。
イスパーダ様からの命令だ。」
「「「はい!」」」
「こらから彼が魔術を練習する。見ていてもいいが邪魔しないように。」
「「「はい!」」」
「僕はシュペアです。よろしくお願いします。
えっと、僕はそんなに凄腕じゃないです。まだまだできないことがたくさんあるし・・・。
みんなに迷惑かけないようにするので、演習場の端を貸して下さい。」
僕はそんなに凄くない。
まだ全然凄くない。そんなに期待されても、応えられないよ・・・。
「副隊長、案内してやってくれ。」
「はい!」
「私は護衛騎士隊の魔術師を統括している副隊長のマージアです。
どんな魔術を練習するんだい?的はいる?範囲は広い方がいい?」
「えっと、的は必要になったら言います。
まずは・・・、」
領主様の伝言の紙を広げてみる。
結界、複数人にかける方法は分かる。広範囲にかけるのはやってみたいけど、ちゃんとかかってるか確認することが出来ない。
同じように攻撃付きの結界もちゃんとかかってるか確認できない。
異物排除も試せない。
状態異常回復も試せない。
できるのは、索敵と、防御壁と、氷の檻と、氷の武器と、伝令魔獣かな。
結界とか異物排除が1番練習したい魔術だけど、難しい。やり方はちゃんと覚えておいて、イメージだけはちゃんと固めておこう。
「とりあえず、防御壁と、氷の檻とか武器を作る練習をしようと思う。どれもやったことが無いから上手くできるか分からないけど・・・。」
「そうか。防御壁は私もできるよ。檻ってのは分からないけど、武器を作るというのは矢や槍を出して飛ばすのとは違うのかい?」
「えっと、剣とかを作って飛ばさずに持って戦うの。」
「え?そんなことできるのか?」
「まだやったことがないから、僕にできるかは分からないけど、何かあった時のために練習しておきたい。」
「そうだな。うん。確かにできるなら便利だな。近距離に敵が迫った時に魔術を発動することは難しいからね。」
「マージアさんは、防御壁はどんなのが使えるの?」
「私が使えるのは土魔術だね。」
「見せてもらってもいい?」
「いいよ。」
『ロックウォール!』
マージアさんが唱えると、岩の壁が地面から盛り上がるように出来上がった。
「わぁ、凄い。これだけ分厚ければ魔術もある程度は防げそう。」
僕もやってみよう。
「ロックウォール」
マージアさんが見本を見せてくれたから、上手くできた。このイメージを忘れないようにしないと。
「ロックウォール、ロックウォール、ロックウォール、ロックウォール、ロックウォール、ロックウォール、ロックウォール、ロックウォール、ロックウォール、ロックウォール。」
うん。10個作ってみたけど、これなら大丈夫そう。でもちょっと起動が遅い。
魔術を放たれてから作っても間に合わない。
敵が近過ぎても、遠過ぎてもダメだ。
地面から盛り上がっていく途中で避けられるかもしれないし、もっと早くできないかな?
土じゃなくて、水や氷や風はどうだろう?
ロックウォールを魔力霧散させて消すと、僕は水の壁を作ってみた。
これ、あんまり意味ないかも。
敵はビックリするだろうけど、そのまま通り抜けられるし、防げるのは同じ水の魔術だけだ。
火の魔術は消えてくれるかもしれないけど。
強いのはそのまま通り抜けそう。
すぐに魔力霧散させた。
氷はどうだろう?
作ってみると、僕は今のところ氷が1番得意だから、氷は土より起動が早かった。僕は土より氷の方が向いてるみたい。
風は、攻撃を阻むことはできるけど、壁にする意味があるのかが謎だ。
壁を作るなら、風で敵や攻撃魔術を向こうに追いやったり、トルネードみたいなのに敵を巻き込んだ方がいいと思う。
うーん、防御壁は使えそうなのは氷だけかな。
どれくらいの厚みにすると、どれくらいの攻撃を防げるか確認しておこう。
僕は、厚さの違う氷の防御壁を10枚作って、それぞれの壁を身体強化をかけて全力でトレントの棒で叩いてみた。
3センチくらいあれば、物理には対応できそう。攻撃魔術はどうだろう?
突き抜けて誰かに当たらないように、演習場の壁と逆側に回って防御壁の向こうは壁しかない状態にして、厚い順に風の矢を放っていった。
攻撃魔術も3センチあれば大丈夫かな。
最後に氷の槍を放ったら防御壁は割れちゃった。
氷の防御壁を作るなら5センチにしよう。
これで防御壁はできるようになったからいいや。
忘れないように、羽ペンにインクをつけて、紙にメモを取った。
あ、夢中になってマージアさんのこと忘れてた。
マージアさんのところまで行って、防御壁の練習ができたことを報告しよう。
「マージアさん、僕は防御壁は氷が向いてたみたい。厚みも攻撃を受けることを考えて試してみたから、最適な厚みも分かったし、次の練習に移るね。」
「あ、あぁ。防御壁、初めて作ったんだよね?」
「うん、そうだよ。」
「そうか・・・。」




