95. 領主様からの伝言2/2
領主様からの伝言、読まなきゃ。
大事な話かもしれないし。
僕は席に戻って、さっき受け取った紙の束を広げた。
内容は、護衛に役立つ魔術の説明がほとんどだった。中には僕が知りたかった結界の応用や、索敵の応用、毒を受けた時の遺物排除、状態異常回復、防御壁や、敵を閉じ込めておく氷の檻の作り方、武器を失った時のための氷の武器の作り方、いつか聞こうと思っていた伝令魔獣の飛ばし方も書いてあった。
そして最後に、自衛手段は多いに越したことはないけど、1番大事なのは生きて帰ることだって。
無茶をしないように、僕のこと大切だから無事を信じて帰ってくるのを待ってるって書いてあった。
嬉しい。この紙。大切にしよう。
領主様が僕に送ってくれた言葉。
教えてくれたこと、全部できるようになりたい。領主様、ありがとう。僕、頑張るよ。
きっとこの経験は、領主様の側近になった時にも役に立つと思う。
僕は負けない。
イスパーダをちゃんと王都まで守って、僕も強くなるんだ。
「僕、魔術の練習したい。」
「あぁ。じゃあ演習場の端を貸してもらおう。」
「俺らも、練習したいことができた。」
「出発までに何とかものにしたい。」
きっとルシカとゲオーグに届いた伝言にも同じように戦い方がとか、守り方が書いてあったんだと思う。
「ルシカ、ゲオーグ、僕は今回の護衛で攻撃魔術を使ってもいい?」
「今回は仕方ないな。失敗できない護衛だからな。」
「イスパーダ様には護衛騎士も含めてシュペアのことは黙っておいて貰うようにしよう。」
「何なに〜?俺がどうしたって?」
「イスパーダ様、今回の王都までの護衛は、失敗できない。シュペアは色々な魔術も使うことになると思うんだが、イスパーダ様も護衛騎士の方たちも、シュペアのことは黙っておいてほしい。」
「そうだね。兄上には話すことになるだろうけど、それ以外には話さないし、兄上にも黙っておくよう約束させる。
護衛騎士隊にも、他言しないよう厳命しよう。」
「「ありがとうございます。」」
「いいのいいの。
元は俺の我儘だからね。俺の方こそ、ありがとう。」
演習場に着くと、隊長さんとイスパーダにトレントの棒を貸してあげた。
「おぉ〜!隊長、この棒は確かに軽いな。軽く打ち合ってみたい。」
「はい。」
隊長さんとイスパーダは軽く打ち合って感触を確かめてた。
まだ棒はたくさんあるし、あと1本、ショートソード3本分作ろうかな。
「シュペア、これいいな。軽いのにかなり硬い感じがする。俺も欲しい。もちろん金は払う。」
「じゃあ部屋からもう1本、棒持ってくるね。」
「持って来させよう。シュペアたちの部屋から棒を1本持ってきてくれ。」
「畏まりました。」
いつの間にかイスパーダ様の後ろにいた執事の人が取りに行ってくれた。
「トレントの武器か。これはいいかもしれない。棒なら模擬戦にも使えるし。我らも今度トレント狩りに行こうか。」
「イスパーダ様、トレントは倒すのも加工も難しいと聞きます。
討伐は冒険者に依頼した方がよろしいのではないですか?
それにこの棒、かなりの腕の職人が作り上げたものかと存じます。そのような方に依頼しないと難しいかと。」
「なるほど。そうか。じゃあそうしよう。シュペアはトレントを倒したんだろ?」
「うん。アスカルの森で倒したよ。」
「そうか。軽いとはいえ討伐してから街に運ぶのは大変だったんじゃないか?
この棒の加工をしたのはアスカルの職人か?」
「えっと・・・。」
僕は言っていいのか困ってルシカとゲオーグを見た。
「もうこの際だからな。」
「いいんじゃないか?」
「うん。
僕たちはアスカルの街で毒針で狙われて、森に逃げたんだ。そこで森を移動しながらトレントを探して倒した。
その場で僕が棒を切り出して。でも断面が四角だったから、移動しながら暇な時間に角を削って丸くしていったの。
だから、棒をみんなで運んだだけで運ぶのは大変じゃなかったし、職人にはお願いしてないの。」
「えぇ?シュペアはそんなこともできるの?
あぁ、そうだ隊長、実はシュペアは凄腕の魔術師なんだ。その腕はかなりのもので、うちの隊の魔術師のレベルを遥かに凌ぐと思う。俺も全部は知らないが。
シュペアは見た目もこれだから狙われる。隊員全員にシュペアの能力は他言しないよう徹底してくれ。」
「畏まりました。あの、もしかしてトレントの加工は魔術で?」
「うん。風の刃でやったよ。」
「なるほど。分かりました。騎士たちには徹底させましょう。」
「頼んだよ。」
「はい!」
「お待たせしました。」
執事の人が棒を持ってきてくれた。
「見ててもいいか?」
「うん。」
僕は棒を風の刃で3等分に切った。
イスパーダは見たいって言ったけど、棒を切るだけだから一瞬なんだけど・・・。
「できたよ。」
「これ、凄いことなの?俺にはよく分からなかったな。」
「真剣と打ち合ってみてもよろしいですか?」
「うん。いいよ。」
「おい、その辺の誰でもいい、こっちに真剣を持って2人ほど来てくれ。」
「「はい!」」
騎士の人が2人走ってきた。
「お前は真剣で、お前はこの棒で、本気で打ち合ってみてもらえるか?」
「わ、分かりました。」
キン、キン、カン、キン、カン
「おぉ〜真剣を受け止めても折れたりしないんだな。」
「もういいぞ。」
「ちょっと棒見せて。」
「はい!」
「傷一つ付いてない。トレントはこれほど丈夫なのか。凄いな。」
「本当だ。多少の傷くらいは付いているかと思ったが、全くの無傷だ。凄い。私も欲しいくらいだ。」
「いいよ。」
「いやいや、そんなに簡単に渡してはいけない。これはかなり価値の高いものなんだ。」
「そっか、じゃあ貸してあげる。それでいい?」
「良いのかい?」
「いいよ。」
僕は隊長さんに2本ショートソードの長さに切ったものを貸してあげた。
「隊長さん、僕、魔術の練習をしたいんだけど、どこでやったらいい?」
「魔術演習場を案内しよう。」
「いいの?」
「いいよ。ここは戦士の演習場だから、魔術には対応していないんだ。すぐ隣だから付いてきて。」
「うん。」
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