94. 領主様からの伝言1/2
やっとトレントの剣での戦いに慣れてきた頃、隊長さんが歩いてきて、お昼に誘ってくれた。
護衛騎士のための食堂があるんだって。
食堂に行くと、この前お昼に食べたポルキロっていう、料理がたくさん並んでて、好きなものを好きなだけ乗せて、自分だけのご飯セットを作れるお店のご飯みたいなのが用意されてた。
「凄い。お店のご飯みたい。」
騎士の人たちを見ると、お皿から溢れそうなくらい料理を山盛りに盛ってる人がいっぱいいた。
あんなにたくさん食べるんだ。
僕もあれくらいたくさん食べたら、早く大きくなれるかな?
でも、残すのは良くないから、食べられる分だけにしよ。
この白いお米っての、美味しかったからこれ食べたい。あとお肉の煮たやつ。
豆の煮たやつと、サラダと、パインも乗せた。
隊長さんも同じテーブルに座った。
「君たちはエトワーレの騎士団に在籍してるんだよね?
私たちは王族であるイスパーダ様を守る護衛騎士隊として国の中ではかなりの精鋭を揃えているはずなんだ。
その、エトワーレの戦士たちは皆が君たちくらいのレベルなのか?」
「どうだろう?全員は分からないけど、戦士の中でもルシカとゲオーグは強い方だと思う。動きも早いし。」
「そうか。それを聞いて少しは安心した。この国のレベルが著しく低いのかと思って・・・。」
「そんなことないと思う。
イスパーダ様は何度も命を狙われてるって言ってた。今まで守ってこれたのは、護衛騎士の人が強かったからでしょ?」
「そうか。ありがとう。そう言ってもらえると頑張ってきてよかったと思うよ。
ところで、さっき君たちが使っていた木剣?あれは木なんだよね?金属の剣を打ち合っているような音がしていたから。」
「うん。あれは木だよ。
僕たちも今日初めて使ったんだけど、金属みたいな音がして面白いって思った。
ナイフも少し練習してみたんだけど、慣れてなくて無理だと思ったから、あの棒をショートソードくらいの長さにして、護衛の時に使おうと思ってるの。」
「木、なんだよね?強度は大丈夫?」
「前にAランク冒険者の知り合いが、魔術師が魔術を撃っても傷が付かなかったって言ってたから、大丈夫だと思う。」
「そんな頑丈な木があるのか。
それはエトワーレにしか生えていないのか?差し支えなければ、どんな木なのか教えてもらえないだろうか?」
「ラジリエンにいるよ。トレントだから。エトワーレにはいない。」
「トレント?あの木の魔獣の?」
「うん。そうだよ。」
「あ〜こんなところにいた〜
ズルくない?俺もシュペアに癒されながらご飯食べたい。」
「イスパーダ様、お疲れ様です。」
「「「「お疲れ様です!」」」」
騎士の人がみんな立ち上がって、声を揃えて言ったから、びっくりした。
「いいよ、いいよ、そんなことしなくて。みんなご飯食べて。」
「「「「はい!」」」」
「イスパーダ様どうしたの?ここは騎士の食堂でしょ?」
「シュペア、俺に様はつけないで。他人みたいで寂しい。」
「分かった。」
「シュペアたちとお昼一緒に食べようと思ったのにさ、探してもいなかったから。
そしたら隊長と楽しそうに話しながらご飯食べてるじゃん。俺は1人だけ除け者にされて寂しい。」
「ごめんなさい。イスパーダも誘えばよかったね。」
「俺もここで食べていいよね?」
「僕はいいけど、いいの?」
「たまには賑やかなのもいいよね。」
間も無く、メイドの女の人がイスパーダのご飯を運んできた。
イスパーダはお腹が空いてたのかな?無言でどんどん料理を口に運んでいく。
「あの、後で私にもその木剣、触らせてもらえないか?」
隊長さんはトレントの棒が気になるみたい。
「うん、いいよ。軽いから持ったらびっくりするかも。」
「何?その木剣って。シュペアそんなの持ってたっけ?」
無言でご飯を食べてたイスパーダが話に入ってきた。
「さっき作ったの。作ったって言っても、棒の長さを調整して切っただけだけど。」
「昨日言っていた木の棒か。」
「うん、そう。さっき届けてくれたの。
僕、ナイフを最初に試してみたけど上手く使えなかったから、それでショートソードくらいの長さがあればいけるかもって思って、でも買いに行けないからトレントの棒を使うことにしたの。」
「トレントだったのか。
ラジリエンで倒して棒に加工してもらって持ち歩いてたんだね。そっかそっか。ようやく納得。
ショートソードが欲しかったら言ってくれれば俺が買ってあげたのに。」
「棒があるから大丈夫。試してみたら軽くて使いやすかったから。
だよね?」
「そうだな。強度もあるし軽くて扱いやすいから殺傷能力はないけど防衛にはいいと思った。」
「そうだな。軽いから振り回されることもないし、俺も攻撃より防御に向いていると感じた。
金属製のショートソードならもっと慣れるまでに時間がかかったと思う。」
ルシカとゲオーグに同意を求めるように聞いてみたら、ルシカとゲオーグも使いやすかったみたい。良かった。
「へ〜、それは俺も触ってみたい。」
「うん、いいよ。」
ご飯を食べてすぐには動けないから、少しみんなと話をして過ごしていると、冒険者のような格好をした背の高い女の人がこっちに歩いてきた。
「イスパーダ様、持ってきましたよ。伝言、本当に伝言と思えないくらい長くて、書き写すの大変だったんですからね。報酬は執事に預けました。」
「あぁ、すまん。伝言は彼らに渡してあげて。」
「シュペアというのは誰?」
「僕です。」
「これ、君の分ね。」
「ありがとう。」
「ルシカというのは?」
「俺です。」
「これ、君の分ね。」
「俺の分もあるのか。ありがとう。」
「で、最後にゲオーグってのは君?」
「はい。」
「これ、君の分ね。」
「あぁ、ありがとう。」
領主様からの伝言がこんなに多いと思ってなかったし、3人それぞれにあるなんて思わなかった。
「伝言がこんなにたくさんあるなんて知らなくて、大変だったよね?ありがとう。」
「何この子、可愛い〜」
僕は椅子に座ってたのに、その女の人に軽々と持ち上げられて抱きしめられた。
ハーブルの髭が生えたお姉さん?を思い出して少し怖くなった。
「やめろ。シュペアが怖がっている。」
「残念。」
イスパーダが女の人に言うと、僕は下ろしてもらえた。
「僕、何歳なの?」
「僕は12歳です。」
「あらそうなの?もっと幼いのかと思った。」
「え?」
「12歳にしては背が低いわね。8歳か9歳くらいに見えたわ。」
僕、小さいんだ。なんかちょっと悲しい。
早く大きくなりたいのに。
今まで周りに子供がいなかったから、気付かなかった。僕は子供だから小さいんだと思ってたけど、子供の中でも更に小さいんだ・・・。
そっか、そうなんだ・・・。
「大丈夫だ。今は小さくてもちゃんと大きくなるから。シュペアはまだ成長途中なんだから気にすることはない。」
「うん・・・。」
ゲオーグが励ましてくれたけど、僕は小さいという事実を知ってショックだった。
「お前は余計なことを・・・。こんな幼気な子を傷つけて。もう帰れ。」
「はーい。ごめんね、そんなショック受けると思わなくて。大丈夫よ。すぐに大きくなるから。」
女の人は僕の頭をポンポンってしてから去って行った。
ショックだけど、どうすることもできない。魔術で大きくなれたらいいのにな。




