88. イスパーダの正体
「・・・ギルマスに頼みがある。」
「なんだ?俺にできることか?」
「あのタイガーを倒したのが俺らだと明かさないで欲しい。依頼主が会いたいと言っても断ってくれ。」
「なんでだ?英雄になれるぞ?」
「俺らはそのせいで貴族に狙われて逃げたことがある。ラジリエンではないが。」
「僕も、目立つのは困る。みんなに心配かけたり、迷惑かけたくないから。」
「そうか。そっちの危険もあるのか。なるほどな〜
分かった。君らの頼みだ。そこは俺が何とかしよう。」
「イスパーダありがとう。」
「シュペアを危険な目に遭わせたくないしな。
ラジリエンで何か困ったことがあったら俺を頼れ。一応俺、ちょっと偉い人だから。」
「そうなんだ。凄い。」
「シュペアは良い子だな〜
よし、お兄さんがフルーツが美味しいお店に連れていってあげるよ。」
「え?」
「もちろんゲオーグとルシカも一緒にな。」
僕は困ってルシカとゲオーグを見たけど、2人も困ってるみたいだった。
「今日はもう仕事は終わり。さぁ行くぞ。」
「う、うん。」
僕たちはギルドの裏口から出て、イスパーダに付いていった。
「ここ?」
「あぁここだ。」
なんか豪華なお店で、ちょっと不安になった。
大丈夫かな?
イスパーダは店に入って、当たり前のようにどんどん先に進んでいく。
「ルシカ、本当に付いて行って大丈夫か?」
「分からない。なんか断れない圧があった。」
「僕もちょっと不安。」
「武器はある。切り札の騎士団の身分を明かしても無理なら、最悪報酬は諦めて逃げるぞ。」
「そうだな。」
「分かった。」
イスパーダは個室に入ると、丸いテーブルの1番奥に座った。
「君らも適当に座りな〜」
「分かった。」
僕たちも席に座った。
「君らはエール?シュペアはジュースでいい?」
「うん。」
「それでいい。」
イスパーダが手元のベルを鳴らすと、女の人が入ってきた。
「エール3つと、おすすめのジュース1つ、シュラスコの盛り合わせとフルーツ盛り合わせ、適当にパンとスープとおすすめの野菜料理を見繕ってくれ。」
「畏まりました。」
なんか頼み方が格好いい。
よく来るお店なのかな?
飲み物はすぐに出てきたけど、なんか怖くて手を付けられない。
ルシカとゲオーグを見ると、2人も同じだった。
「そう構えるな。ここに他の貴族を呼ぼうとか思ってないし、君たちをどうにかしようとも思ってない。
まぁ、狙われたことがあるなら警戒するのは仕方ないか。
うーん、どうしたら警戒解いてくれるかな〜?」
「「「・・・。」」」
なんかよく分からないけど、ますます不安になってきた。
「身分明かしてもいいけど、そうすると君たちもっと警戒しそうだしな〜」
イスパーダは身分のある人なんだ・・・。
やっぱり僕たち狙われてるのかな?
「俺らをここに連れて来た目的は何だ?」
「そんなの決まってるじゃん。シュペアに癒されながらご飯食べたかったからだよ。」
「え?」
「俺の仕事知ってる?
毎日書類の整理して、変な依頼してくる奴と話して、面倒起こす奴と話して、受付や職員に絡む奴を追い払って、冒険者同士の喧嘩を仲裁して、疲れんのよ〜
俺だってたまには癒されたいじゃん。」
「身分があるなら、女性などに癒して貰えばいいのでは?」
「飽きた。あいつらは打算ばっかで癒されない。良い顔して寄ってくるが、腹の中は何考えてるのか分かったもんじゃないからな。」
「そ、そうですか・・・。」
「その点、シュペアは良い子だからな〜
頭も良さそうだし、たぶん見た目も整っているんだろう。フードを取らないのはそのせいなんだろ?
俺も可愛いシュペアが見たい。ルシカとゲオーグだけ見てるなんてズルい。」
どうしよう・・・。
僕は困ってルシカとゲオーグを見たけど、2人もやっぱり困ってた。
「俺、ラジリエンの現王の弟なの。
だから、別に強い冒険者とか、囲う必要無いの。だから君たちを狙う必要もない。
どう?警戒解く気になった?」
「「「・・・エエェェェェェェ!」」」
僕たちは慌てて椅子から降りて、膝をついて頭を下げた。
「そんなことしなくて良いよ。そんなこと望んでない。言葉遣いとかも普通にしてて。そんなことされると俺も悲しいし。
不敬罪なんかしないから。」
「分かった。」
僕たちは恐る恐る立ち上がって、椅子に座った。
さすがに王家の人の前でフードを被ったままとか、姿を偽るのはいけないと思って、僕は目の色を変える魔術を解除してフードを取った。
「あぁ、それは狙われるね。
シュペア、ちょっとこっち来て。」
「うん。」
僕に拒否権なんて無い。椅子から立ち上がって、イスパーダのところに行った。
「可愛いな〜
まさか女の子じゃないよね?」
「うん。僕は男です。」
イスパーダは僕を抱き上げて、自分の膝の上に乗せた。
そしてずっと僕の頭を撫でてる。
「うわぁ〜髪もふわふわだ〜」
僕はどうしたら良いのか戸惑ってると、料理が運ばれてきた。
どんどんテーブルに豪華に盛り付けられた料理が並べられていく。
「凄い。」
「そうだろ〜?全部食べていいからな〜」
お店の人が部屋を出ていくと、イスパーダはジョッキに入ったエールをゴクゴク飲んだ。
「君たちも飲みなよ。そして食べなよ。」
「い、いただきます。」
「いただきます。」
「シュペアは俺が食べさせてあげるよ。どれがいい〜?」
「僕、自分で食べれます。」
「そっか。残念。
シュペアをあまり困らせてもいけないな。席に戻っていいよ。好きなもの食べな。」
「うん。ありがとう。」
僕は席に戻ると、橙色のジュースを少し飲んだ。
「美味しい。これはマンゴー?」
「そうだね。美味しかった?それは良かった。」
イスパーダはニコニコしてる。
僕が好きなモチモチしたパンを食べて、シュラスコって呼ばれてたお肉も食べた。
「ルシカ、ゲオーグ、これ美味しいね。」
「そうだな。」
「あぁ。」
フルーツの盛り合わせは、可愛い形にカットしてあって、綺麗に盛り付けられてた。
「ゲオーグ、このフルーツの盛り合わせ、綺麗だね。」
「あぁ。これは綺麗だな。」
ゲオーグが嬉しそうに言った。
「ふむ、このパーティーは癒し系が2人もいるのか。面白いな。」




