87. イスパーダとの出会い
「シュペア、目立つと思うから街に近づいたら認識阻害をかけておけ。」
「分かった。」
僕はペッケーノの街まであと1キロくらいのところで認識阻害の結界をかけた。
荷車のままギルドに入ることはできないから、大型魔獣専用の入り口まで行って、ゲオーグに下ろしてもらった。
依頼書を見せると、職員さんは上に確認するって言って奥に行っちゃった。
さっきの職員さんが、薄いグリーンのサラサラな髪でルシカみたいな体型をした、不機嫌な表情の男の人を連れて戻ってきた。
その人は3体のタイガーを色んな角度から調べてた。
「依頼のグリーンタイガーは追加報酬が出ると思う。
とりあえず依頼達成として金貨1枚渡すが、追加報酬と、ホワイトタイガーの査定は明日まで待ってほしい。」
「分かった。」
「すまないな。君たちは見かけない顔だ、旅の途中だろう。先を急ぐか?」
「この街に長居する気はないが、急いでいるわけではない。」
「そうか。
俺はペッケーノのギルドマスター、イスパーダだ。
参考までに話を聞くことは可能か?もちろん他言はしない。君たちを取り込んだりもしない。」
「どうする?」
「僕はいいよ。」
「秘密は守ってもらうぞ。」
「あぁ、勿論だ。」
「それなら。」
僕たちは裏口から、ギルドマスターの部屋に通された。
「まぁ、座ってくれ。」
僕はギルドの前から、認識阻害を解いてフードを被って目の色を変えている。
僕を真ん中にして左右にルシカとゲオーグが座った。
ギルドマスターのイスパーダは向かいに座った。
「名前を聞いてもいいか?」
「ゲオーグだ。」
「ルシカだ。」
「シュペアです。」
「シュペアは、子供か?子供の外見の大人か?」
「子供だ。」
僕の代わりにゲオーグが答えてくれた。
「そうか。左右の2人は強そうだが、子供を連れているのが珍しいと思ってな。」
「そうか。俺らは3人でパーティーを組んでいる。」
「まぁいい。深くは詮索しない。
ホワイトタイガー1体は、戦い慣れた強い戦士が毛皮に傷をつけないように倒したように見えた。
しかし、グリーンタイガーとホワイトタイガー1体は、首の血管の部分に血抜きをしたような跡があったが、どうやって倒したのかが分からなかった。」
言っていいのか分からなくて、僕はルシカを見て、ゲオーグを見た。
「魔術を使った。風の矢を口から脳に向けて何本か撃ち込んだんだ。」
ルシカが簡単に説明してくれた。
「なるほど、風の矢か。それで外傷が血抜きの跡だけに見えたんだな。
3人のうち誰かは分からないが、素晴らしい魔術の腕だな。
心配しなくても誰にも言わん。俺が個人的に、強い冒険者の話を聞いてみたかっただけだ。そう警戒するな。他意はない。」
「そうか。」
「君らはAランクなのか?」
「いや、パーティー内の最高ランクはBだ。」
「では、タイガーとの戦いに慣れているんだな。」
「・・・いや、慣れてはいない。」
「そうなのか?それにしては3体とも倒し方が綺麗だったな。
シュペアは左右のお兄さん達に戦い方を教えてもらっているのかい?」
「うん。そうなの。2人とも凄く強いから。僕も強くなれるよう頑張ってるの。」
「君の武器は槍か?」
「うん。」
「その歳で槍を持って戦うのは重くないか?」
「大丈夫。身体強化を使うから。」
「そうか。その歳で身体強化を使って戦えるなんて優秀だな。」
「身体強化を使わないと、まだ僕は力が弱いし足も遅いから・・・。」
「そうか。大丈夫だ。君ならすぐに大きくなって強くなるだろう。」
「うん。僕、頑張る。」
「はぁ〜、この子、癒されるわ〜
いつもむさ苦しい男や、生意気な奴ばっか相手にしてるからさ〜、君みたいな素直で真っ直ぐな子と話すと癒されるわ〜」
「・・・。」
急にイスパーダはさっきまでの不機嫌さがなくなって姿勢も崩れたから、僕はなんて言えばいいのか分からなくて困った。
「イスパーダは疲れてるの?」
「疲れてるよ〜、もう本当に疲れてるよ〜
あのグリーンタイガーの依頼も、最悪誰も受けないと思ってたし、だからと言って毛皮に傷が無いようになんて、難しいだろ〜?
受けてもらっても依頼失敗で減点になったら可哀想だから、気軽に受けてくれとも頼めないし。
そんな心配してたら、貼り出した次の日に受けたパーティーがいるって聞いて心配してたんだよ〜」
「そうだったんだ。」
「たまたま君たちがこの街にいてくれて良かったよ〜
本当はホワイトタイガーも同じ依頼を出したいって言われてたんだけど、ホワイトタイガー自体が貴重だから、断ったんだよ。
そしたらホワイトタイガーまで綺麗な状態で持ってきてくれたから、本当に助かった!
依頼主が高値付けると思うから、報酬は期待してくれ。」
「ホワイトタイガーの方が貴重なんだ?」
「そうだよ〜グリーンタイガーは1日か2日森を歩けば出会すけど、ホワイトタイガーは1ヶ月森を歩いても見つからないことが普通だからね〜」
「じゃあ僕たちは運が良かったんだね。」
「そうみたいだな。」
「あぁ。」
「俺の予想では違うけどな。運だけでホワイトタイガー2体は無理だ。君たちは探すのが上手いんだろうな〜
タイガーの生態に詳しいとか。」
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