81. 乗合馬車と護衛冒険者1/2
久々に宿に泊まって、ベッドでゆっくり寝ると、次の日は武器屋に行った。
おじさんにミスリルはあるか聞いてみたけど、無かった。
高いけど人気だから、たまに入荷してもすぐに売れちゃうんだって。
武器じゃなくて加工前のものが手に入るか聞いてみたら、ヴォルターではほとんど手に入らないけど、メタルという街の奥にある鉱山でたまに出るって教えてくれた。
次に向かう街が決まった。
冒険者ギルドに行って、メタルという街までの行き方を聞いたら、馬車で20日だと言われた。
すごく遠い・・・。
ルヴォンとグレルとは、また共闘しようねって約束して別れた。ルヴォンたちは、トルーキエを抜けてエトワーレに行ってみるって言ってた。
向こうで会えるといいな。
「じゃあまたね〜」
「これ、ありがとう。」
「うん。またね。」
トレントの模擬戦用の棒を2人にあげたら、喜んで受け取ってくれた。
ずっと一緒だったからちょっと寂しいけど、きっとまた会える。そんな予感がした。
「メタルまでどうやって行こう?」
「護衛依頼を受けてもいいけど、この前のことがあるから迷うな。」
「乗合馬車と歩きで向かって、途中の街でちょっとした討伐でも受けるか。
ミスリルを買うなら稼いでおいた方がいいだろう。」
「そうだな。そうしよっか。」
「うん。僕もそれでいいよ。」
乗合馬車か。見たことはあるけど乗ったことはない。
僕はフードを深く被って、目の色を茶色にした。
「僕、乗合馬車って初めて乗るんだけど、どうやって乗るの?」
「そっか。シュペアは初めてなのか。」
「これから乗る馬車は隣街のオハまで行くんだが、最初にお金を払って乗るんだ。銅貨5枚だ。
席は早い者勝ちだな。馬車がいっぱいになったら出発するんだ。」
ゲオーグが詳しく教えてくれた。
確か、エトワーレにも王都からクンストやタッシェまで行ける馬車があった。
今度乗ってみようかな。
「隣街のオハ行きだよー。
1人銅貨5枚だよ。乗る人はいないかー?」
あ、あの馬車だ。
僕たちは乗る人の列に並んで、御者さんに銅貨5枚を払って乗り込んだ。
トレントの棒は、街で紐を買って縛ったけど、邪魔になるから、1番後ろの席に座った。
馬車はそんなに時間がかからないうちにいっぱいになって、出発した。
乗合馬車には、15歳の成人を過ぎて少ししたくらいの冒険者の人が4人護衛についてた。
僕は目立たないように大人しくしておこう。
でも、索敵してないと不安だから、索敵は5キロくらい薄く広げて、同時に魔力循環もしてる。
索敵を知らない頃は、なくても全然平気だったのに、知ってしまうと使わずにいるのが怖い。
僕はルシカとゲオーグの間に座った。
馬車の席はちょっと高くて、僕の足は床に届かない。
早く大きくなりたいな。
あ、索敵に何か引っかかった。
ゴブリンかな?ちょっと多い。20匹くらいいる。
「ルシカ、ゲオーグ、5キロ先にゴブリンが20匹いる。上位種はいないと思う。」
「護衛が劣勢にならなければ見守ろう。」
「そうだな。4人いるし大丈夫だろう。」
「教えなくていい?」
「広範囲に索敵が使えると知れるのも、どこで噂が広がるか分からないからな。やめておこう。」
「ゴブリンなら目視できてから気付いても大丈夫だろう。」
「そっか。分かった。」
そうなんだ。索敵を広範囲に使える人って少ないんだ。中隊の人は練習して広く使える人もたくさんいたけど、みんな凄い人だったんだ。
冒険者の人は、索敵を使ってないみたいだった。1キロまで近づいても動かなくて、目で見える距離になると、馬車を停めて4人とも走って行った。
馬車を守る人、残していかないんだ?
「ルシカ、ゲオーグ、護衛の人みんな行っちゃって馬車を守る人いないけど、これが普通?」
「いや、だいたい1人は残して行くんだけど、護衛の経験が少ないのかもしれない。」
「そうだな。他から敵が来ないとも限らないし、敵がすり抜けて馬車まで来ないとも限らないからな。今回は数が多いから、彼らが上位ランクでなければすり抜けてくるだろう。」
ゲオーグが言っていた通り、ゴブリンがすり抜けて、こっちに1匹走ってきた。
冒険者の人が、そのゴブリンに向かってナイフを投擲したけど、当たらなかった。
何回か投擲したけど、全部外れてた。
どうするんだろうと思って見ていると、御者さんが槍を突き刺して倒してた。
馬車のお客さんは、みんな不安そうだったけど、その御者さんの姿を見て、拍手が起きた。
「御者さん凄い。戦える御者さんって格好いいね。」
「あぁ。」
「そうだな。」
冒険者の人たちは、まだ戦ってる。
遅いな。ルシカやゲオーグなら、もう穴掘って埋めてるくらい時間がかかってる。
でも、護衛はあの人たちの仕事だから、取っちゃいけない。
結構時間がかかって、冒険者の人たちが戻ってきたけど、御者さんに怒られてる。
全員で馬車を離れるなって怒られて、ゴブリンをただ倒しただけで戻ってきたから、穴を掘って埋めろって怒られてた。
それで慌てて冒険者の人たちはゴブリンのところまで戻って、穴を掘ってた。
20匹を埋めるための穴を掘らなきゃいけないから、またかなり待たされた。
疲れた感じの冒険者の人が戻ってくると、やっと馬車は動き出した。
「ルシカ、ゲオーグ、護衛はBランク以上の人が1人はいないといけないんじゃないの?」
「それは貴族や商人の護衛だな。乗合馬車の場合は場所によってはDランクやCランクでも受けられるんだ。」
「例えば、クンストから王都はほとんど魔獣がいないし、盗賊も出ない。そういうところは、パーティーメンバーの最高ランクがDでも受けられたりする。
そんな安全なところは専属の護衛を雇っているから、冒険者が護衛することは少ないな。」
「そうなんだ。じゃあこの街道も安全ってこと?」
「ゴブリンが20匹も出てくるところが安全かは分からないけど、御者が強いから、ランクが低くても受けられるようにしているのかもしれない。」
「それはあるだろうな。あの御者、かなり強いだろう。」




