80. トレントの棒と誕生日
「トレント、全部は要らないよね?」
「そうだな。できれば棒状に何本か切って持っていければいいが・・・。」
模擬戦用の木の棒として使うのもいいかも。
それなら全員分。5本と、あと僕の槍用。ルシカとゲオーグの武器にも使うかな?
風の刃を使えば切れそうな気がする。
「ちょっとやってみる。危ないから近付かないでね。」
「あぁ。」
僕は倒れたトレントの真ん中辺りまで行って、風の刃でスパッと切った。
長さは、僕の槍を目安にあとで調整できるようちょっと長めに切った。
太さも僕の槍を目安にちょっと太めに切った。
棒は多めに20本作ったけど、切り口が四角い・・・。
丸くしないと持った時に痛いし、どうやって丸くすればいいんだろう?
風の刃でちょっとずつ削っていく?
ちょっとやってみよう。
うーん・・・時間がかかりすぎる。
ザラザラの荒い石を作って削る?
やってみよう。
うーん、これも時間がかかりすぎる。
それに表面がザラザラになった。
表面だけ焼いて丸くする?そんなことできるのかな?
とりあえずやってみよう。
うわぁ、
凄い火柱が上がったから、慌てて水をかけたけど、その1本は真っ黒になって、持とうとしたら崩れた。
ダメだ、良い方法が思い浮かばない・・・。
地道に風の刃で削っていくのが1番良いのかも。
でも今はみんなを待たせてるから、とりあえずこの19本を持って戻ろう。
「切って棒にしたんだけど、直ぐには丸くできなかった・・・。」
「いや〜シュペア、凄いよ〜
トレントは生きてる時は普通の木と同じ硬さだから斧とかで切り倒せるんだけど〜
倒した後は硬くなっちゃうから、鉄の武器じゃ切れないんだよね〜」
「え?そうなの?気付かなかった。魔術だから切れたのかな?」
「いや、俺は前に魔術師が倒れたトレントに魔術を向けているところを見たことがあるが、その時は傷一つ付いていなかった。」
「そうそう。だからシュペアは凄いって言ったの〜」
「そうなんだ・・・。その人たちはどうやって持って帰ったの?」
「みんなで担いで運んだよ〜
倒した後は硬くなるけど軽くもなるからね〜」
「あ、確かに軽い。普通の木だったら重力操作かけないと、僕1人では運べなかったかも。」
「シュペア、それ全部持っていくのか?」
「うーん、どうしよう。さっき1本失敗しちゃったし、また失敗するかもしれないから、多めに持っていきたいけど・・・。」
「そんなに失敗するか?」
「模擬戦の時の棒にも使えるかなって思って。ルシカの槍とかゲオーグの斧にも使えるかなって。」
「そっか。シュペアがその数を持って運べるくらい軽いなら、分けて持てばいいか。」
「大丈夫。僕が全部持つから。」
みんなに面倒かけたくない。
「シュペア、俺らは仲間だから、楽しいのも苦しいのも全部分け合うんだ。1人で頑張らなくていい。」
「うん。ありがとうゲオーグ。」
「そうだぞ。仲間はいつも一緒に協力するんだ。協力して乗り越えるのが仲間だからな。」
「うん。ありがとうルシカ。」
「俺らも持とう。」
「そうだね〜僕らにも模擬戦用の棒くれる〜?」
「うん。もちろんいいよ。みんなありがとう。」
みんな優しい。何でそんなに優しいんだろう?
僕もみんなみたいな優しくて強い大人になりたい。
そこから3日、僕はルシカとゲオーグが投擲の練習をしてる時とか、交代で見張りをしてる時とか、時間がある時にトレントの棒を地道に風の魔術で少しずつ削っている。
「あ、」
「シュペア、どうした?」
「今日、7月12日?」
「そうだな。」
「そっか。ふふふ。」
「なんだ?何か良いことでもあったか?」
「僕、12歳になった。ちょっと大人に近づいたから嬉しい。」
「おぉーそうかー、おめでとう!」
「シュペアおめでとう。」
「何〜?何がおめでとうなの〜?」
ルシカとゲオーグが大きい声でおめでとうって言うから、ルヴォンとグレルもこっちに来た。
「シュペアが12歳になったんだ。」
「お〜それはおめでとう〜」
「シュペアおめでとう。」
「みんなありがとう。」
「久しぶりに街に行って美味しいもの食べようよ〜」
「そうだな。」
「たぶんここだとヴォルターが近いと思うけど〜、アスカルからは離れてるから大丈夫だと思う〜」
「どれくらい離れてるの?」
「馬車で5日くらいかな〜」
「じゃあ大丈夫かな?念のため街では攻撃防御の結界かけておくね。」
「助かる〜」
「いつもありがとうな。」
グレルが優しく微笑んで、大きな手で僕の頭を撫でてくれた。
2日かけて森を出てヴォルターの街に行くと、みんなに結界をかけて、僕はローブのフードを被って目の色を変えた。
「シュペアは何食べたい?」
「僕はケーキが食べたい。」
「じゃあまずはケーキ屋だね〜
せっかくだから色んな店で食べたいね〜」
そう言ったルヴォンの言葉で、僕たちはケーキ屋さんを梯子することになった。
「僕、もう食べれないかも・・・。」
「俺も、甘いものはもう無理だ。串焼き肉が食べたい。」
5軒目のケーキ屋さんを出ると、僕はお腹がいっぱいだった。
グレルも、もうケーキ食べれないって言ってる。でもお肉なら食べれるんだ?不思議。
露店や商店を見て回ったけど、重力操作の鞄も水が出る筒も無かった。
また急に森に長期入ることになるかもしれないから、僕は旅行用の硬いパンと干し肉を買った。
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