79. トレント
それから3日ほど森の中を歩き回ったけど、まだトレントには出会えていない。
「トレント、いないね・・・。」
「夏は多くなるはずなんだけどね〜」
「暑いな。暑さもだが湿気がキツいな。」
「休憩するか?」
「そうだな。」
僕はみんなのコップに水を注いで、その後にそれぞれのコップに氷を浮かべた。
「ありがとう。冷たい水が飲めるのは本当にありがたいな。」
「だよね〜水筒の水だと、すぐに温くなっちゃうし〜何日も森で過ごそうと思うと川とか見つけないと厳しいよね〜」
「水が出る筒は?」
「何それ〜水筒じゃなくて〜?」
「筒にボタンがついてて、そこを押すと水が出るの。水の魔術が付与された魔道具だよ。」
「そんなのあるの〜?凄い便利じゃ〜ん。」
「俺も探したけどラジリエンでは売ってなかった。」
「あれもエトワーレで作ってるのかもしれないな。」
「エトワーレって魔術の研究が盛んなの〜?」
「どうだろう?僕はエトワーレのことあんまり知らないかも。フェルゼン領と王都と、トルーキエに続く街道しか知らないから・・・。」
「俺も似たようなものだ。」
「俺は他にも色々行ったけど、魔術のことは分からないなー。」
「グレル〜、エトワーレに行ったら魔道具色々見たいね〜」
「そうだな。」
「ん?なんだ?ルシカ。」
「え?何?」
「さっき肩叩いたろ?」
「俺じゃないよ?」
「そうか。シュペアか?」
「え?僕も叩いてないよ。」
「俺の気のせいか?」
ゲオーグが首を傾げて困った顔をしてた。
「なんだ?ルヴォン。」
「何〜?」
「お前、また俺に悪戯したか?」
「してないよ〜」
「背中に何か付けたろ?」
「いや、マジで今日は何にもしてないし〜」
「怪しいな。」
「何で〜?本当に何にもしてないよ〜」
何かおかしい気がする。
でも索敵には何も反応がない。
ん?
僕は背後に何かいるのに気づいて振り返ると、木の枝が僕に向かって伸びてきてた。
僕は咄嗟に腰につけてたナイフで枝を払った。
「どうした?」
「僕に向かって枝が伸びてきたから。」
「構えろ!トレントだ!」
そうグレルが言うと同時に、枝が一斉に僕たちに向かって攻撃を仕掛けてきた。
どれが本体か分からない。伸びてくる枝には対処できるけど、周りの木は全部同じ木に見えるし、伸びてきた枝を辿っていくけど、辿っているとすぐにその枝を引っ込めて、別の枝が攻撃してくるから、本体がどれか全然分からない。
風の刃で周りの木、全部切り倒す?
うーん、それは上手くやらないと変な方向に倒れて危ないかも。
あ、地面の盛り上がりだ。前にルヴォンが言ってた。トレントの形跡。
どれだろう?枝の攻撃を交わしながら探すけど、なかなか見つからない。
手前の木じゃなくて、後ろに隠れてる木なのかも。
あ、これかな?地面が少し掘り起こされたような跡が見えた。
僕は、その直径が40センチくらいある木を、風の刃で根本からスパッと切った。
これじゃないかもしれないけど、違ったらまた探せばいい。
切ると、枝の攻撃が止まって、木は向こうに向かって倒れていった。
合ってたみたい。
ドゴーン
あ、風の魔術で包んでゆっくり倒せばよかった・・・。
倒れた方向にあった細い木が折れたり薙ぎ倒されたりしてた。
「シュペア、大丈夫か?」
「うん。」
枝の攻撃が止んで木が倒れたから、みんなが集まってきた。
「これ、魔術で切ったの〜?凄い綺麗な切り口だね〜シュペアってもしかして、僕らより強い?」
「そんなことないと思う。切ったのは風の魔術で切ったんだけど、僕はまだ力も弱いし。」
「この太さのトレントさ〜、グレルの大剣でも1回じゃ切り倒せなくな〜い?」
「厳しいだろうな。3回か、4回か、それくらいは切り付けないと無理だな。」
そうなんだ。でも僕があの大剣を振るうなんてできないだろうし。グレルの方が凄い。
「だよね〜
僕のミドルソードじゃ切り倒すなんて無理だし〜
ゲオーグの斧なら切り倒すことができそうだけど〜、でも1回じゃ無理だよね〜?」
「無理だな。俺の斧なら、5〜6回かそれくらいはかかると思う。」
そっか。木を切り倒すのって武器でやると大変なんだ。




