78. 狙われたシュペア
「「「かんぱーい」」」
みんなエールを頼んでた。僕はまたパインジュース。
みんな美味しそうに飲んでるから、僕も大人になったらエールってのを飲んでみたい。
お肉を焼いたのはエールに合うんだって。
僕はモチモチのパンが好き。
お魚とエビをトマトとココナッツミルクで煮たやつも美味しかった。
お魚とエビは、領主様の結婚のお披露目会で食べたんだけど、それ以降は見かけなかったから、久しぶりに食べた。
ん?なんか嫌な感じがした。
でもこんなところに魔獣はいないはず。
「シュペア、どうした?」
「ん、俺らに敵意を向けてる奴がいるな。」
グレルには何か分かったみたい。
「それ、かな?嫌な感じがしたの。」
敵意。人の嫌な感情。
少し、僕が村で感じてた視線に似てる。
嫌だな。村のことなんて思い出したくないのに。
大丈夫。みんながいるから。みんな強いし。
大切だって言ってくれる人がいるから。
僕はもっと強くなりたい。
戦う強さだけじゃなくて、怖い時に涙が出ないように・・・
怖い時に、震えないように・・・
強くなりたい。
少し指先が震える手を、ギュッと握って机の下に隠した。
「シュペア、もう宿に帰ろう。」
「あぁ、帰ろう。」
「うん。」
「そうだね〜、危ないかもしれないから僕らも宿まで付いて行くよ〜」
「そうだな。」
危ない?
あ・・・そういえば前にルシカが言ってた。
魔獣より人が危ないって、人を攫って売って嫌なことするって。
盗賊みたいに人を殺す人もいるし。盗賊って街道に出るんだと思ってたけど、街にもいるのかな?
攻撃に対する結界、みんなにかけておこう。
みんな強いから大丈夫だと思うけど、誰にも怪我してほしくない。
お店を出ると、僕を囲むようにみんなが歩いてくれた。
みんな距離が近いから、ちゃんとみんなの分の結界をかけることができた。
キン、キン、キン、キン、
カランカラカンカンカンカン
何かが結界に阻まれて、地面に落ちて転がった。
細い矢みたいな、針みたいな10センチくらいの金属の棒に見えた。
「え?」
「このまま宿まで走ろう。」
宿までみんなで走った。
敵は出てこなかった。
宿に入ると、部屋にみんなで行った。
「シュペア何かしてた〜?結界とか〜」
「うん。お店を出る時に、攻撃に対する結界をみんなにかけたの。」
「そんなこともできるのか。」
「シュペアは凄いね〜
今回はマジで、それで助かったと思う〜」
「そうだな。針は4本だった。恐らく邪魔な俺らを毒針で殺すか、麻痺毒で戦闘不能にしてシュペアを攫う算段だったんだろう。」
「毒の針・・・。」
そんなものがあるんだ・・・。しかも、刺さったら死んじゃうこともあるの?怖い。
食べたら死んじゃったり、お腹が痛くなったりする草とか、きのことか実があるのは知ってるけど、毒って攻撃にも使うことがあるんだ・・・。
「ブルーサーペントを運んでいる時にシュペアに目を付けたのか・・・。」
「その時に俺ら4人の特徴も覚えていたのかもしれない。街では見えなくても、店でシュペアを見かけて狙ったということか・・・。」
「それにしても、いきなり僕らの命狙うなんて〜過激すぎるよね〜」
「あぁ、雇われたゴロツキに囲まれることはあっても、いきなり死角から針は初めてだ。
初めてで防ぐこともできなかった。シュペア、助かった。ありがとう。」
「みんなに結界かけてて良かった。」
「シュペア、ありがとう。」
「ありがとう。」
「ありがとう〜」
「僕らがAランクだって知ってて〜、ゴロツキじゃ太刀打ちできないと思ったから針なのかも〜」
「その可能性はあるな。」
「俺らは夜明け前にこの街を出ようと思う。ルヴォンたちはどうする?」
「ん〜僕らも行く〜あの針みたいな攻撃されたら、僕らだけじゃ死ぬと思うし〜
全身金属鎧でも着てたら平気かもしれないけど、そんなの着る気ないしね〜」
「とりあえず森の奥まで進んで、地道にトレントでも探すか。」
「そうだな。」
「いいの?」
「あぁ、そのためにラジリエンに来たんだしな。」
「うん。僕のせいでごめんなさい・・・。面倒かけてごめんなさい・・・。」
「何言ってるんだ?シュペアは何も悪くない。俺らは仲間だろ?」
「そうだぞ。」
もう面倒かけるから僕は要らないって言われるのかと思って怖かったけど、ゲオーグはまだ僕のこと仲間だって言ってくれて、ルシカもそうだぞって言ってくれた。
「俺たちがついてるから大丈夫だからな。」
ゲオーグは、涙が溢れちゃった僕を抱きしめてくれた。
「どちらかと言うと、俺らのがシュペアに守ってもらってる気もするけど、シュペアを1人になんてしないから心配するな。」
ルシカも僕を抱きしめてくれた。
「なんか感動シーンに出逢っちゃったね〜」
「そうだな。」
「ルヴォンたちは宿はどうするんだ?」
「グレル〜宿っていつまでとってたんだっけ〜?」
「明日までだ。」
「今、不用意に外に出て針で殺されるのも嫌だし〜ここに泊めてよ〜
僕ら床で寝るからさ〜」
「それは構わないけど、いいのか?部屋が空いてるか女将さんに聞いてこようか?」
「ここでいい〜グレルもいいでしょ〜?」
「あぁ、ここでいい。」
「ベッドくっつけて5人で寝ようよ。」
「シュペア、それは無理だと思う・・・。みんながシュペアと同じくらい小さければいいけど、ゲオーグとグレルは特に大きいし。」
「そっか。」
「そうだよ〜シュペアは気にせずベッドで寝な〜」
「男と密着して寝るのはキツイな・・・。俺は床で寝る。」
グレルはそのまま横になって寝始めた。
ルヴォンも、その横に寝転んだ。
仕方なく僕たちもベッドに入って寝た。
夜明け前、僕はみんなに認識阻害と攻撃の結界をかけて、みんなで森に向かった。
森に入ってしばらくすると、結界を解いた。
索敵を街の方まで広げてみたけど、追ってくる人はいなかった。
「誰も追ってきてないみたい。」
「それは良かった〜シュペアは本当に凄いね〜」
「結界を自分以外にかけられることも、隠密のようなことができるのも今回初めて知った。」
「僕も自分以外にかけるのは、できるようになったばかりだから、まだあんまり自信がないの。」
「魔力は大丈夫か?」
「大丈夫。このあと魔力循環して回復させるから。」
「そうか。無理するなよ。」
ゲオーグは僕の頭を、大きな手で優しく撫でてくれた。
温かいのが伝わってきて、僕はホッとした。
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