69. その頃のシュペアたち
「サイクロプスには気付かれることなく通り過ぎることができたみたい。」
「結界って凄いんだな。」
「あぁ、凄い。シュペアは凄いな。」
「この方向でいいか分からないけど、とにかく森の奥に進んでいくね。」
「あぁ。それでいい。」
僕たちは森の奥へと進んでいった。
「もうすぐお昼かな?」
「だな。休憩するか?」
「そろそろ結界を解いてもいいんじゃないか?夜中からずっとだ、シュペアへの負担が心配だ。」
岩がたくさんある場所で岩陰に隠れて、僕は結界を解いた。
念のため索敵を10キロまで広げてみたけど、人はいなかった。危険度が高そうな魔獣もいなかった。
「シュペア、大丈夫か?」
「うん。今は結界解除して索敵を10キロまで広げてみたんだけど、人はいなかった。
危険度が高そうな魔獣もいなかったよ。」
「そうか。俺らが見張りをしておくから、シュペアは索敵も解除してしばらく寝ておけ。」
「うん。分かった。ありがとう。コップに水だけ出しておくね。」
僕は3人分のコップに水を並々と注いで、自分の分を飲むと、岩にもたれて少し眠ることにした。
「シュペアのおかげで最初の危機は脱したけど、国境を越えるまでは油断できない。」
「そうだな。それもそうだが、シュペアが心配だ。かなり魔力を使ったんじゃないか?」
「無理してそうな気はする。」
「周囲10キロにいないなら、夜までは大丈夫だな。朝までは、分からんが・・・。
連日徹夜で捜索したとしても、こんな森の奥までは入ってこないと思うが。」
「だな。俺らも交代で休もう。ゲオーグ、先に休んでいいぞ。」
「分かった。先に休ませでもらう。」
ゲオーグも、岩にもたれて目を閉じた。
数時間後にルシカと交代すると、ルシカは低い岩の上に突っ伏して目を閉じた。
「変わってんな・・・。」
小さな声で呟いたゲオーグの独り言は、静かに森の中へ消えた。
日が傾き始めた頃、ルシカが起きた。
「起きたか?シュペアはまだ寝ている。」
「前にもこんなことあったよな?魔力を多く使うとよく寝るのかもしれない。」
「少し進むか?」
「だな。もう少し進んでから夜を迎えたい。」
ゲオーグはシュペアを背負い、ルシカはゲオーグの斧とシュペアの槍を持って、森の中を進み始めた。
「この辺は魔獣が少ないけど、夕飯にするならあと2匹くらいほしい。」
ホーンラビットを仕留めながらルシカが言った。
「そうだな。去年のグリフォンの影響かもしれん。
それより、シュペアが起きないことを考えて水を確保したいな。」
「確かに。でも、それは難しい・・・。」
「こういう時のためにも、水筒か水が出る筒の魔道具はあった方がいいな。」
「確かに。ラジリエンに入ったら買おう。」
辺りはもうかなり暗くなっている。
「松明を焚いて進むか、ここで野営するか迷いどころだなー」
「もう少し進みたい。」
「あれ?雨?」
「ダメだな。雨宿りできる場所まで移動して、今日はそこで夜を明かすか。」
「ちょっと周り見てくるから待ってて。」
「あぁ。」
しばらくするとルシカは戻ってきた。
「ゲオーグ、いいところ見つけた。小さな洞窟があった。
まぁ洞窟って言っていいか分からないくらい浅かったけど。」
「そこに行こう。」
「確かに洞窟というには浅いが広さは十分だな。」
ルシカに続いてしばらく進むと、そこには奥行きも幅も高さも3メートルほどの洞窟というか窪みがあった。
「雨水を貯めておこう。」
「そうだな。鍋と、大きめの葉を編むか。」
「これは、シュペアはしばらく起きないだろうな。」
「だろうね。朝には起きてくれるといいんだけど・・・。」
ルシカとゲオーグはホーンラビットを捌いて焼いて、それを夕食とした。
「なかなかハードな1日だった。魔獣を相手にするよりも疲れた気がする。」
「そうだな。追われるというのはこんなに疲れるものなんだな。」
「雨、強くなってきたぞ。朝には止むのか?」
「どうだろうな?小雨ならいいが、これだけ激しい雨だと先に進めないな。」
結局、翌朝になっても滝のような激しい雨は続いており、水の確保はできたものの、先には進めそうになかった。
「追っ手も来ないだろうけど、俺らも進めないのは困る。」
「何日もこんなに激しい雨が続くことはないだろう。」
そう予想したゲオーグだったが、激しい雨はその後も丸3日続いた。
「凄い雨。ここは浅い洞窟?
僕、ここまで歩いてきた記憶がないんだけど・・・。」
激しい雨が続く中、洞窟暮らし2日目の夕方にシュペアは目を覚ました。
「あぁ、シュペアは寝ていたからな。」
「またゲオーグがおんぶしてくれたの?」
「あぁ。」
「ありがとう。」
こんな激しい雨の中で捜索活動は行われないと思ったけど、僕は索敵を15キロほど広げた。
何にもいない。魔獣も雨だといなくなるんだ。
「15キロくらい索敵してみたけど、何にもいなかったよ。」
「そうか。じゃあこのまま、ここで雨が上がるのを待とう。」
「あぁ。」
それから2日後の朝、ようやく雨が上がると、僕たちは洞窟を出て森を進み始めた。
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