64. 旅立ち、トルーキエ王国ハーブルの街
「シュペアもう行っちゃうの?」
「寂しいな。」
「だな。」
「僕、もっと強くなって戻ってくるね。」
「あぁ、気を付けて行っておいで。」
領主様も見送ってくれた。嬉しい。
次戻ってくる頃には、ユキの赤ちゃんとリーゼ様の赤ちゃん産まれてるかな?
守るものがたくさん増えたんだ。もっと頑張らなきゃ。僕のこと、大切だって言ってくれるみんなの期待に応えたい。
「行ってきます!」
僕はまた決意を新たに出発した。
>>>ハーブルの街
トルーキエでは、前回と別ルートを行った。
ハーブルという街は、ハンカチと石鹸が有名みたい。
「あ、このハンカチ、領主様が使ってたやつだ。騎士団にもあった。ここで作ってたんだね〜」
「本当だ。一度借りたが、これ肌触りが良くて水分の吸収も良かった。俺も買おうかな。」
「俺も欲しい。」
「僕も欲しい。大きさが色々あるけど、あんまり大きいと持ち運ぶの大変だね。」
「だなー。やっぱりハンカチサイズか、その倍くらいまでだよな。」
「色んな色があるが、やっぱり黒か?」
3人でお揃いの黒いハンカチを買った。
「お揃いだね〜」
「だな。」
「あぁ。」
お揃いって嬉しい。
同じものを持ってるって特別みたい。
「あとオドンの街までどれくらいかな?」
「ハーブルの冒険者ギルドに寄って地図を見せてもらうか。」
「そうだな。」
ギルドで地図を見せてもらうと、あと4日も走ればオドンに着きそうだった。
「せっかくだし、何か依頼受ける?」
「そうだな。いいのがなければ宿取って観光でもするか。結構大きな街だし、見て回るところは色々あるだろう。」
「あぁ。いいぞ。」
「うーん、良いのないね。」
「だなー」
「やはり、もっと早い時間に来ないとダメか。」
依頼の掲示板には、薬草採集と掃除や手伝いのようなお手伝いクエストしか残ってなかった。
薬草採集か・・・、そうだポーションをもうそろそろ買っておきたいな。
ん?ポーションって自分で作れるのかな?
作れたら便利だな。
でも、色々な道具が必要なら旅の途中で作るのは難しいかも。
王都に帰った時に調べてみようかな。
「シュペアなんか楽しそうだな?いいこと思いついたのか?」
「うん。王都に戻った時に調べてみたいことを見つけたの。」
「そうか。シュペアは勉強熱心だな。」
「そうかな?」
守るものが増えたから、もっと色んなことを知っていなきゃいけないと思った。
「へー石鹸の専門店かー」
「そんなのあるの?」
「見てみたいな。」
「お?ゲオーグ石鹸に興味があるのか?この店入ってみるか?」
「石鹸などどれも同じだと思っていたから、少し気になる。」
「色んな形があるのかな?大きさとか。」
「あら、いらっしゃ〜い、ウフ」
「え・・・。」
ぐるんぐるんに巻かれた髪に黄色とピンクの派手な服装のお店の人は、僕たちがお店に入ったことに気づいて振り返ると、僕はその見た目にビックリして足を止めてしまった。
凄く派手なお化粧をしているのは良いとしても、真っ赤な口紅の上には立派な髭が生えていて、男の人なのか女の人なのか分からなかった。
僕は不安になってルシカとゲオーグを振り返ると、ルシカとゲオーグも固まっていた。
「ふふふ、ルシカ、ゲオーグ、どうしたの?」
驚いた表情で固まっている2人が面白くて、僕は思わず笑ってしまった。
「あら〜、可愛い子。」
「えっと、お姉さん?」
「あら〜良い子ね〜」
そのお姉さん?は僕を軽々と持ち上げてギュッと抱きしめてきた。
その迫力に僕は動けなくて、されるがまま抱き締められていた。
怖かったけど、悪い人じゃなさそう。たぶん。
「僕〜お名前は〜?」
「シュペアです。」
「どんな石鹸を探してるのかしら〜?」
「どんな?そんなに種類があるの?」
「あるわよ〜。お肌がプルプルになる石鹸とか、良い香りの石鹸とか、リラックスできるものとか。」
「そうなの?そんなに色んな石鹸があるんだ?凄い。」
「あら、良い子〜」
お姉さん?は僕を抱っこしたまま頬擦りしてきたけど、髭が痛かった。
女の人でも髭って生えるんだ。知らなかった。
「あの、僕、自分で歩けるし、下ろしてほしい。」
「ダメよ〜」
「え?何で?」
「シュペアくん可愛いんだもん。」
「え?えっと、でも石鹸見れないから・・下ろしてほしい。」
「仕方ないわね。」
お姉さん?は、残念そうにそう言うと、やっと僕を下ろしてくれた。
その後、僕たちは説明を聞きながら、それぞれ好きな石鹸を買った。
僕はレモンの香り、ルシカは蜂蜜とミント、ゲオーグは蜂蜜とラベンダーの石鹸を買った。
「シュペアくんとお友達もまた来てね〜」
「うん。」
お姉さん?は僕たちを店先まで送ってくれた。
「・・・シュペア、大丈夫だったか?」
「うん。ちょっと髭がチクチクしたけど、優しい人だったよ。」
「すまん、助けられなかった・・・。」
「ゲオーグ、大丈夫だよ。痛いこととかされたわけじゃないし。ちょっと怖かったけど。」
「だよな、俺も怖かったー」
「だな。グリフォンを目の前にした時とはまた違う怖さがあったな。」
ゲオーグ、さすがにグリフォンと比べたら失礼な気がする。でも、僕も気持ちは分かる。
まだちょっとドキドキしてるし。
「世の中には色んな人がいるんだね。女の人でも髭生えるのは知らなかった。」
「いや、違うと思うぞ。」
「あぁ。たぶん、あれは男だ。」
「「「・・・。」」」
そうなんだ・・・。
しばらく僕たちは何も言葉を発しないまま通りを歩いた。
「しかし暑いなー。」
「そうだな。」
「うん。」
まだ夏にはなってないけど、日差しが眩しくて、日中はどんどん気温が上がっていく。
『冷たいアイスはいかが〜?』
「アイスって何だろう?」
「何だろうな?」
「買ってみるか?」
「うん。おじさん、3つちょうだい。」
「毎度ありー」
僕たちはアイスを受け取ると、木陰のベンチに並んで座った。
「何これ!凄い。甘くて美味しい。冷たい。」
「これは美味いな。」
「あぁ。冷たくて甘くて美味しい。初めてだ。」
クリームみたいな見た目のアイスという食べ物は、甘くて冷たくて、口に入れると溶けて、凄く美味しかった。
暑くてちょっと汗ばんでたけど、冷たいアイスを食べたら、身体から熱も汗も引いていった。
こんな食べ物があるんだ。知らなかった。
「美味しかったね。」
「あぁ。この街を離れる前にもう一回食べたいな。」
「ゲオーグは本当に甘いものが好きだなー」
「甘いものは人を幸せにするからな。」
「うんうん。」
僕たちはその後、露店を見たり、ハンカチの工場を見学したりして過ごした。




