63. ケーキ屋アプフェル(ルシカ視点)
う、やっぱりここは入りにくいな。
そんなことはお構いなしと、立ち止まった俺とゲオーグの横をスッと通って、シュペアは店のドアを開けた。
「こんにちは。」
「あら、いつかの冒険者の。
また来てくれて嬉しい。好きなところに座って。」
「ありがとう。」
「今日のお勧めは、いちごのケーキと、オレンジのムースケーキよ。」
「どっちも食べてみたいな。」
「そうだな。両方にするか。ルシカはどうする?」
ゲオーグはニコニコしながらも、俺にまで気を遣ってくれる。いい奴だな。
「じゃあ、俺もそうしようかな。」
「そのお勧めのケーキ2つを3人分と、紅茶も3つ。」
「たくさん食べてくれて嬉しいわ。すぐに用意するわね。」
間も無くケーキと紅茶が運ばれてきた。
「うわー可愛い。凄い。食べるの勿体無いね。」
「あぁ、そうだな。可愛いな。芸術作品みたいだ。」
そういえばゲオーグは芸術作品も好きだったな。クンストの芸術作品の展示販売施設も楽しそうに見ていた。
ムキムキの動物がついたフォークも買ってたっけ?
俺は紅茶を一口飲むと、オレンジのムースケーキを一口口に運んだ。
ん、これは美味いな。酸味と甘味のバランスが丁度いい。口の中がサッパリする。
「美味しいね〜」
「あぁ、美味しいな。」
シュペアもゲオーグも本当に幸せそうに食べるな。可愛いやつらめ。
この前、シュペアが買ってきてくれたチョコレートケーキも濃厚で美味かったが、俺はこっちのフルーツのケーキの方が好きだな。
「ふふふ、美味しそうに食べてもらえて嬉しいわ。あれから見かけなかったけど、どこかに行ってたの?」
「あぁ、トルーキエとラジリエンにな。また少ししたらラジリエンに行く。」
「国外か〜、旅はどうだったの?強い魔獣とも戦った?」
「あぁ、まぁ一応。楽しかったな。」
「うん。グリフォンとか、ラミアとか色々戦ったよ。」
「グリフォン?それって災害級の?」
「そうだよ。冒険者の人たちたくさんで戦ったの。」
「凄い。それって緊急討伐クエストよね?高ランクじゃないと参加できないんじゃないの?」
「うん。Cランク以上だったよ。」
「あなたたち強いのね。」
「いや、まぁ、弱くはない、かな。」
「ゲオーグとルシカは凄く強いよ。Bランクだし。たぶんすぐにAランクになれると思う。」
ゲオーグが照れている。そんな姿、初めて見たぞ。
そしてシュペアのナイス援護。
「ラジリエンってお砂糖の国よね?美味しいケーキがたくさんありそう。」
「知らない果物のケーキが色々あったな。バナナとかココナッツとか、夏になるともっと色々な果物がとれるらしい。」
「楽しみだね〜」
「そっか〜、いつか行ってみたいな。」
「お姉さんはもう冒険者はやらないの?」
「うーん、やらないかな。冒険より楽しいこと見つけちゃったから。」
「それは、ケーキを作ること?」
「そうよ。だから毎日とっても楽しいのよ。」
「そっか。」
「なるほど、作り手が楽しく作っているからここのケーキは美味しいんだな。」
「あら、お兄さん嬉しいこと言ってくれるじゃない。」
「俺はゲオーグ、あなたの名前を聞いても?」
「私はキルシェ(さくらんぼ)よ。」
「ありがとう。王都に戻った時にはまた来てもいいですか?」
「えぇ、もちろんよ。待ってるわね。」
「はい!」
やっぱりゲオーグは・・・。
もしかしたらまだ本人も気づいていないかもしれないな。黙って見守ることにしよう。
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