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少年シュペアの冒険譚 〜無自覚に最高峰を目指す〜  作者: 武天 しあん
初めての旅

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62. 中隊の飲み会(ウィル視点)


ミランと一緒に戻ってきたシュペアはさっきより少し元気になっていた。


ミランは、そういうところがあるよな。

私も少なからず助けられたしな。


シュペアが帰ってきたということで、夜はゲミューゼで宴会となった。

戦士部隊からも何人か訪れて、かなりの人数になった。

途中からミランや団長まで参加して、大騒ぎをしていた。



「中隊長、あのね、トルーキエのジムナーシアに行った時に、ジムナーシア伯爵に会ったよ。」

「そうか。」


「それでね、中隊長の結婚式に出られなかったことを残念がってたんだけど、またいつかリーゼ様に挨拶に伺いたいって言ってたよ。」

「そうか。伝えてくれてありがとう。

ん?

そういえば何で伯爵に会ったんだ?」


旅をしているだけなら伯爵に会うことは無いだろう。シュペアが貴族なら有り得るが、シュペアもルシカもゲオーグも平民だ。



「オークの群が出て、伯爵の治安部隊の人と、冒険者の人と一緒に討伐に行ったの。」

「そうか。ジムナーシアはオークが群を作りやすい場所なのかもしれないな。

私も昔、ジムナーシアでオークの群をモスケルと一緒に倒したことがあるんだよ。」


数年に一度くらいの割合でオークが群を作っているんだな。


「うん。隊長さんに聞いたよ。

すごく強いって冒険者ギルドのみんなも中隊長のこと知ってるみたいだった。」

「そうか。あれから何年も経つのにな。まだ私を知っている者が多くいるのか。」


「中隊長は凄いね。隊長さんからも色々聞いたの。訓練してくれたとか、オーク討伐の方法教えてくれたとか。」

「確かに教えたな。懐かしい。シュペアもいつかできるようになるよ。

それに、シュペアはオーク討伐に参加したんだろ?凄いことだ。」


「うん。僕、Cランクに上がったよ。」

「それは凄いな。ん?オークの他にも何か高ランクの魔獣を倒したのか?」


「えっと、1人で倒したのはロック鳥とハイオークだけかな。」

「それはもうBランクでもおかしくないぞ。

シュペアは凄いな。よく頑張っているな。」


シュペアのふわふわの髪を梳かすように撫でると、シュペアは嬉しそうに微笑んだ。



それにしても11歳でハイオークとロック鳥か。

騎士団に入れておいて良かった。

ロック鳥などBランクの者でもソロで倒すのは一握りだろう。


「シュペア、もし変な貴族や商人に絡まれて、騎士団の名前を出しても引かない場合は、私の名前を出していい。

そしてすぐにギルドから連絡をしてくれ。」


「うん。分かった。」

「シュペアはいい子だ。」


「あ、そうだ。ユキのお腹に赤ちゃんがいるの。少し体調が悪いって言ってたから、フロイが心配してたよ。」

「そうなのか?馬番が気付いたのか。」


「違うよ〜

馬番は気付いてなかったよ〜

これ、内緒だけど、シュペアはフロイともユキとも話せる。

シーね。」


突然ミランが結界を張って話に割り込んできて、とんでもない爆弾を投下した。


なっ、

私はすぐに自分の手で、叫びそうになった自分の口を塞いだ。


「シュペア、本当か?」

「うん。」


「凄いな。というか不味いな。ミラン、他にこのことを知っている者はいるか?」

「うーん、おじいちゃんとおばあちゃんと、俺かな〜。クンストの馬番も気付いてるかも。」


「そうか。それはお祖父様が口止めしておいてくれるだろう。他には言うなよ。」

「分かった〜」


「シュペア、フロイとユキ以外に動物や魔獣と話したりしたことはあるか?」

「ないよ。」


「そうか。じゃあ動物の特殊個体に限った能力なのかもしれないな。」


血の契約がなくても言葉が分かるのか。

魔力や魔術の腕もあるし、シュペアは本当に村人の子供なんだろうか?

いや、あの余所者を寄せ付けない村が、捨てられていたとしてもわざわざ子供を拾うわけもないか。

平民の中には能力があっても発揮できずに一生を終える者もいるのかもしれない。



「あ、そうだ。僕、みんなにお土産買ってきたんだった。」

「お土産?」


「うん。ラジリエンでココナッツのクッキー買ったの。配っていい?」

「あぁ、いいよ。みんな喜ぶと思うよ。」


シュペアはルシカとゲオーグのところに行って、リュックから箱をいくつか出すと、隊員に配り始めた。


みんなニコニコしながらシュペアからクッキーを受け取っている。

シュペアは人気者だな。


あの小さい体で苦しみに耐えてきたんだな・・・。

シュペアの村の調査はなかなか進んでいないが、シュペアが笑えているなら、今はそっと見守ろう。





>>>隊員と岩の話(シュペア視点)


「ねぇ、聞いてもいい?」

「どうした?お兄さんたちになんでも聞いてごらん。」


「ワークスペースの岩は、鉄鉱石?」

「んーそうらしいな。」


「やっぱりそうなんだ?ラジリエンで似た石を見たから、そうなのかな?って思ってたの。

エトワーレでも取れるの?」

「いや、あれはお土産だ。」


「お土産?まさかラジリエンの?」

「そうそう。中隊長がちょっと旅先で病んでな・・・、それで買ってきたんだ。」


みんながなんだか気まずそうな顔をした。


「病んで買ってきた?岩を買う病気があるの?」

「いや、そういうわけじゃないけど、心が病むと正常な判断ができなくなるんだ。」


「そうなんだ・・・。」


心が病むって、どんな感じなんだろう?

苦しいのかな?

怖いな。


「心が苦しいことを我慢すると良くないから、シュペアはちゃんと誰かに相談するんだぞ〜」

「うん。」


みんなが大きな手で交互に僕の頭を撫でた。

みんなの手、やっぱり優しくて温かいな。

僕は幸せ。



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