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少年シュペアの冒険譚 〜無自覚に最高峰を目指す〜  作者: 武天 しあん
初めての旅

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61. フロイとユキと前侯爵夫妻


お店を出るとフロイに乗ってクンストまで行って、領主邸の厩舎に向かった。


そこには真っ白なとても綺麗な馬がいて、それがフロイのお嫁さんだってすぐに分かった。


「初めまして、僕はシュペアです。あ、もしかしてユキ赤ちゃんいる?」

ブルル<よく分かったわね。>


「体は辛い?」

ブルル<少しだけね。もう少し柔らかい草を敷いてほしいわ。>


「うん、分かった。馬番の人に頼んでみるね。」

ブルルル<シュペア、ありがとう。ウィルとおじいちゃんは僕の言葉が分かるけど、ユキはリーゼとしか話せないから。>


「ねぇねぇ、シュペアくん何話してるの?」

「ユキのお腹には赤ちゃんがいて、少し体が辛いみたい。でね、もう少し柔らかい草を敷いてほしいって。」


「ユキ赤ちゃんいるの?フロイがユキの様子を見たいって言ってたのはそのせいか〜」

「だから馬番の人に頼みに行こうと思って。」


「うん。そうだね。行こう。」


僕はミランと一緒に馬番のおじさんのところに行って、ユキのことを話した。

馬番のおじさんは急いで草を買いに行ったみたい。


「俺は領主邸のおじいちゃんたちの様子見てくるね〜

シュペアくんはまた厩舎に行く?」

「うん。」




「ユキ、馬番のおじさんが草を買いに行ってるからちょっと待っててね。」

ブルル<ありがとう。>


「うん。」

ブルル<シュペア、元気ないの?>


「フロイにもそう見える?少しだけね・・・。」

ブルルル<寂しいの?>


「うん。そうかもしれない。」

ブルル<僕が癒してあげるね。>


フロイが僕のおでこに鼻をつけると、温かくて優しい気持ちが流れてきた。

ギュッて固まって苦しかった部分が解れて、領主様に抱きしめられてる時みたいに安心した。



「フロイ、ありがとう。」

ブルル<もう寂しくない?僕はシュペアのこと好きだよ。優しい空気が心地いい。>


馬番のおじさんが草を荷車に乗せて帰ってきたから、僕も草を敷くのを手伝った。


「こんな感じで大丈夫?」

ブルル<えぇ、ありがとう。>



『シュペア〜、こっち来れる〜?おじいちゃんたちが会いたいって〜』



「どうしよう。僕まだちゃんとしたマナー分からないから・・・。」

ブルル<大丈夫。おじいちゃんは優しいから。>

ブルル<シュペアなら大丈夫よ。>


「うん。行ってくる。」

ブルル<頑張って。>


「今行きます。」

僕はミランに声を届けた。


玄関に向かうと、執事のおじさんが部屋に案内してくれた。




「初めまして。シュペアです。」

「まぁ、可愛らしい子だわ。」

「そうだね。」


「シュペアくんもここに座りなよ〜」

「はい。」


僕はミランの隣に座った。


「シュペアくんはとっても魔術が上手で、目の色を変える魔術も使えるし、槍の腕も凄いんだ。」

「そうなの?まだ小さいのに偉いわね。」

「将来が楽しみだな。」


「それに俺の本を読めるんだよ〜」

「ほぅ、それは凄いな。」


「そんなに、凄くはないです・・・。」

「シュペアくんは凄いよ〜。俺もウィルも認めてる。そういえば団長も欲しいって言ってたっけ〜?」

「それほどまでか。それは危険だな。良からぬ者に目をつけられたら困る。」


「そうなんだよね〜

そこがちょっと心配。それに、シュペアくんはフロイとユキの言葉が分かる。」

「なんと!血の契約をしていないのにか?もしかして、私たちと縁戚だったりするのか?

いや、それならフロイとしか話せないはずだ。ユキとも話せるとなると・・・。」


「ちょっとあなたたち、興奮し過ぎよ。シュペアくんが驚いているわ。」

「いえ・・・。」


「すまん。いや本当に凄いことなんだよ。将来ウィルの側近になるに相応しいな。いや、側近では勿体無いくらいだ。

君の能力を知れば、養子に欲しいと言う貴族は多いだろう。

危なかったな。王女の婿が決まっていなかったら王家が出てきたかもしれん。」

「え・・・。」


「あ〜確かに陛下シュペアくんのこと好きそう。そのうち会いにくるかもね〜」

「なぜですか?わ、私は平民です。」


「そんなに堅苦しくマナーなんて気にしなくて大丈夫だよ〜

おじいちゃんは優しいし。俺もいつも通りでしょ〜?」

「ミランはもう少しマナー勉強した方がいいと思う。」


はははは

「シュペアくんの言う通りだな。」

「え〜俺そういうの苦手なんだも〜ん。」



「平民として産まれても、能力が認められて叙爵される場合や、貴族の養子となる場合もある。」

「はい。」


「君の場合はその可能性が高い。要するに、色々なところから必要とされる人物だということだ。」

「必要と・・・。要らないんじゃなくて?」


「そんなことを言われたことがあるのか?誰に?そんなことを言う奴など信用しなくていい。君を認めてくれる者だけ信用していればいいんだよ。」

「・・・えっと、親に・・・。」


「なんてこと・・・。辛かったわね。もう大丈夫よ。」

おばあちゃんが僕のことを抱きしめてくれた。


温かくて、優しくて、また涙が出そうになったけど、ぐっと堪えた。

僕は、泣き虫になったみたい。



「ありがとう。僕は必ず強くなって領主様のことも領主様の家族のことも守ってみせます。

まだ弱いけど、必ず強くなって戻ってきます。」


「そうか。それは楽しみだな。」

「そうね。ウィルを頼むわね。」

「はい。」


また僕に守るものが増えた。

領主様のお祖父さんとお祖母さんも守ろう。


途中から会話に入ってこなくなったミランを見ると、ニコニコして頷いていた。

やっぱりミランは僕が落ち込んでるのを知ってここに連れてきてくれたのかも。


適当なことしてるように見えるけど、ちゃんと意味があってのことなのかもしれない。



「そろそろ帰ろうか。

そうだ。ユキのお腹に赤ちゃんいるみたいだから。馬番には言ったけど、気をつけててあげて。」

「そうなのか?」

「はい。少し体が辛いと言っていました。」


「そうか。分かった。私たちも気をつけておこう。」

「シュペアくん、またいつでも来てね。」

「はい。」


僕たちはフロイに乗って騎士団に帰った。



「シュペアおかえり〜」

「おかえり。」


ルシカとゲオーグがニコニコしながら迎えてくれた。

「ただいま。お土産あるよ。」


閲覧ありがとうございます。

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