59. 帰国と領主様
「僕たちは一旦エトワーレに戻るね。」
「そうなの〜?何で〜?これからもっと魔獣の動きが活発になるよ〜?まだトレント見つけてないし〜」
「えっと、僕はエトワーレ王国の騎士団に所属してるから、たまには顔を出さなきゃいけないの。
それに、剣の素材について聞きたいし。」
「へ〜シュペアは騎士団に在籍してんのか〜、それが対策か〜なるほどね〜
確かにそれはかなり強力な対策になるかも〜」
「だから、ここでお別れだね。ルヴォンとグレルには色々教えてもらって勉強になったよ。
またいつか会えたらいいね。」
「そうだな。また会おう。」
「またいつかね〜、ギルドを通して連絡するよ〜
また会おうね〜」
僕たちはルヴォンとグレルと別れて、トルーキエ経由でエトワーレを目指した。
「ねぇねぇ、せっかくだしお土産買って行こうよ。」
「そうだな。」
「チョコは溶けちゃうかな?クッキーなら大丈夫かな?ココナッツが入ってるクッキーとかいいかも。」
久しぶりの王都だ。
そんなに長期離れていたわけじゃないけど、なんか懐かしい。
「おーシュペアじゃん。ルシカとゲオーグも、おかえりー」
「「「おかえりー!」」」
「みんなただいまー」
おかえりって迎えてくれる誰かがいるって幸せなことだな。
「シュペアおかえり。」
今日は演習場に行くと領主様もいた。
おかえりって言ってもらえて嬉しい。
「中隊長、聞きたいことがあります。」
「なんだい?」
「シュヴェアトの剣は中隊長が見つけたって聞いたから。どんな素材なのか知りたくて。」
「あれはミスリルシルバーだね。」
「ミスリルシルバー?」
「本当は純粋なミスリルやオリハルコンなんかが良いんだけど、ミスリルもオリハルコンも希少だからね。」
「そっか。剣を作ろうと思うとたくさん金属がいるんだね。」
「そうだね。なかなか手に入らないのもあるし、何より値段が高いからね。
ミスリルとシルバーを混ぜた金属の武器なら魔力も通しやすいし値段もミスリルより安い。」
「そっか。」
「シュペアも武器の扱いが上手いから、魔術を纏わせた武器での戦いが向いてるかもしれないね。」
「うん。だけど、トレントはまだ見つかってないの。金属もどれがいいのか分からなくて。」
「確かトレントはラジリエンにいたな。
ビマグーンにもいると聞いたが、ビマグーンは、あまりお勧めしない・・・。」
領主様は何だか苦しそうな顔でそう言った。
ビマグーンは行かないでおこう。強くて優しい領主様が苦しむほど嫌なことが起きる場所なんだ・・・。
「ラジリエンには行ったの。でもまだ見つけてない。」
「そうか。確かトレントは夏に活発になるとか。冬はあまり姿を見せないのかもしれないね。」
「そっか。じゃあまたラジリエンに行って探してみる。」
「うん。そうだね。」
「リーゼ様は元気ですか?」
「本人は元気だと言っているけど、あまり調子が良くないみたいだ。」
「え?大丈夫なの?」
「あぁ、病気ではないんだ。まだみんなには内緒だけどね、お腹に赤ちゃんがいるんだよ。」
「本当?凄い。おめでとう。」
領主様は結界を張って周りに音が聞こえないようにして、こっそり教えてくれた。
領主様、嬉しそう。
また僕に守るものが増えたみたい。
領主様とリーゼ様を守るって決めてたけど、僕は領主様とリーゼ様の間に産まれる子も守ろうと思った。
いいな。
こんなに優しい領主様と、リーゼ様の間に産まれる子はきっと幸せだろう。
僕みたいに苦しむことがないよう、僕もその子を守ってあげようと思う。
僕みたいに辛くならないように・・・。
僕みたいに・・・
「シュペア、どうした?」
「何でもないよ。」
「隠し事はダメだよ。辛いことを1人で抱え込むこともいけない。私はシュペアがどんなことを考えて、何に苦しんでいるのかを知りたい。
共有すれば、一緒に悩んで一緒に乗り越えられるだろう?」
「うん・・・。」
領主様は、いつもの温かくて優しい手で、僕の頭を撫でてくれた。
「無理しなくていい。今じゃなくてもいい。いつでも言いに来てくれていいからね。
私に話せないなら、ルシカやゲオーグに話してもいいし、他の隊員に話してもいい。
1人で苦しみを背負う必要はないんだよ。みんなシュペアの気持ちを受け止めてくれるから。」
「・・・中隊長のお部屋に行ってもいい?」
「あぁ、いいよ。」
僕は領主様と並んで中隊長室に行った。
僕はまだ勇気がなくて、声に魔力を纏わせて領主様だけに聞こえるように小声で話し始めた。
「・・・内緒なんだけどね、僕、村のみんなに陰で要らないって言われてたのは知ってたの。でも、村を出た日に、父ちゃんにも要らないって・・・。
だから、いつかみんなにも要らないって言われるのが怖い。」
「そうか。そんなことを言われたのか・・・。
辛かったな。
大丈夫だ。私はシュペアのことを必要としている。約束したからな。」
「うん。
だから、領主様とリーゼ様の間に産まれてくる赤ちゃんが羨ましいなって思ったの。」
「そうか。」
「僕は、領主様とリーゼ様の間に産まれてくる子も守るよ。」
「ありがとう。シュペアが守ってくれるなら安心だな。」
「でも僕はまだ弱い。もっと強くなるから、待ってて。」
「あぁ、楽しみにしてるよ。
ん?」
「え?」
「シュペア、もしかして同時に複数の魔術使えるようになった?」
「え?何で分かったの?」
「索敵しながら声に魔力纏わせて使ってたからね。」
「誰にも聞かれたくなくて・・・。領主様には分かっちゃうんだね。
できるようになったけど、まだ攻撃はできない。索敵と結界とか、索敵と身体強化とかしか。」
「シュペアは凄いな。よく頑張ってるね。」
「そう、かな・・・。」
「大丈夫だ。おいで。」
領主様は、僕を温かい手で抱きしめてくれた。
僕はそれが嬉しくて、悲しくて苦しい気持ちと混ざって、涙が溢れた。
「大丈夫。みんなシュペアのことを大切に思ってる。頑張ってるのも知ってる。大丈夫だからね。どこに行っても、ちゃんと帰ってくる場所はあるからね。」
領主様は、僕の涙が止まるまで、ずっと抱きしめて背中をポンポンしててくれた。
「泣いちゃってごめんなさい。」
「いいんだよ。気にすることはない。」
「あ、」
「ミランだな。きっとシュペアの魔力を見つけて来たんだろう。
あいつもシュペアのことが大好きだからな。」
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