57. ラジリエン王国ヴォルターの街(ルシカ視点)
「凄い。トルーキエはあんなに寒かったのに、ラジリエンは暖かいんだね。」
「でしょ〜?初めは驚くよね〜」
「確かに暖かいな。」
「ここが砂糖が取れるという国か。」
ゲオーグはきっとケーキを思い浮かべてるんだろう。ニコニコしている。
やっぱりゲオーグは中身が可愛いな。
「ゲオーグってなんか可愛いね〜」
「お?ルヴォンにも分かるか?ゲオーグはこんな外見だが可愛いんだよ。」
「うんうん。そうなの。ゲオーグは可愛いの。」
「いや、俺が可愛いわけないだろう・・・。みんなして揶揄うな。」
ちょっと不貞腐れてるゲオーグも可愛い。
可愛いことを知っていなければ、怖いだけだが、中身が可愛いことを知っていると、そんな顔まで可愛く思えてくるから不思議だ。
これ女の子なら俺、惚れちゃうかもしれない。
俺、もしかして末期かな?
「ここはお砂糖の国なんでしょ?ケーキあるかな?」
「あるだろう。探してみるか?」
ゲオーグもシュペアも目をキラキラさせて嬉しそうだ。
ヴォルターの街を歩いてみると、エトワーレの王都で行ったアプフェルのような可愛い店がたくさんあって、どこも若い女性ばかりだ。
「ねぇ、ゲオーグ、あのお店はどう?」
「う・・・俺にはちょっと厳しい気が・・・。」
ククク、ピンクの屋根の可愛い店をシュペアが指さしたら、ゲオーグが困った顔をしていた。
「いいじゃーん。行こうよ〜」
ルヴォンはノリノリで行こうと言っているが、完全に遊んでるな。
グレルは呆れた顔をしているし、俺もあの店に男だけで入る勇気はない。
シュペアはそんなこと気にしないから、首を傾げて不思議な顔をしているが・・・。
「も、もう少し落ち着いた店だとありがたい・・・。」
「そうなの?可愛いケーキじゃなくていいの?」
「ククク、ゲオーグとグレルが並んで可愛いケーキを食べてたらって、想像しただけで面白過ぎる〜
ヤバイヤバイ、シュペア、笑わせないで〜」
ヤバイ、ルヴォン笑わせんなよ。
可愛いケーキ食べてるゲオーグだけでも面白いのに、その隣にゴツいグレルも並んだら・・・
プククク、俺は顔を背けて必死に笑いを堪えた。
「ムゥ・・・ルヴォン、俺はともかくゲオーグに失礼だろ?」
「ごめんごめ〜ん。
いいじゃん。可愛い店で可愛いケーキ食べようよ〜
ね〜シュペア〜。」
「僕は、ゲオーグが嫌なら別のお店にする。」
「シュペア・・・。」
「君ら急いでるわけじゃないんでしょ〜?
なら色んな店で色んなケーキ食べればいいじゃ〜ん。」
「そっか。確かに、そうかも。」
結局さっきの可愛い店には入らず、茶色の木目が綺麗な店に入った。
「マスターケーキある〜?」
「あぁあるよ。今日はバナナのケーキだ。」
「じゃあそれ5人分ね〜
あと〜、コーヒーも〜、ミルク多めで〜」
「はいよ。ちょっと待ってな。」
バナナ?コーヒー?なんだそれは。
「ルヴォン、バナナって何?コーヒーって何?」
「シュペア食べたことないんだ〜?じゃあ楽しみにしてるといいよ〜
バナナは甘い果物で、コーヒーは飲み物だよ〜」
「そういえば君らはどこの国出身なんだ?トルーキエではないだろう?」
「僕たちはエトワーレ王国出身だよ。」
「あ〜なるほど。だからバナナ知らないんだな〜
エトワーレではバナナ作ってないだろうし、輸送もできないからな〜」
「あぁ、俺らはエトワーレのレーマンで活動していた。ルヴォンたちは?」
「あ〜レーマンか〜。確かあそこは強い魔獣がいるとか聞くね〜。グレル〜行ってみたいね〜。」
「あぁ、そうだな。俺らはパリスタ出身だ。拠点は持たず、転々としているな。どこか気にいる場所が見つかれば、そこに腰を落ち着けるかもしれん。」
「そっか。パリスタはどんな国なの?」
「あんまりいい国じゃないな。5-6年前までエトワーレと戦争していたはずだ。」
「戦争・・・。」
「シュペア、どうした?」
シュペアが難しい顔をして黙ってしまった。
シュペアはフェルゼン領の小さな村出身だし、戦争を見たことはないだろうが。
あれか?領主様が子供の頃に参加して、味覚やらを失ったという話を聞いたから、何か思うところがあったのかもしれない。
「大丈夫だよ〜戦争はもう終わったから〜」
「そうだ。もう終わった。これからは平和になるといいな。」
「・・・うん。」
平和か・・・。
そんなことを考えていると、バナナのケーキとコーヒーという飲み物が運ばれてきた。
「美味しい!凄い。初めて食べる味。」
「うんうん。美味しいな。」
シュペアは先ほどの話は忘れてしまったのか、ニコニコしながらケーキを食べていた。ゲオーグは言わずもがな・・・。
バナナって果物は甘くてトロトロしているんだな。
味もだが、食感も初めてだ。
「このコーヒーはね〜、このシロップを入れて甘くして飲むんだよ〜
大人は甘くしないで飲む人もいるけど〜。」
「じゃあ僕は甘くする。ゲオーグも甘い方がいいよね?ルシカはどうする?」
「俺は入れずに飲んでみる。」
シロップを入れずに飲むと、甘いケーキと合わせるとちょうどいいな。
「お〜ルシカは大人だね〜
もしかしてルシカってゲオーグより年上〜?」
「まぁな。」
「へ〜僕らより上だったりして〜」
「たぶん上だと思う。」
「おい、ルヴォン、人の年齢について色々言うのは失礼だぞ。
ルシカ、すまんな。こいつに悪気はないんだ。」
「いや、構わないよ。聞かれて困るものでもないしな。」
別に知られて困ることはないが、ゲオーグは自分の歳を言うのを嫌がるし、年齢を知られるのを嫌がる奴もいるんだろう。
「美味しいね。」
「あぁ、美味しいな。このコーヒーというのもシロップをたっぷり入れると甘くて美味しい。」
「うんうん。初めて飲むけど美味しいね。他の国には色んなものがあって楽しいね。」
「あぁ、そうだな。楽しいな。美味しいしな。」
「ねぇ、ゲオーグってまさかとは思うけど未成年だったりする〜?」
「いや、俺は成人している。」
「だよね〜、安心した。」
だよな〜
ケーキを前にした時のゲオーグは、シュペアとそう変わらないくらい子供っぽくなる。ルヴォンはAランクだけあって、なかなか鋭いな。
「宿どうする〜?」
「僕たちは3人で一部屋がいい。いつもベット並べて寝てるの。」
「へ〜仲良しなんだね〜、グレル、僕たちも一緒の部屋にする〜?」
「いや、俺らはいつも通り1人ずつでいいだろう。」
「な〜んだ。釣れないの〜」
宿をとると、俺たちは街を見て回った。
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