50. オドンの冒険者
相手のパーティーも3人組で、ゲオーグみたいな体型のロングソードを持った人と、大きな盾を持った人、ローブを着た細身の人だった。
「いきなり声をかけてすまない。君たちはいつもこの森で活動しているのか?」
「あぁ。ここ1ヶ月くらいはこの森にいるな。」
「俺らはこの森は今日が初めてなんだが、朝から捜索してまだ魔獣に一度も出会っていない。この森はこんなに魔獣が少ないのか?」
「いや、俺たちも朝から捜索していてまだ魔獣に当たっていないんだが、こんなことは初めてだ。
森の奥に進めば強い魔獣が縄張りを張っているから頻繁に出会すことはないが、浅い場所でも全く魔獣を見かけないのは初めてだ。」
「そうなのか。」
「今ね、10キロまで索敵を広げてみたんだけど、魔獣がいないみたいなの。冒険者はいっぱいいた。」
「え!?10キロ?そんなに索敵を広げて君大丈夫なの?」
「うん。まだ大丈夫。薄く広げたから。」
「子供だと思っていたけど優秀なんだね。」
「中隊の仲間に教えてもらったの。」
「中隊?」
「うん。僕は国の騎士団に所属してるんだ。しっかり広げると魔力を多く使うけど、薄く広げていくとそんなに魔力を消費しないんだよ。」
「その年で騎士団に所属しているのか。なるほど、それは優秀なわけだ。」
「あ、今思い出したんだが、前にも一度魔獣を見かけなくなったことがあったと聞いたことがある。」
「それはなぜだ?理由があるのか?」
「その時はキマイラが出たらしい。それで他の魔獣が逃げてどこかへ行ったとか。」
「なるほどな。もしかしたら今回も強大な魔獣が出たのかもしれないな。」
「うーん、それは困るな。それだと依頼の魔獣討伐ができない。」
「恐らく異常事態はギルドにも伝わっているだろうし、期限の延長にも対応してもらえるんじゃないか?」
「それならいいが・・・。」
「どうする?魔獣がいないのに探し回っても無駄になるんじゃないか?」
「もう少し索敵広げてみる?15キロくらいまでならいけると思う。」
「できるか?」
「うん。やってみる。」
僕は索敵を広げた。もっと20キロとか30キロとか広げられたらいいんだけど、まだ僕には自信がない。
寝る前とかならいいけど、こんな森の中で魔力切れにでもなったら大変だ。
「15キロまで広げてみたけど魔獣はいないみたい。」
「そうか。じゃあもう今日は帰ってギルドで情報を集めよう。」
「そうだな。」
「君らはどうする?」
「15キロ進んでも何もいないなら、さすがにそれ以上奥に進むのは厳しい。俺らも引き返すか。」
「そうだな。」
「お兄さんたちはトレントと会ったことある?」
「いや、ないな。トレントは滅多にいない。たぶんトルーキエでは討伐されるのも年に数体だろう。ラジリエン側の方がいるんじゃないか?」
「そうなんだ・・・。」
「君たちはトレントを探しているのか?」
「あぁ。彼の武器を作るためにな。」
「武器?魔術師じゃないのか?」
「僕は魔術より槍の方が得意なの。柄がトレントでできてる槍が欲しいんだけど、たぶん見つけるのは難しいから、素材を自分で用意して誰かに作ってもらおうと思って。」
「トレントを使った武器か。面白いな。」
「あ、俺らは『ジム戦士』というパーティで、俺がクルチ、こいつがビュー、こっちはカルケンだ。」
「俺らはパーティー名はない。俺がルシカ、こっちがゲオーグでこっちがシュペアだ。」
「ジム戦士?ジムって?」
「元々俺らはジムナーシアってところで活動してたんだ。そこからとってジム。」
「そうなんだ?僕たち、この前ジムナーシアに行ったよ。ココアがあるところだよね。」
「あぁ。よく知っているな。ジムナーシアに行ったのか。大丈夫だったか?シュペアはギルマスに狙われそうな気がするんだが・・・」
「うん大丈夫。伯爵が抗議するから大丈夫だって。」
「はぁ・・・やっぱりか。あのギルマスもうそろそろ干されるだろうな。フェルゼン侯爵に不敬を働いてから高ランクを取り込みにかかって、みんな嫌がって逃げたんだ。あ、フェルゼン侯爵ってのはエトワーレの人でな。とんでもなく強いらしい。」
「うん。知ってる。今は僕の上司だから。」
「そうなのか!?じゃあ騎士団ってのもエトワーレの?」
「うんそうだよ。」
「やっぱりフェルゼン侯爵はとんでもなく強いのか?」
「うーん、僕は中隊長が攻撃魔術を使っているところを見たことがないんだけど、この前Sランクになったって言ってたから強いと思うよ。」
「マジか。とうとう幻とも存在しないとも言われていたSランクが・・・。
会ってみたい。」
「握手してもらいたいな。」
「会っても俺らなんか相手にしてくれないだろうな。」
「そんなことないよ。凄く優しいよ。だよね?」
「あぁ。俺ら平民とも普通に話すし、平民の酒場に部下たちと行っていたな。」
「そう言えばモスケルがジムナーシアの冒険者ギルドに連れて来た時も、その辺の旅人みたいな格好をしていたとか。」
「あぁ、そのせいで受付のアホとまたまた屯していた連中が失礼を働いたんだったな。」
「そうなんだ・・・。」
領主様に失礼なことしたんだ・・・。
「シュペア。」
「おい、シュペア、冷気が出てるぞ。」
「あ、ごめんなさい。」
嫌な気持ちが上がってきて、僕は無意識に冷気を放っていたみたい。
すぐに霧散させた。
「どうした?嫌なことでも思い出したのか?」
「違うの。領主様が嫌な目に遭ったって聞いたから・・・。」
「あぁ。なるほど。」
「シュペアはずっとフェルゼン侯爵を尊敬していたからな。」
「うん。尊敬してる。ルシカとゲオーグも尊敬してる。」
「そうか。ありがとう。」
「ギルドに寄ったら美味いもん食いに行こうな。」
「うん。」
『皆さん、討伐クエストは期限の延期対応が可能です。
現在原因を調査中ですが、災害級の魔獣が出た可能性があります。
その場合にはCランク以上の冒険者は出来る限り討伐に参加してください。それ以下の冒険者は街の防衛に回ってもらいます。』
「僕は街の防衛に参加すればいいのかな?」
「いや、シュペアを1人にするわけにはいかない。」
「そうだな。シュペアがランクアップ可能か聞いてみるか?」
「大丈夫かな?」
「ここなら若い冒険者も多いから目立たないだろう。」
「聞いてみよう。ダメならパーティーということで無理やりねじ込むか、騎士団の肩書きで参加させてもらうか・・・。」
「すみません、僕ランクアップできますか?」
「調べてみますね。カードを提示いただけますか?」
「はい。」
「え?あ、ごめんなさい。Cランクまでなら無条件で昇格できますよ。Bランクの昇格試験を受ける受験資格も取得しています。」
「えっと、じゃあCランクにランクアップしたいです。」
「かしこまりました。手続きしますね。」
「お願いします。」
「Bランクの試験も受けれるんだって。でも僕はまだやめておく。
人を相手にしてランクを上げるよりも、もっと強い魔獣といっぱい戦いたい。」
「うん、そうだな。」
「焦らなくていい。人は精神を削られるだけで強いわけじゃないからな。」
「うん。森の奥には何が出たんだろうね?」
「シュペアが索敵したよりも奥まで行かないと調査できないとなると、早くても明日にならないと分からないだろうなー。」
「そうだな。今日はシュペアのランクアップのお祝いをしてゆっくり休もう。」
僕は、寝る前に少し索敵を広げてみた。
もう少し広げられるかな?
25キロくらい広げてみたけど、魔獣はいなかった。
もっと魔力を節約しないと、これ以上広げるのは無理そう。
「ふぅ。」
僕は索敵を解除して魔力循環を再開した。
魔力循環をしながら索敵を広げられたらいいんだけど、まだ広く広げると魔力循環は止まっちゃう。
これも練習したい。
次ミランに会う時までにできるようになりたいな。
そういえばミランが領主様は目の色を変える魔術を日常的に使っていたって、それでだんだん他の魔術も同時に使えるようになったって言ってた。
僕もそれをやってみようかな。
災害級魔獣の討伐が終わったらやってみよう。
新しいことに挑戦するのはワクワクする。
僕はワクワクしながら眠りについた。
閲覧ありがとうございます。




