43. ウルフ討伐
「珍しい魔獣の討伐依頼はないね。」
「そうだな。ジムナーシアの近くではオークが出ると聞いたが、今は依頼が出ていないな。」
「オークか。戦ってみたかった。」
「ブラックベアってのはワイルドベアの色違い?」
「そうだな。色もそうだがワイルドベアより小さくて弱い。」
「そっか。弱いからDランクなんだね。」
「まぁ弱いと言ってもDランクパーティで当たるよう書いてあるだろ?単独で倒せるのはC以上のランクの者だな。シュペアなら余裕だろうが。」
「ブルーウルフの群の討伐とかどうだ?」
「いいな。20匹くらいならちょうどいい運動になる。」
「じゃあそれにしようよ。」
「決まりだな。」
「さぁ行こう。」
「うん。」
「森ではいっぱい戦ったけど、山は久しぶり。足も速くなったし、上手く戦えるかな?」
「確かに坂で足場が悪いな。ウルフ討伐もなかなかやりがいがあるのかもしれない。」
「それは楽しみだ。」
あれがブルーウルフか。
ブルーウルフは青っていうより、ちょっと灰色に近い毛の色のウルフだった。
それに、20匹くらいと書かれていたのに30匹を超えるような大きな群だった。
「2人とも、身体強化はかけたからね。僕が最初に氷の矢をたくさん飛ばすから、群の連携が崩れたところで戦闘開始でいい?」
「あぁいいぞ。シュペアはいつの間にかそんな戦闘の算段まで立てられるようになったのか。」
「凄いな。」
「騎士団のワークスペースに、領主様が書いた本みたいなのが置いてあって、それを読んだの。」
「あの人は本も書くのか。」
「何でもできるんだな。」
「じゃあ撃つね。」
「あぁ。」
ザシュッ
一斉に放たれた氷の矢は、10匹くらいのウルフを一気に倒した。
こんなに多くの矢にはターゲット設定できないけどたくさん当たって良かった。
「行くよ!」
「「あ、あぁ。」」
うーん、ウルフは足は速いけど、魔術を使うわけじゃないし、すぐに終わりそう。
斜面を走るのは久しぶりだったけど大丈夫だった。ゲオーグもルシカも危なげなくキッチリ1匹ずつ倒してた。
僕も槍を振るってウルフを何匹か倒した。
「ふぅ、終わったな。」
「あぁ。」
「ルシカもゲオーグも、お疲れ様。」
僕は木のコップに水と氷を入れてルシカとゲオーグに渡した。
「ありがとう。」
「ありがとう。氷入りか、凄いな。」
「氷の魔術と水の魔術を混ぜたら冷たい水が出せるかもって思ってやってみたけどダメだったの。だから水を出した後で氷を浮かべてみた。」
「うん、冷たい水はいいな〜。」
「あぁ。秋とはいえまだ暑いから冷たい水はありがたい。」
「そっか。良かった。」
「それにしてもシュペア、氷の矢あんなにたくさん出せるようになったのかー。」
「そのうちウルフの群くらいシュペアが魔術で一瞬で倒せるようになるだろうな。」
「どれくらい的中するか分からなかったけど、練習だと思ってやってみたの。
当たらなくても、それならそれでみんなで倒せばいいと思ったし。」
「そうか。失敗を恐れず挑む姿は俺らも見習わなきゃな。」
「そうだな。」
「ねぇ、これ、どうやって持って帰る?」
「やべぇな。持ち帰ることを考えてなかった。」
「担ぐにしても1人2匹が限界だな。」
「僕が走って街まで行って荷車借りてくる?
大きめの荷車に全部積んで、重力操作かければ運べるかも。」
「いや、シュペアを1人で行かせるのは危ない。俺が行ってくるよ。ゲオーグとシュペアはここで待っててくれ。」
「分かった。」
ルシカはそう言うと、身体強化を使って走っていった。
「行っちゃったね。」
「そうだな。ここにいるのも安全ではないが街よりはいいか。」
「他の魔獣が寄ってくる?」
「その可能性は高いだろう。血抜きのために木に吊るして待っていよう。」
「うん。そうだね。血抜きは早めにやらないと肉が悪くなっちゃうもんね。」
「あぁ。」
僕たちはその辺の蔓や長い草を編んで紐を作って、ウルフを1匹ずつ木に吊るしていった。
「僕、火の練習してもいい?」
「それは構わないが、周りの木が燃えないように気を付けろよ。茶色くなって乾燥した葉は燃えやすい。」
「うん。分かった。血がたくさん流れてるから、燃やせるなら燃やそうと思って。」
「小さくて弱いのから試してみるといい。」
僕は血溜まりをジリジリ焼くように、ゆっくり小さな火を、飛ばすんじゃなくて血に流すように出してみた。
飛ばさないから危なくない。もし落ち葉や木が燃えたら、すぐに水を出せばいい。
血を少しずつ燃やしていたら何かの気配がした。
「ゲオーグ、何か来る。」
「あぁ。鳥の魔獣だな。シルバーイーグルか?ウルフを狙ってきたのかもしれん。」
ゲオーグが指差す先を見ると、銀色の鳥がこっちに向かって飛んでくるのが見えた。
「あれは飛んでるけどどうやって倒すの?」
「鳥はだいたい、下りてきた瞬間に翼を傷つけるか、飛んでいる時に魔術で翼に穴を開けるかで、地上まで下ろして戦う。人間は飛べないからな。」
「そっか。じゃあ翼に魔術で穴を開ければいいんだね。やってみる。」
「あぁ。できるか?もう少しこっちに近づいてからがいいぞ。遠くに墜落したらここを離れなければならなくなる。」
「うん。分かった。ギリギリまで引き寄せてやってみるね。」
「あぁ。」
僕はもうあと3メートルのところに迫ったシルバーイーグルの羽に向かって氷の矢をたくさん放った。
すると、ギャーと大きい声で鳴いて地面に落ちた。
「ゲオーグ、お願い。」
「分かった。」
斧を構えていたゲオーグが走っていき、斧で首を刎ねて終わった。
飛んでるから攻撃しにくいけど、地面に落とせば簡単に倒せるみたい。
「弱かったね。」
「まぁ、そうだな。引き摺り下ろせば、イーグルはそれほど強くはないな。
普通は引き摺り下ろすまでが大変なんだ。」
「そうなんだ。魔術が使えないと、槍とかナイフを投げなきゃいけないから大変なんだね。」
「そうだな。普通は1回当てるだけじゃ引き摺り下ろせないから、何度も翼を狙ってダメージを与えていくんだが、シュペアは一回でいくつもの矢を再現できるから凄いな。」
「もっと頑張ってたくさん出せるようにするね。」
「シュペアなら、そのうち鳥系の魔獣は飛んでいる状態で倒せるようになるかもな。」
そんな話をしながら、シルバーイーグルも血抜きのために木に吊るしていると、ルシカが戻ってきた。
「うわっ、何だそれは?」
「シルバーイーグルだ。」
「うん。僕たち2人で倒したの。」
「そ、そうか。」
「荷車は借りれたのか?」
「あぁ、2台借りた。もう少し下に置いてあるから、ウルフとそのシルバーイーグルを運ぶぞ。」
「うん。僕が重力操作をかけるから、頑張って走って運んで。」
「分かった。」
「これ、全部積めるのか?」
「積み上げて紐と蔓で縛るしかないね。運ぶのは僕が重力操作をかけるから大丈夫だと思う。」
「そうかー。シュペアがいると不可能なことはないように思えてくるな。」
僕たちは無理矢理ブルーウルフとシルバーイーグルを荷車に積み上げて、蔓と紐でぐるぐる固定して山を下りた。
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