32. 森とホルツ(ルシカ視点)2/2
「あんた大丈夫か?こんなところで何があった?」
「あ、いや、森を眺めていただけで、倒れていたわけじゃないんだ。」
「そうなの?」
「あぁ、ここの森はいい。創作意欲がどんどん湧いてくるし、疲れた時は癒してくれる。
君たちも仰向けに寝てみれば分かるよ。」
「ゲオーグ、寝てみようよ。」
「あぁ。そうだな。」
ゲオーグもシュペアも、なんの迷いもなく仰向けに寝転んだ。
えーこんなところで寝るの?
地面は柔らかそうだけど、落ち葉とか土とか、さすがに俺は抵抗あるな。
「わぁ、凄い。綺麗。」
「これは凄いな。歩いている時とは全然違う。」
「そうだろ?こうして森を感じることが俺の癒しなんだ。」
「ルシカも早く寝てみて。すっごく綺麗だから。それになんだか地面が温かくて包み込まれてるみたい。」
「確かに。」
「そうなんだよ。君たちにも分かるか。ここは魔獣もいないし、他の動物も小動物だけだ。
こうして大地に包まれて森を感じる。優雅だろ?」
そんなに言うなら、ちょっと寝てみるか・・・。
「お?本当だ。地面が少し温かい。初めての感覚だ。」
「この森は実にいい。俺はこの地に来れて本当に良かった。」
「お兄さんはどこか他所から来たの?」
「あぁ。前は王都に住んでた。領主様がこの街に芸術家を支援する寮やギャラリーを作るから来ないかと誘われてね。
思い切ってここに来て良かったよ。」
「領主様はそんなこともやっているんだな。
そういえば、ギャラリーの管理人みたいなものだと言っていたな。」
「そうなんだよ。俺たち芸術家が作品を作るのに集中できる環境を作ってくれている。
販売も代わりにやってくれているし。俺はあの人に一生感謝し続けるだろうな。」
「領主様はやっぱり凄い。」
「あんたはどんな物を作ってるんだ?まさかギャラリーの入り口にある領主様の像の作家か?」
「いや、あれはモスケルというもっとゴツい冒険者を兼業している男の作品だ。
俺は、君たちが見たかは知らないが、森の絵を描いている。」
「もしかして、お兄さんは森の妖精の絵を描いているの?」
あの悍ましい絵の画家だったのか。
「お?分かるのか?少年。
まぁ、あの絵は好みが分かれる。領主様は気に入ってくれているが、怖いと言われることも多くてな。」
「僕はあの絵、好きだよ。」
「それは嬉しいな。よし、君にポケットサイズの絵を1枚プレゼントしよう。」
「そんな小さな絵があるの?
でも僕、冒険者だから家がなくて、飾る場所がないよ。」
「ポケットに忍ばせてどこにでも持っていけるように作ったものだから、飾る必要はないんだ。
旅をする時に、一緒に連れて行ってくれると嬉しい。」
「絵を持ち歩く。おもしろい発想だな。さすがは芸術家ということか。」
「いや、これは俺のアイデアではなくて領主様のアイデアなんだ。
あの絵を遠征先でも見たいから、持ち運びできるサイズのものを描いて欲しいと言われてね。
それで作ったら、思いの外売れてね。」
「あの森の絵はそんなに人気なんだな。」
あの悍ましい絵を持ち歩くのか?
それは何か魔除けのような意味合いがあるんだろうか?
「いや、人気があるのは森の絵ではなく、家族や子供の絵姿だな。旅や遠征に持っていくようだ。」
「それは確かにいいな。」
「俺もいつか家族ができたら、描いてもらおうかな。」
家族の絵を旅に持っていく。いいな。
いつか結婚して、子供が生まれたら・・・。
・・・いつになるかは分からんが。
「いいよ。いつでも俺を尋ねてくれ。
少年、君はどんな絵がいい?」
「僕は森の妖精の絵がいいな。」
「よし、じゃあ後で私の工房に案内しよう。その時に好きな絵を選んでくれ。」
「いいの?ありがとう。
僕はシュペア、こっちはルシカとゲオーグだよ。お兄さんは?」
「俺はホルツだ。」
「ルシカだ。」
「ゲオーグだ。」
俺たちはしばらく森に寝そべって森を堪能してから、ホルツの工房に向かうことになった。
「昼ごはんを食べて行こう。パスタの美味い店があるんだ。」
「やった。僕パスタ好きだよ。ツルツルしてて、美味しかった。」
「お?知ってたか。領主様が大々的に領の特産品として売り出して、今では王都にもパスタの店があるくらいだ。」
「そうなんだ。凄い。」
領主様は、凄いな。強くて綺麗なだけじゃなく、商売もするのか。
しかも芸術家を支援して、シュペアのような村の子供にも魔術を教えたり。あの人、実は10人くらいいるんじゃないだろうな?
そして、ミランが言ってた奥さんを溺愛しているというのが気になる。
あの領主様が惚れるほどの人物とはどんな女性なんだ?
他国の王女とかなのか?
もしくは本当に妖精か天使なんじゃないか・・・?
俺の前にも早く天使が現れてくれないかな。
4人でパスタを食べて、デザートにケーキも食べた。
シュペアとゲオーグが嬉しそうに食べていたのは言うまでもない。
トルーキエの姉妹都市から仕入れているチョコというのを使ったケーキで、木苺が何種類も使われていた。
レーマンにあるゲオーグ行きつけの店も美味しかったが、このケーキも美味しいな。
ん?実は俺もケーキが好きなのか?
まぁ、ケーキが嫌いな奴なんかいないだろう。
シュペアはホルツの工房で、あのちょっと悍ましく見える絵の小さいのをもらって喜んでいた。
妖精か・・・うーん、俺にはアンデットに見えてしまう。
もっと清い心の持ち主でないと妖精に見えないんだろうか。
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