31. 森とホルツ(ルシカ視点)1/2
お披露目会までは、まだあと1週間ほどある。
どうやって時間を潰すかな。
レーマンより大きな街だし、色んな店を見て回るのもいいな。ギャラリーも途中までしか見てないしな。
「僕、東の森に行ってみたい。」
「ん?あぁ、妖精の森?」
「木の魔獣もアンデットもいないって言ってたけど、もしあんなに鬱蒼と木々が絡み合うような森だったら、ちょっと怖いな・・・。」
んんん?ゲオーグが難しい顔をしている。
もしや・・・
「うん?怖い?」
「いや、あ、えっと、迷いそうで、怖いな。」
くくくく
「ゲオーグ、お前もしかしてアンデット苦手か。」
「いや、そんなことは・・・。
ルシカもあの絵を見て怖いと言っていたじゃないか。」
やっぱり中身は可愛いな。
慌てて俺に同意を求めるが、別に俺はアンデットが怖いわけじゃない。
あまり戦いたくない相手ではあるが、それは怖いからではなく、面倒だからだ。
確かにあの絵は悍ましいと思ったが。
「領主様は綺麗だって言ってたよ。きっと妖精さんが住むくらい綺麗な場所なんだと思う。」
「うん。そうだな。行くか。」
「そ、そうだな。」
東の芸術家の家が立ち並ぶ区画を奥に進むと、小さな門が見えた。
ギルドカードを見せて外に出る。
「シュペア、危ないかもしれないから、手を繋いでおこう。」
「うん。分かった。」
ぷくくくく
なんだよそれ。筋骨隆々の大男が、お化けが怖くて子供に手を繋ぐことをねだるなんて、面白すぎるだろ。
「危ないからとか言って、怖いからだろ。
ゲオーグ、俺も繋いでやろうか〜?」
「むぅ・・・それは遠慮しておこう。」
俺もそれは遠慮したい。
想像しただけで絵面が痛い。
「ゲオーグ、怖いの?
大丈夫。僕とルシカがいるから。」
「あぁ。大丈夫だ。怖くなんかない。」
可愛いやつめ。
このゲオーグの魅力に気付いてる奴っているんだろうか。
やっぱ見た目が邪魔するよな。
ギャップがありすぎるもんな。
やっぱり髭か?
小さな門から外に出てみると、鬱蒼とした悍ましい森が広がっている。わけではなく、適度に木が間引きされた美しい森が広がっていた。
もう秋になろうとしている森の木々は、葉が赤や黄色に色付きはじめ、時折風が吹くとハラハラと舞い落ちる葉が、幻想的だった。
「凄い。こんなに綺麗な森、初めて。」
「あぁ。とても綺麗だ。木々の間から光が筋になって降り注いで、絵の中に入ってしまったようだ。」
「だねー。なんか想像してた森と全然違ったね。これは確かに人に勧めたくなる。」
こんな森が近くにあるから、芸術家が集まるのかもしれないな。
妖精か。本当に住んでそうだと思うほどに清々しい空気がそこにはあった。
魔獣がほとんどいない森か。
そんな森もあるんだな。
「ここ、凄いね。街の中はとっても賑やかだったのに、全然人の声が聞こえない。
すぐそこに街があるのに、森のずっとずっと奥に来たみたい。」
「確かに。外壁が音を防いでいるのかもしれないな。」
「言われてみればそうだな。」
「僕、この森好きだよ。静かで、とても綺麗な空気。魔獣もいないし。」
「あぁ、そうだな。俺もこの森好きだ。あっちにも行ってみよう。」
「うん。」
2人が楽しそうに繋いだ手を大きく振りながら歩いている。
子供同士みたいだな。
まぁゲオーグも若いからな。
「え?人がいるみたい。倒れてるかも。」
「なに?それは大変だ。急ごう。どっちだ?」
「あっち。」
ん?あの2人が急に走り出した。
なんだ?
少し離れて2人を眺めていた俺も急いで後を追った。
「大丈夫?」
「おい、大丈夫か?」
「え?あぁ、大丈夫だ。」
人か?倒れてるのを見つけて急いだんだな。
倒れていた男は、2人に声をかけられて、上半身を起こしたところを見ると、死んではいないようだ。
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